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ビンタ

その翌日。


里佳子とは結局なにも交信をする事などなかった。電話もメールもする事が出来なかった。万引きはもうしないと約束しておいて再び万引きをしてしまった里佳子。そして、単純な理由では無さそうなあの里佳子の涙。全てが謎であった。彼女の事を考えながら誠は今日もいつも通りに起きて顔を洗い、制服に着替えて、朝食をとりカバンを手にとって学校に向かう。いつもより遅めに家を出た誠の乗った電車は人が少し多めに乗っていた。ケータイをいじったり、漫画本を読んだり人それぞれであった。


『塚口、塚口です』


いつもの道、同じ制服を着ている先輩や同級生、後輩達は同じ目的で学校に向かう。里佳子は先に学校に行っているのだろうか?だとしたら理由を聞いてみよう。彼女が例え返答を断っても何度でも聞こう。誠は普段は人の言いたがらない事に関しては深く突っ込まない性格なのだが今回は例外中の例外だ。きっと何か理由であるのだろう。だから万引きをはたらいた。そうだと信じたい。


そう言う考えを巡らせながら階段を上がり自分の教室に到着しかけた時教室の前で人だかりが出来ているのに気付く。よく見ればクラスメイト以外の人間も教室の前にたかりそれをクラスメイトの男子や女子が追い出そうとしている。野次馬(別の同級生)と警官クラスメイトの攻防戦がそこで繰り広げられていた。何があったのだろうか?

その攻防戦の上で立っているクラスメイトの男子に声を掛けて確認を取ろうとする。

「おいっ、何があった?」

「久瀬か…。どうもこうもねぇよ。沢の事で酷い落書きが…」

「落書き?里佳…、沢は?」

「中に…、あっ出てきた」

攻防戦をしている間から里佳子が涙を目に浮かべながら出てくる。そして黙ったまま誠の右手首を強く握ってそのまま連れ去られてしまう。無理矢理引っ張られる誠の声を里佳子は聞こうとはしない。やっと止まった所でいきなり彼女は誠に対して正面を向く。

「アレ…、誠が書いたの?」

「“アレ”って何だよ?話が読めないんだが…」

「私が約束破ったから書いたんでしょ!」

「お前…、何を言うんだ!」

「約束…、破ったのは悪かったよ…。でもだからって!」

「お前は何を言っているんだ!?ハッキリ言えよ」

「………」

「おい!」

「もう止めて!」

里佳子が大声で叫ぶと途端に誠の頬を思いっきりビンタした。パンッと短い反響が廊下中に響く。攻防戦をやっていたクラスメイトや同級生もその音を聞いて攻防戦を止めて音のした方を遠目で見つめる。いきなりのビンタはかなり痛かった。赤くは腫れなかったものの理由も分からないままビンタされたことを考えると精神的にもかなり痛みを感じた。

「………」

頬を押さえて誠は里佳子の顔を見るが彼女は自分がやったことに驚いているのか何も言えないらしい。そっと後ずさる彼女はそのままその場から逃げ出してしまった。その時の彼女の足は速かったのだが何度かこけ掛けているようにも見えた。

「久瀬君!」

「須藤…」

「沢はどこ言ったんだ?」

「一体何が起きたんだ?」

「…、それが」


教室に入るとおおきな黒板に白いマーカーでデカデカと太く書かれている文字が目に入った。



“沢里佳子は万引きの常習犯だ”



「何だよ…、これ…」

「俺だって来たときはビックリしたんだ…、酷い事するよな…。誰かが噂嗅ぎ付けてさっきの攻防戦だ。マーカーだから上手く消せないんだ」

「藤枝が来る前に、出来るだけ消そう」

「分かってる。今マーカー消しに出来そうなやつを檜山と戸川が探しているんだ。でも一体誰が…」

「………」


‐私知ってる。


“私知ってる”そう言って来たのは里佳子の友人である百合奈であった。

「百合奈?」

「私犯人知ってる。本当だよ」

「誰がやったんだ?教えてくれ」

「いいけど。条件付」

「条件??」


百合奈が提示した条件、それは誠1人で百合奈と話し合うこと。集合時刻は放課後の5時。場所は駅前のコーヒーショップ。


「いい?」

「…、分かった」

「おーい!マーカー消せそうなやつ持って来たぞ!」




放課後はすぐにやってきた。

コーヒーショップに5時丁度についた誠はテーブル席に座っている百合奈の姿を発見し百合奈と向かい合わせに座る。

「教えてくれないか?」

「………」

「犯人は…」

「いるよ?」

「えっ??」


‐君のすぐ目の前に。



「えっ?」



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