修学旅行
新千歳空港―、
「うわぁ、本当に真っ白だ」
「滑走路が凍り付いているなぁ」
「ねぇねぇ、写真撮ろーよ」
それぞれテンションをあげているクラスメートや他の組の同級生達。誠は須藤と横に並んで歩いていた。ちなみに誠の荷物は移動が楽な大き目のポーチで須藤はリュックだ。
「それでよく来れたもんだよな…。久瀬君」
「そう大きな荷物なんて持ってくる必要ないだろ?持って来るとしてもゲームとかトランプ位だし」
「へぇ。久瀬君はゲームとかやるのか?」
「あぁ、基本的にはしないけど面白そうな奴は買う位だけど」
「ほほぅ。意外な一面だ」
里佳子たちは自分達のすぐ前を百合奈と前沢の3人トリオで何か楽しそうに話しながら歩いている。百合奈は時々手持ちのカメラで空港の様子とかを写真に収めている。
「へぇ、詩って北海道で生まれたんだ」
「そう。だから未だに『ゴミ投げて』って言っちゃうんだ。もう恥ずかしくて」
「そいじゃあこの修学旅行あまり楽しめなんじゃないのかい?」
「いやぁ、北海道のスキーは楽しみだよ。パウダースノーの上のスキーは良いんだよ。こけても怪我しないしね」
その前沢の暴露を須藤はなにやら真剣に聞いている。その姿を見て声を掛けることにしてみる。
「須藤、どうした?」
「いやっ、何でもないよ。ちょっと昔を思い出していて」
「ふーん???」
「寒ッ!!!」
そう叫んだのは当然のごとく須藤(赤点マスター)。他のクラスメートは叫ばなくても息を白くしたり、歯をガクガク震わせていたり寒がり方は人それぞれだ。
「それじゃあ、バスに乗りまーす。奥から詰めて乗って下さいねぇ」
と添乗員さんに促がされてに誠のクラスが乗るバスに次々とクラスメート達がバスの中に乗り込んでいく。暖房がガンガンに効いたバスの車内は軽く蒸し風呂状態。さっきまで重宝していた暑苦しそうな上着を次々脱ぎ始める。もちろん誠も上着を脱ぎ隣に座った須藤も上着を脱ぎ膝の上にその上着を載せる。
「何か暑いなぁ」
「そりゃ北海道の暖房だからな」
軽く須藤の言葉をあしらい窓から見える風景をチラッと見る。まだ動いてはいない。雪は50センチくらい積もっている。除雪作業をしている重機をさりげなく凝視する。除雪をしている重機が作り上げた雪の山は大体1メートルくらいはあるだろか?
「それで出発しまーす!」
添乗員さんの掛け声でバスのエンジンが掛かりバスが動き始める。
「皆さーん、こんにちは!」
「こんちわー!!」
テンションがいきなりピークに達している男子生徒たち。それをちょっと呆れ気味に見ている女子生徒たち。誠のテンションはその女子生徒たち並みだったが…。
「私は今日皆さんの添乗員を担当させてただ来ます。沢渡です」
「下の名前は何ッすか!?」
「美雪でーす。美しい雪って書きまーす」
「おおぅ、来たぞ美雪!」
「あはは、いきなり呼び捨てなんですね…」
美雪さんの舌は止まらない。楽しそうに学校の生活や文化の違いの話し、果ては恒例クイズ大会なるもので女子まで参加してほとんどの同級生が楽しんでいた。
「なんだよ、久瀬君!もっとテンションあげようぜ」
「まぁ、お前達で頼んでくれよ。凄い眠たいんだ」
「あぁ…、そういう事?」
「飛行機が久しぶりだったからな。ちょっと酔っちまった。だから寝る」
「では、札幌に着きますよー」
「久瀬君。そろそろ着くぜ」
「ンッ…。分かった…」
目を軽くこすり窓から札幌の街並みを覗いて見る。緑色に塗装された札幌テレビ塔が見える。電光表示板には時計が表示されている。
「それでは皆さん。テレビ塔の麓で写真撮影がありますので私が降りた後に着いてきて下さいね。後今から上着を羽織ってくださいね」
「はーい!」