始業式
冬休みと言うのは実にあっけない。僅か二週間ほどの休暇はあっという間に過ぎて今日は始業式だ。2年生は始業式を終えると修学旅行用の旅行バックを学校に預けて家に帰る予定となっていた。
「じゃあ、旅行バックは南門前で預けて解散しろ」
「はーい」
誠やクラスメート全員が新年早々学校に大きな旅行カバンを肩にかけたりして教室を出て行く。
友達とスキーの話やご当地の食事の話題など話す内容は三者三様。誠も自前の青いカバンを肩にかけて教室を出ようとする。里佳子は…、どうやら先に行ったらしい。須藤は戸川と檜山とで話している。
‐スキー滑れるか不安だよ~。
‐案外滑れるものだと思うよ?ほらっ小学校のときスキー合宿あったでしょ?
‐北海道つったらラーメンだよな!
‐まぁ、トンコツとかしょーゆラーメンがベターかなぁ?
‐その辺はその日に決めるとするか…。
結局話す相手などいない。元々人を寄せ付けにくい性格だったのもあるがそういう生活に慣れて何時しか違和感は感じなくなっていた。でもこの感覚は以前とは少しだけ違う。“寂しい”んだ。里佳子や百合奈、前沢、須藤と言った連中と絡む様になってから自然と笑うようになり1人だけとなる自然と寂しくなる様になっていた。
「里佳子…」
そういえば、今日一日里佳子と話した覚えが無い。冬休み中に会ったのは里佳子が家に訪れた時だけだったよな?どうしたんだろうか?考えてみればあの日以来メール一通も無かったよな…。
「誠?」
不意に耳元で声を掛けられた。噂をすればいうやつか…。学校内で自分の事を“誠”と君も付けずにそう呼んで来るのは一人しかいない。
「里佳子?」
「どうかしたの?何か考え事?」
「イヤッ…。それよりお前先に言ったんじゃないのか?」
「ちょっと、藤枝先生に進路の事を相談しに行っていてね?」
「進路?お前確か“就職”にするとか言っていなかったか?」
「うん………」
「里佳子?」
「ううん?なんでも無いよ?」
ちょっとだけ、里佳子の目が赤くなっていた様な気がした。
「はーい。荷物はこちらに預けてくださいね」
「ねぇ康博ちゃん」
「ん?何だ前沢か?どうしたんだ??」
「最後の日の散策って確か班じゃなくて個人行動じゃなかったけ?」
「あぁ。一応はな?でもどうして」
「一緒に回らない?」
「そいつはつまり?デートってか?」
「………、やっぱ止め」
そう言い残すとさっさと南門から早歩きで学校を後にする。
「なんだよ。アイツ…」
「そういえば誠は?」
「俺も一応は“就職”のつもりなんだけどな…」
「いちおー??」
「正直悩んでいる。進学か就職で」
「フーン…。そっかそっか。ほらっ早く預けに行こうよ」
「里佳子?何だその不敵な笑みは」
「べーーーーつに?????」
「康博ちゃん…。なんであー言う時は変に鋭くなる訳なのさ?鈍感の癖に…」
………。
「コーヒー飲みに行こっと…」
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