小吉・ヤキモチ・大凶!
「むむむむむむぅぅ」
「…、どうだった?」
‐小吉さね…。
「だから、言わんこっちゃねぇんだ。おみくじなんて1日1回がベストなんだよ」
『まぁ、俺が買ったやつだから実質俺が“小吉”なんだが…、黙っておこう…』
「あうぅぅ…、ねぇ…」
「さて、おみくじなんかよりイカ焼きでも食うとするか」
「あっーーー!読まれた!」
百合奈はちゃんと神社の境内におみくじをしっかり結び付けると誠の後を追いかけ始める。
ギリギリ見えるか見えない位の距離感を保ち、人ごみを抜けるとすぐに誠の腕にしがみついた。
「あっー、圧縮されると思った…」
「そりゃこんな人混みじゃあな」
高校生にとって初詣と言うのは短いものでは30分も満たない短さで終わるのがオチと言うものだ。この後の高校生の起こす行動の大半はカラオケか、ゲームセンターで時間をもてあそぶ。
暇な人間は、色々な神社をお参りしては屋台めぐりをする者もいる。誠は…。
「ねぇ!カラオケしよーよ」
「1人でやってろ」
その暇人間の部類に属する。そもそも人とのコミュニケーションが苦手な彼にとって無機物である建物を見るのが自然と好きなっていたのだ。建築に興味を持っている訳ではないが有機物である人間に比べれば何倍も楽でいい。相手のご機嫌を取る必要も無い。そもそも話しかけても来ないし話さなくてよい。
「聞いてるー?」
「いいや?全く」
「本当に失礼な…。いいかい誠君。女の子相手に話す時は“聞いてなかった”はNG!なのだよ?分かる…訳も無いか…」
「今、物凄く失礼な感じがした」
「それで、お父さん今度はいつ出るの?」
「今年は、6日までこっちにいれるぞ?里佳子」
「本当?だっていつも“今年は7日”って言っておきながら“悪い。3日までだぁ”なんて…、笑えないよ…」
「いや。いつも独りぼっちにして悪いと思っているよ…。誕生日も祝ってやれないしな…」
「………、ところでお母さんは?」
「あぁ、なんでも友だちと食事だそうだぞ?」
「たく。可愛い娘と久しぶりの再会を」
呆れた口調で話すとテーブルから席を立ち自分の部屋に入る。
そして、お馴染み(?)の体育座りを決めると自分の顔を埋める。
これは昔からの里佳子の癖で寂しいときや構って欲しいときはよくこうしていた。ただ、人前では誠くらいしかやったことが無い。
『今頃、誠どうしてるかな?何か寂しいな…』
「よしっ、こういう時は電話だ…」
と、卓上型の充電器からケータイを外すとメールを打ち始める。相手を“久瀬誠”と選択し本文の内容を打つ事にした。メールの内容は…。
「……、どうすればいいんだろ…?今は家にお父さんいるし…、多分百合奈と初詣とか行っているんだろうな…ってあれ?」
なんかモヤモヤする…。なぜかは分からないけど百合奈と並んで歩いている誠を想像するとモヤモヤ…、まさか…、これって?
「ヤキモチ??百合奈に??」
電源ボタンを押してメールを打つのを止めて充電器の上に置くとそのままベッドで寝転がる。
「ハァ…」
深くため息をついてケータイの方をチラッと一瞥する。その後は天井を見続ける。
「何やってんだろ?私…」
そのまま眠気に襲われていき、いつしか彼女は眠っていた。
その頃。
「うわぁ!?大凶出た!??」
「神社変えても結果は同じって事か…」