燃え尽きる
テスト返却日。
先程、現代国語のテストを返却されて前沢と須藤の2人は酷くうな垂れている。
その他にも何人かうな垂れているクラスメートは他にも何人もいたがこの2人は一線を越えている。
心配し、里佳子と百合奈が近づく。誠の方は自分のテストの点数でこれくらいかと採点間違いがないかチェックしている。ちなみに誠の点数は93点。漢字間違いで7点を落とした。
遠くで百合奈の声が耳に入ってくる。
「どうしたんだい?詩」
「はぁぁぁ、これじゃあ親にまた怒られるゥ。慣れっこだけど」
と、百合奈と里佳子に自分の取った点数を見せ付ける。さぁ、笑えとばかりに前沢の顔はゲッソリしている。誠の通う高校のテストの欠点は30点なのだが前沢の点数は34点。欠点ギリギリ。
「まぁ、欠点じゃない分マシじゃん?ねぇぇ?里佳子??」
「う、うん。そうだよ、ファイトだよ。詩」
「それ。励ましのつもりですかァ??」
採点確認を終えて誠は立ち上がり、誰にかまって貰っていない須藤の方に近づく。
かまって貰えていない理由は、あまりにも暗いせいで全然声を掛けられない状況を彼が作っているから。
間違いない。
須藤は欠点を取ったに違いない。それが外れならば欠点ギリギリの点数を取ったのだ。
せっかく教えてやったのにと呆れながら須藤に声を掛ける。
「おいっ、須藤」
「………」
「おーい??」
何も語ろうとしない須藤は自分のテストを誠にさっと渡すとさらにうな垂れる。
渡されたテストを見た誠は自分の目を疑う。欠点以前の問題。0点。
しかも、その0点は何も書いていない。白紙解答というやつだ。誠は全く体験したことのない領域。
さすが、須藤。赤点マスターと言う名前は伊達ではない。
「お前、一体どうしたら白紙で出せるんだよ?」
「すまん…、せっかく教えてもらったのに関わらず…」
「しかも、先公も先公で紙にデカデカと×一文字」
「ウッ……」
「補習、もちろん行くよな?行かなきゃマズいぞ?」
「分かっているよ。今日は牛乳5リットルガブ飲みしてやるゥ」
牛乳がぶ飲み宣言。それを聞いた誠は呆れた表情を浮かべて自分の席に戻る。
それを見計らって須藤といつも行動をともにしている須藤と同じく赤点マスターの檜山聰と戸川精一の2人が須藤に近づき話しかける。内容はもちろん誠の話。
「須藤…、お前いつから久瀬と仲良くするようになったんだ??」
「そうそう…、不良だろ??」
2人の声はとてつもなく小さい。そして怯えまくっている。
「檜山と戸川よぉ。言っておくが久瀬君不良じゃねぇぞ…。むしろ優しい性格」
「「嘘だろ!???」」
ハモった。見事に檜山と戸川の声がキレイにハモった。檜山と戸川の声は教室中に響き皆そちらに視線を送る。近くにいた里佳子と百合奈と前沢。話の中心である誠もそっちに視線を向ける。
須藤・檜山・戸川の間には無駄な緊張感が漂い始める。緊張感がピークに達しようとした所に担任の
藤枝(数学担当)がテストを持ってやって来た。
「テスト返すぞ。自分の席に座れ」
「たっ、助かった…」
黒板に書かれた平均点。
クラス平均56点。全体平均61点。
要するに誠の所属するクラスは全体的な平均点よりちょっとだけ低いと言うことだ。
「久瀬ぇ」
「はいっ」
藤枝に呼ばれて誠は教卓に向かう。テストを片手に持った藤枝からテストを貰うとすぐに自分の席に座る。それから里佳子、須藤、百合奈、前沢の順番でテストが返されていく。
最後に配れるテストだけあって皆関数電卓やケータイの電卓を取り出して計算を始める。
最初からテストの点数を合計していた誠は数学の点数を足すと再び自分の席から立ち上がって
里佳子たちのところへ向かう。
「どうだった?」
「あっ、誠。やったよぉ。100点さ!」
そう自慢げに100点を宣言したのは里佳子。その周りで強く拳を握り締めているのは百合奈と前沢。
重苦しい空気が流れている百合奈と前沢。そして遠くで座っている須藤。
「そうだ、前沢はどうしたんだ?せっかく教えてやったんだし」
「えっ?あぁ。うん。ほれ」
前沢のテストを受け取り点数を確認する。65点。まぁまぁ普通の点数。
「前のテストに比べれば凄いマシだけど」
「おう。ありがとう…。百合奈の方…」
「フンッ!!!」
“は”と言い掛けた所で百合奈は自分のテストを誠に渡す。56点。
「あぁ、平均点ね…」
「今回のテスト。ほとんど平均点と同じなのだよ…誠君」
「そりゃ、ドンマイ…だな…」
「誠君は??人に聞いているんだから教えるのが筋でしょ?」
「言っていいものか…」
「いいよ!ぶちのめしてくれよ!里佳子ですでにボロボロなのだから!」
「98点だが…」
百合奈は真っ白に燃え尽きた。
「それじゃあ、修学旅行の説明するぞ」