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その顔…、惚れておりますな!??

コーヒーショップにたどり着き(前沢の笑いも止み)2人が中に入るとそこには見覚えのある人物が窓際のカウンター席に座っていた。それを見て2人の表情がちょっとだけ強張った。

「あっ」

「「あっ」」

その人物と目線が合いお互い“あっ”と言う言葉が飛びあった。前沢の方は憂鬱気味に額に手を当てていかにも“だめだぁ”のポーズを見せて必然的にその人物とコーヒーを飲む羽目になる。

窓際のカウンターからはクリスマスの電飾等で飾り付けられている街路樹や建物が見えボーっと眺める。

黄色や緑色、青色、赤色に光るきれいな電飾たち。前沢の目はちょっとした絶望感に満ちていた。

自分の左隣には朝から自分が連れ回しに連れ回した同級生の須藤康博。その更に左隣には…、

「しっかし、偶然だね!須藤君と詩と出会えるなんて」

「百合奈…。アンタ部活は??」

「今日はお休みなのさ。気楽でいいぜェ」

そう。2人のクラスメートでちょっと(大分)騒音メーカーな福井百合奈。

彼女のうるささはクラスメートのうちでは有名でこの前ブチギレた里佳子の大親友。

「そんで。今日はここでバイトしててさっきシフト終えたのさ」

「ヘェ、ソウナノカ」

前沢の言葉に血は通っていない。やる気がない訳ではない。せっかくの気分がなし崩しになったからだ。

そのせいで前沢の気分は最高に低迷し、さっきか購入した本ももうどうでもいい状態になっていた。

床にポツンと袋ごと置いてある。カバンは肩にかけたままで。

片方はとてもなく明るい女子に、もう片方はとてつもなく暗い女子に挟まれた須藤の方は気まずい空気に苛まれていた。どう話しかければいいのかと考えていた。

「なぁ、いい加減注文しようぜ?前沢??」

「ホットのLゥ。あとイチゴのドーナツ。ナッツ付きィ」

「あぁ…、これぐらいはおごってやるから?なぁ??」

「サンキュー」

前沢の言葉は生き生きしていない。前沢の要求を聞き須藤は席を立つ。あまりにも気まずい空気に耐えられなくなったのだろう。注文と言ってもものの1分くらいで済ませられるのに暫くカウンターに戻ろうとはしない。遠くから見ても気まずい空気は感じ取れる。



「なんでアンタが都合よくここにいる訳?」

「ん?別に?偶然でしょ??実際知らなかったんでしょ?ここでバイトやってるの」

「ソリャ…、そうだけどさ……」

前沢の声に元気が無くなり、彼女の顔は珍しくほんのり赤く染まっていた。その表情を見た百合奈が不敵な笑みをこぼし前沢にその顔を見せ付ける。

「ははぁん?顔が赤いぜよ?前沢さぁん??」

「ナッ!??」

「その顔…、惚れておりますな!??」

「ウッグググ」

「誰とは言わないけどォ」

とカウンター席に設置されている椅子の背もたれに左腕のひじを乗せて体を捻る形で須藤を見つめる。

視線に気付いた須藤に百合奈は物凄く馴れ馴れしく手を振る。手を振られたので須藤も手を振る。

その姿をとても悔しそうに前沢が凝視する。

「なぁるほど~ね?」

「わっ、悪かったわね」

2人の気まずい空気がピークに達したときに須藤がコーヒー類を持って帰ってきて、前沢に言われた通り

コーヒーのLサイズとイチゴナッツドーナツを彼女の目の前に置き前沢はそれらにがっつく。

須藤の方は自分のコーヒー片手に中身をちょっとずつ飲む。わずか2分ほどでドーナツを食いつくし、

コーヒーを飲み干した前沢はさっきとは打って変わって落ち着いた表情を見せる。

「ねぇ。どう思う?」

「何が???」前沢の質問に答えたのは、コーヒーをやっとこさ飲んだ須藤であった。

百合奈も前沢の方に目線を移した。

「里佳子と久瀬君だよ。あの2人できていると思う?」

「そりゃ…、つまりぃ。カップル成立ってやつか?」

コクッと首を縦に動かす前沢の顔を見て須藤が噴出しそうになる。

「バカ言えよ!久瀬君と沢だぜ??釣り合う訳ないだろ???」

「………ッ。ホント鈍いっ」

「なっに!??」

“何!??”と言うはずが“な”と“に”の間に“っ”が入り聞いた事のない単語が生まれた。

「詩さぁ。まさかこの前のアレってそれが目的??」

「さぁ。どうだろうねぇ」

「おいっ。意地悪しないでくれよ。前沢に福井」

「どうしようかなぁ?ねぇ?百合奈ァ」

「ねぇ?詩ァ」

「ググググググぅぅぅぅ」

窓際のカウンター席で1人だけ悶えた須藤であった…。





「よしっ。これでいいだろう」

「ちょっと、夕ご飯食べれるかな」

「食う必要性があるのか?」

そう誠に聞かれ彼は指をさし、指された先に里佳子の顔が動いた。そこにあったのは菓子の数々。

里佳子と証拠隠滅という形で盗品の菓子を全て食い尽くしたのだ。

「まァ…、いいか…」

「当たり前だろ?コイツはどうしようかな??」

やはり、処分に困るのは小説と漫画の本たちだった。しかも中には内容が被る物まである。

「どうするよ?里佳子」

「………、ハァァ」

答える代わりに里佳子は大きいため息をこぼした。彼女の行動に口が動かない。

「本当に、私は何をやっているんだか……」

そう言い放つと自分のベッドに腰を下ろして膝を曲げて体育座りをする。

「里佳子?」

「私。これ始めたの親に反発したかったのが原因なんだ」

「反発?いい所のお嬢なのになァ」

「…………」



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