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前沢(詩たん)の真意

12月7日、テスト最終日。

最後のテストが終了してクラスのみんなが安心しきって背伸びなどをしている。

「ハァ・・・・・・・・・・」頬杖をついて大きくてどこか脱力した感じのため息をついたのは前沢 詩である。

その大きいため息にクラスの女子や男子が振り向く。だがため息に反応して動いた人物は、ごく一部だった。誠、須藤、百合奈の3人だった。里佳子は自分の席からは離れようとはしなかった。

あのテスト最初の日の放課後に起こったあの勉強会以来里佳子と前沢の関係はギクシャクしていたから

だ。今日も担任の藤枝の到着は遅い。毎度の事ではあったがやっぱり遅い。

「ハァ、いっそ死にたい・・・・」

3人の前で愚痴を漏らす前沢は机に顎をつけて実に憂鬱そうにしている。その表情を見た百合奈が同情の

意を表し優しく言葉を掛ける。

「詩・・・・、出来なかったんだね・・・・」

里佳子は、全く絡む気配はなかった。その姿を見た前沢はフーンと声を上げてそれきり言おうとはしなかったがそれを察した百合奈が里佳子に話しかける。

「里佳子、もう許してやったら?」

「別に?私は怒ってませんよぉだぁ」と里佳子はさらりと話を流したが彼女の目は怒りに満ちている感じだった。一方前沢の目は冷たい目をしていたがその奥では楽しんでいるようにも見えた。


もちろん、これはどちらも誠の主観で見たものであって実際はどうか分からないが多分そうだと思う。


すると、前沢が里佳子にケンカを売るような発言を姿勢を低くし彼女の目を見ながらした。

「あらあら?どうしちゃったの?里佳子」

「別にぃ???」

「もしかして、心の内側で怒っているんじゃないの??」

里佳子の目を凝視していた前沢は姿勢をきれいにしつつも彼女の目は見たまま。

すると里佳子も姿勢をピシッとして前沢の瞳を見つめ返した。

「詩。アンタ何企んでるの??」

「ハァ???何の事か、詩ちゃんサッパリ」

と前沢は両手の手のひらを天井に向けていかにも分かりませんよポーズ。

2人の口ゲンカを見守るクラスメートと前沢の周りにたかっている3人。このまま、またブチギレの乱が、予想された時突然前沢に話しかける人物が現れた。

「いい加減にしろよ、前沢」

「ん??それはどういう意味かな??久瀬君」

「そのままの意味だよ」

誠だった。

前沢と里佳子の口ゲンカに口を挟んだのは。前沢は視線を誠に移して今度は誠と会話し始めた。

「ここんとこ、お前言いすぎだぞ。里佳子に対して」

「えぇ??別に私自覚なんてなかったけどなァ」

「そういうお前の言動がムカつくんだよッ!」


この空気は、里佳子以上にヤバイ。


「里佳子をこれ以上困らすんじゃねぇよ」

「ん~ん?それはどうしてかな?どうして里佳子困らせたらなんで久瀬君が怒るのかな??」

すると、誠はちょっとばかり理性は保つものの、もう感情に身を任せる感じで前沢にそれをぶつけた。

「そういう約束だからだよッ。里佳子と俺は約束をしているんだよッ。互いを傷つけないって約束を」

「“約束”?フーン・・・・そう・・・約束ね???」

「そうだよ、例えお前が俺のダチでも里佳子傷つけたら許さないからなッ」

「フーン・・・・、そうなんだぁ」

と、一瞬だけ誠から視線を外して里佳子の瞳を凝視してニヤッとにやける。

「約束なんだ??里佳子ぉ??」

「!」

途端に「あーあ、めた、止ーめた」と前沢はイスの上で背伸びをしてそう言い放つとカバンを

肩にかけて教室の後ろ側のドアに向かって歩き始めた。急に歩き始めた前沢を須藤が追う。

「おい待てよ、どこ行くんだ?」

「帰る」

「STは?」

「休む」

実に短い会話を終えると前沢はそそくさと教室を出て行きその後を誠が追いかけようとする。

前沢が出て行ったドアに手を当てて廊下を左右見渡すがもう彼女の姿はなかった。

「アイツ・・・」

イラつきを隠せない誠の肩を誰かがポンッと叩いた、振り向くとそこに立っていたのは里佳子だった。

「里佳子」

「もういいよ、誠」

「でもよ」

「良いんだってば!」

里佳子が大声を張った、そこまで大声で言われたら誠も言い返すことが出来ない。

「私がさ、バカだったんだよ。それ詩が正しかったの」

「意味が分からないんだが」

「むしろ、感謝しなきゃ・・・」

「????」

「ST始めるぞ」

藤枝が教室に到着してSTを始めた。STのせいで2人の会話は途切れたのだがSTが終わった後も里佳子は何も話そうとはしなかった。



一足早く学校を出て行った前沢はアスファルトの道路の上を歩いていたが誠が言った一言が彼女の中で引っ掛かっていた。


「そうだよ、例えお前が俺のダチでも里佳子傷つけたら許さないからなッ」


“ダチ”


首に巻きつけているマフラーを弄る。


・・・ダチだったんだ、私。



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