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アンケートには正確に

シャーペンを握ってアンケート用紙を里佳子とほぼ同じタイミングで開いてみる。

彼女と目配せを交わしたがどうにも言うことができない。実に気まずい。百合奈、須藤はさっさとアンケートに答えている。前沢に到っては高速でペン回しをして暇そうにしている。ため息もしてるし。

最初の質問にシャーペンの先端を置く。



万引きについてどう思いますか?


(1)絶対にしてはいけない。

(2)してはいけないと思うが大した問題はない。

(3)しても問題はない。

(4)普段しているから問題はない。

(5)どちらとも言えない。



当然ながら、(1)に○をして次の質問に進む。誠の気になる相手も次々と質問に答えていく。

誠とは無縁の世界・・・、とも言いづらい切っても切れない“万引き”と言う三文字。

「終わったら一緒に配った封筒に入れてフィルムはがして封をしろよ」

「はーい」

次々と万引きアンケートを終わらせた同級生たちが男女関係なしに次々を提出して帰宅あるいは、部活の

準備で教室を出て行く。前沢も提出を終えて急かす。

「久瀬くーん、まーだ???」と自分でやったネイルを見つめながらことさらに急かす。

時間に余裕はありますよ的に彼女はさっきまで見つめていたネイルに息を吹きかける。

急かされている気持ちにもなってみろ、と心の中で前沢に対して愚痴を漏らす。須藤も立ち上がり提出。

ついで、百合奈も提出し誠たちの提出を待つ。これがどれだけのプレッシャーか想像しきれない。

里佳子の方を向くとすでに半分以上は終わっているように見える。こうなったらヤケになるしかない。

さっきまで遅かったシャーペンを素早く動かしてさっさと終わらせる。

「裏は・・・、いいか・・・」

アンケートの裏の意見には答えない。答える必要がない・・・・、と思う。

アンケートのページを閉じて茶封筒にスッとそれを入れて封をして教卓に提出し残るは里佳子込みの数人だけとなった。「ふぁぁぁ~」と前沢が情けない欠伸をするくらい誠たちは里佳子の提出を待った。

それは、15分くらいにもなった。

「ねぇ、久瀬君。私めっちゃ暇なんですけど~?」

「すっ・・・すまん」

「何で誤る必要がある訳??あっ、もしや里佳子の事、気に掛けてるんじゃないの??」

「おいっ、前沢」

途端に前沢の長くて細い足が組まれてニヤッと不敵な笑みを浮かべる。確実に挑発している。

この前の“昼休みブチギレの乱”のことを忘れているのだろうか?それとも――、

「終わったよ?詩」

里佳子が立ち上がってアンケートを彼女の眼前で茶封筒に入れて教卓に提出する。

「さっ、お昼食べて勉強でもしよ」

「おう」

里佳子と誠がさきさき教室を出て行き“待ってよ、二人とも”と百合奈も教室を出て行く。

取り残された須藤・前沢の牛乳コンビも追いかけながらゆっくり並んで歩いていく。

「おいっ、さっきのはなんだよ?」須藤が前沢は問いただす。

「ハァ?何の話かな?前沢さん分からないや」

「沢にケンカ売ったろ。さっき。その事だよ」

「別にケンカは売った覚えないんだけどなァ、康博君はどうしてこうも鈍いのかしら??」

「にっ、鈍いっておい」

それきり彼女は須藤に何を言われようと喋ろうとはしなかった。口を尖らせて須藤の言葉を無視する。

食堂に到着すると先に行った三人がテーブル席を確保してくれていた。

「遅いぞぉ、お二人さん」そう言ったのは、自分の弁当を広げている百合奈。

「ゴメーン、康博ちゃんがちょっとややこい質問攻めしちゃうからつい」

「おっ、俺のせいかよ??」

前沢は須藤の見えないところで軽く舌を出してすぐに引っ込める。それを見たのは里佳子だけ。

彼女はさっきまで軽く舌を出した前沢を凝視する。

「あらあら?どうしちゃったのかな?里佳子??」


この空気はマズイ。


そう察したのは、里佳子、前沢以外の三人(誠、百合奈、須藤)。

「さぁさぁ!早くご飯食べて勉強しようよォ、里佳子?詩??」

一瞬だけ里佳子に再び不敵な笑みを覗かせると彼女は、

「うん、食べようか」とキャラを変えてイスに座り込む。が、前沢と須藤にとっては

大事な物が抜けていることに気付き、前沢はイスから立ち上がる。

「牛乳買ってくる」

「あっ、俺の分も」

「分かっているって。お金は後でいいから」

「おぅ」



『みんな、バカばっか』



テスト勉強を教え終えて誠は両親のいないリビングで遊里に今日の前沢の行動を洗いざらい話した。

遊里に相談した方が前沢の真意が掴めると思ったからだった。

「へぇ、そんなことあったんだ?」

「たく、前沢アイツは何を考えているんだか」

すると、誠の目の前で人差し指を立てて遊里は「チッチッチ」と言う言葉を発してその指を揺らす。

「敢えて核心は言わないけど、私思うにその前沢さんが一番まともだと思う」

「ハァァ???アイツが???まとも???」

「その理由は、自分で考えな。誠」

そう言って、誠の妹・遊里は自分の部屋に向かって歩き始め誠はその後を追う。

「おいっ、待てよ」

「少しは、頭良くなりなぁ」



・・・・・・、無茶苦茶だ。



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