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事件発生。ただし限定的な事件だ

その事件が発生したのはテスト初日の12月1日のSTの時の事だった。

いやっ、その事件は別にクラス全体を巻き込む程の事件(昼休みブチギレの乱)程ではなかったが。

その事件の内容は誠と里佳子、2人だけの間で発生した事件と心の葛藤であった。

「ハァ・・・・、終わった、いろんな意味で終わった・・・」

福井百合奈はテストに対して恐ろしい後悔の念に襲われていた。手のひらに額をのせて考え込むポーズ。

テストを回収された里佳子が百合奈に近づいて「テストどうだった?」と聞こうとしたのだが―、

「百合奈???」

聞く気が失せるほどに百合奈は真っ白な灰に燃え尽きていた。


いやっ、真っ黒な炭。


不完全燃焼。


「チキショ・・・・、やっちまった・・・・・、チキショー・・・・・」

涙目になっている百合奈に里佳子は全く声を掛けることが出来ずにいた。

声が掛けられないから里佳子の顔は何とも言えない表情を醸し出していた。口元がピクピク動いている。

ところが、いつまでも凹まないのが、生徒会書記並びにハンドボール部実質部長の百合奈の特徴。

むくっと起き上がると里佳子をロックオンし、キラーンと目をギラギラ光らせる。

「こんにゃろー、この優等生ェェェ」

「うにゃぁぁ、止めてよォォォ」

と、どこかの5歳児の仕出かしたイタズラを叱りその上その5歳児のこめかみをグリグリする母親のごとく

百合奈は両拳をグーで握り締め、里佳子のこめかみをグリグリする。里佳子の目は涙目。

「いい加減にしろ」

誠が止めに入る。するとこめかみグリグリの刑が執行されている里佳子の表情はパーッと明るくなって

大声で叫びながら誠の大きな胸に飛び込む―、

「父ちゃん!」

「誰が、父ちゃんだ」

“父ちゃん”の胸に飛びついた、自称5歳児兼娘の頭にチョップが決まった。

綺麗に決まった。さっきまでこめかみをグリグリしていた百合奈の左手が顎の前に止まった。

驚きのポーズ。

すると、さっきまで自分を痛めつけていた百合奈に里佳子が抱きつく。

「酷いよー、父ちゃん」

「あなた!里佳子を泣かせて」

「お前らまとめて叱られたいのか???」

楽しい楽しい夫婦漫才(自称5歳児の子ども付き)が展開されている席の周りで須藤・前沢ペアは入れず

席に座ったままその様子を見守る。

「仲イイね、康博ちゃん?」

「いいなぁ・・・。ああいう空気」

須藤の発言をはっきり聞き取った前沢は須藤の顔を見上げてちょっと目が点になる。

目を点にした後、前沢は視線を下ろして3人の方に目を向ける。

「・・・・・・・」自然に彼女の口先が鳥のくちばしみたいに尖がる。


そして、座っていた席から立ち上がって3人組の方に歩き始める。

近づいてきた彼女の姿に最初に気がついたのはコントに巻き込まれた誠。

「前沢?」

「久瀬くーん、この前のテス勉助かったよ♪今日の数学さ結構出来たんだよね。今までの私じゃ

信じられない位の会心の出来だったよ♪」

「あぁ、そうか???」

「そうだよっ、それでさぁ、また教えてくれないかな??明日の現国とえーっとなんだっけ??」

百合奈が話し割り込んできた。

「明日は確か物理じゃね??」

「そうそう!物理ガチ難しくて教えてよ。久瀬君・お願いッ!」

と、誠の目の前で前沢は手を合わせて必死に“お願いポーズ”。終いにはウィンク。

「・・・・・・」

「ねッ??」

「・・・・・分かったけど・・・」

「よっしゃ!」

前沢は“お願いポーズ”からガッツポーズ、両手で拳を握り締めて激しく嬉しさを表現。

途端に誠の後ろからモヤモヤとしたブラックな空気が2つほど感じられた。

しかし、前沢はそんなこと気にせずに須藤の方に顔を向けて出し抜いたような不敵な笑みをこぼした。

「誠君、私もいいかな?」

「おぅ・・・・、別に構わな―」

「私もいいかな?」

「里佳子も????」

前沢は、ははーんと小声で軽く呟くと全く頼りがいのない言葉を発する。

「うわぁ、久瀬君ってモテモテだねぇ♪」

そう前沢が言った瞬間に須藤が動いた。

「俺も混ぜてくれ!!!」

「おやっ、男の子にも♪」

更に事態がゴタゴタになった頃に誠たちの担任、藤枝が教室に入ってきた。

「はい、みんな座れ。テストで疲れているかもしれんが10分くらいで終わることだから聞いてくれ」

と手元に持っていた大きな茶封筒から白い紙を取り出す。

「アンケートでな、“全国万引き撲滅委員会”からだ」


その言葉を聞いた瞬間、誠と里佳子が顔が固まった―。



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