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ダンジョンブレイク③

スーツのお姉さん視点。

大穴から湧き出る異形どもを斬る度に湧き上がる民衆の歓声。

探索者たちも動揺を鎮めたのだろう、迅速かつ的確な避難誘導を行っている。

後は魔物を全滅させるだけなのだが···私は少しばかり焦っていた。



大抵の場合はダンジョン内で魔力は自然に霧散するが、ひとたびダンジョンブレイクが起きてしまえば地下の魔力が増幅し、モンスターも強化される。

さらに深層や深淵を保有する高難度ダンジョンは、魔力の量が多く密度も大きい。

ならばもし···ボスモンスターが強化された状態で(・・・・・・・・)湧き出てきたら?

おそらく私でも勝てない。



幸いダンジョンの自己修復作用は旺盛だ。

数時間もすればこの大穴は塞がり、地下深くに棲むモンスターは出てこられない筈。

それまで耐え抜けば───






···そんな希望を嘲笑うかのように、地面が一際大きく揺れて。

先ほど倒したモンスター全てを合わせても足りないほど膨大な魔力が、地下の大穴を拡げながら迫り上がってきた。



炎を全身に纏った一体のモンスター。

龍種の最上位にして、深淵の覇者として世界最上位の探索者からも恐れられる怪物···獄炎龍。

その瞳が私を見据えて、殺意を載せた魔力(ブレス)を叩き込んできた。



「ッ───凍れ!!」



氷結魔法を放ち、迫りくる火炎の勢いを削ぐ。

私がその場から離脱したのとブレスが氷を溶かしきるのは、ほとんど同時だった。

炎の熱が長い髪の先端を焼き焦がす。



「逃げろッ!!!」



この場にいる探索者では歯が立たない。

まずは周りにいる人間を全て(・・)逃さなければ、人命に気を取られて私も死ぬ。

せめて救援が来るまでは足止めしなくては。



───救援が来るまで?

魔力で強化(バフ)された獄炎龍を倒すには、それこそ国中の···あるいは世界中の猛者をかき集める必要がある。

一体どれだけの時間がかかるというのか。



「···ははっ」



乾いた笑いしか出ない。

先ほどのブレスよりも大きな炎の螺旋。

射線上には避難を終えていない一般探索者たち。



「氷結剣」



愛刀へ魔力をありったけ注ぎ込み、大上段から獄炎へ叩きつける。

僅かな拮抗の後、炎と氷は互いをかき消す。

攻撃を2度防がれて痺れを切らしたのか、龍がこちらへ飛翔し爪を振るう。

受け流そうとした刀から鈍い金属音が響き、圧倒的な膂力で吹き飛ばされた。

ビルの壁面に衝突し、口から血が零れた。



「か···はっ」



魔力は尽きた。刀も罅が入っている。

体はまだ動くが、あと一撃耐えるのがやっと。

とても救援には間に合わない。

···あの女の子たちに“下がっていろ”と言っておきながらこの体たらく。

情けない限りだ。



「っ、ぉぉおおおっ!!!」



再び迫りくる凶爪。

せめてこの一撃だけでも受け流せ!!

数秒でもいいから時間を稼げ───



決死の覚悟で構えた、その時だった。






視界の端に橙色が映った、そう認識出来た頃には獄炎龍の腕が塵と化していた。

目を見開き呆然とする私を他所に、龍は断末魔をあげながら身体を崩壊させていく。



「···どうなっているんだ、一体」



この時の私は少女の献身と苦しみを知らず、戸惑いながらも安堵するばかりだった。




─────


《ステータス紹介》

名前:遠瓦京子(おんがわらきょうこ)

レベル:57

年齢:41

力:17

敏捷:43

魔力:21

体力:18

精神:15

運:9


スキル:

[氷結魔法]SLv7

[剣術熟練]SLv15

[剣戟強化]SLv8

[氷結剣]SLv5

[責任感]SLv10


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