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犠牲的行為

ビリーが()を庇って深手を負った。

血の気が引く思いで自分の慢心を責めた。



だけどまだビリーは死んでない。

命の気配はまだ残っている。

瞬き1つのうちに動揺を律して、脳内に走った“閃き”───秘められた“可能性(スキル)”が解放(アンロック)された感覚を信じて、ステータスプレートを展開した。



[犠牲的行為]SLvなし

自らの命(致死的ダメージ)と引き換えに、任意の敵へ極大ダメージを与える。

複数に狙いを向けることも出来るが、その分威力は分散し弱くなる。

ダメージ量は残魔力量に依存する。



伏せられていたスキルは、今の自分にとってこの上なく都合の良い物だった。

誰も(・・)死なせない」という決意を固め、俺は腰に付けていた小さなナイフを自分の胸に突き立て、心臓を貫いた。



◆◆



まだ俺達が未熟で、国に搾取されていた頃。

目の前のアイツ(キメラ)とは仲間たち数人で戦ったことがある。

だけど生き残りは俺とビリーだけで···命からがら、逃げるのがやっとだった。



そして今、その時と同じ個体かは分からないが、再びビリーが瀕死の重傷を負った。

被毒を覚悟した上での特攻···それでもヤツを倒すには至らなかった。



せめてアカリだけでも生きて返さなければ···ビリーの献身に報いるにはそれしか無い。

そう考え、未だキメラの射程圏内にいるアカリへ近づこうとした瞬間───



アカリが自分の胸にナイフを突き刺した。



「な···!?」



あの位置は間違い無く心臓だ。

確実に死へ至る自傷。

意図が全く読み取れず、混乱の極地にあった俺を置き去りに、事態はまた急変する。



アカリの全身から橙色の柔らかな灯りが溢れ、キメラの体を覆い尽くした。

とても攻撃とは思えない“それ”を受けたキメラは、今までで一番の絶叫をした。

モンスターの身体が急速に塵と化し、崩壊していく様子を、俺はただ呆然と見ている事しか出来なかった。



「ッ、呆けてる場合じゃねえ!」



ビリーを背負い、アカリを腕に抱いて、俺は長い階段を登り始める。

クソ重え···!ビリーの奴め最近になって筋肉付けやがって、重いんだよクソがッ。



「ビリー、死ぬなよ!」

「あ···アカリは···」

「分かんねえ、けど···きっと大丈夫だ!」



心臓はズタズタで呼吸も止まっているが、既に出血は止まっているし、自然治癒にしては不自然なほどの速度で傷口が塞がってきている。



だからきっとアカリは大丈夫だ。

あの子が考え無しにこんな事をするわけが無い。

自分自身にもそう言い聞かせながら、俺は階段を駆け上がっていった。


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