なきがらに通知の音が響くとき
ネットでバズった快感が忘れられない。常に誰かが通知を鳴らし、俺を無視しない。一躍スターになった気分だった。
しかし、ネットの流行は切り替えも早く。たった3日で話題は他のくだらないポストへと移っていった。
「ぜってぇ俺の話題のほうがおもしれぇのに」
そんな嫉妬心を持ちつつ。俺はもう一度バズりたくなった。更新する度に通知が止まない快感を脳が覚えてしまったのだから仕方ない。
しかし、バズった内容と同じ事を呟いても今度は棒にもかからなかった。
「はぁ、つまんねぇ。何でもいいからバズりてぇ」
この際、炎上でもいい。
また人に俺を周知させたい。
無視させないようにしたい。
これらの欲を持ちながらタイムラインを眺めていると、自殺を仄めかすようなポストを見つけた。多くのいいねを稼いでいる。
「……は。てめぇの命なんか知らねぇよ。死ぬ気なんかねぇくせに」
俺は、深く考えずに、引用ポストで、
《みなさん。この人死ぬらしいです。応援してあげてね》
と茶化した。
当然いいねが来るはずもなく。
シャワーを浴びて寝る準備をしていた。
──ぴこん。
通知が鳴った。
「ん。フォローだ。何の投稿もしてねぇ垢か」
アカウント名は『トモ』
ブロックするか迷っていると、
──ぴこん。
また通知が鳴った。
「……なんか炎上でもしたか?」
またしても捨て垢っぽいアカウントだ。名前は『にしん』
「トモ、にしん……変な名前だ」
──ぴこん。
またまた通知が鳴る。2通続けて鳴った。また捨て垢か。何の投稿もなかった。
アカウント名『De』『yo』
トモ にしん De yo
(あー……)
俺は、この『共に死んでよ』とも読み取れる通知の嫌がらせに心当たりがある。さっきの自殺野郎だ。
俺は、DMで自殺を仄めかしたアカウントに、ふざけるのは止めろと書き込んだ。はぁ、命を盾に活動してる奴は面倒くさくて仕方がない。
──ぴこん。
DMが返ってくる。
本当かは解らないが、アカウントの親が出てきた。それによると、
《息子はついさっきマンションから飛び降りました》
らしい。
(俺のせいじゃ……ないよな)
気味悪さを覚えつつ、風がコツコツ叩く窓の方を見た。
「あれ、窓。閉めてなかったっけ?」
それに、窓の鳴り方がおかしい。誰かがノックしたみたいだ。まさか、自殺した奴が『共に死んでよ』と誘ってきたなんて、んなわけねぇよな。
──ぴこん。
俺が窓を閉めようとした時。通知が来た。携帯の方を見た時、窓のほうからゴミ袋が捨てられたかのような大きな物音がした。
「……あ……ぁ」
携帯を取り、恐る恐るベランダに出て下を覗き込む。
(ここ、9階だぞ……)
手もとが《きぃ》と掠れた音を出す。柵が壊れた。そのまま転落した俺は今、地面に叩きつけられている。
──ぴこん。
携帯が通知を鳴らす。新しいフォロワーのようだ。意識が朦朧とするなかで俺は名無し無言アカウントの画像欄を見た。
そこには、血だらけで倒れている俺の姿があった。
──ぴこん。
──ぴこん。
了




