第2話「これって異世界転生だよね?」②
――何いってんの?
てのが、みんなの心の声だろう。
その言葉の意味を噛み砕くのに、いったいどれだけの時間が必要だろうか?
もはや、子供の高圧的な言葉に違和感を抱く余裕なんてない。
まぁ、俺は正直マジか! と良い意味で胸がざわついた。
異世界転生といえばアニメやライトノベルでは定番のアレだ。
知らないこともない、むしろ良く知っている方だ。
今、俺はその異世界転生を追体験できるらしい。
てことはやっぱり夢? いや、そんな感じはしないけど……。
また耳打ちをされた右の子供が口を開く。
「貴様らのようなゴミは焼却炉へ直行でも良かったのだが、特別にチャンスを与えよう」
「チャンス?」
俺からようやく出た言葉だ。
耳打ちをされた子供が直後に首を傾げると、左の子供に耳打ちをする。
少し考えた左の子供は軽く微笑むと、右の子供へ耳打ちを返した。
「何をヒソヒソと話してるんだ?」
近くにいた男が訊ねると、右の子供が肩を震わせながら一人の老人を指差した。
「あのジジイ。この中で一番禿げている。ウケる」
「は、はぁ……」
と、老人は声を出すことで精一杯みたいだ。無理もない。
この状況で冗談を返せる人間がこの中にどれだけいるだろう?
いないな。
すると左の子供がようやく口を開いた。
「皆さん。今回は同時に沢山の人数で死んで頂き、誠にありがとう御座います」
なんだ、左の子供は礼儀正しいぞ。話の内容はブッ飛んでるけど。
「皆さんが思われている通り、皆さんは東京スカイツリーの暴発に巻き込まれてお亡くなりになられました、2624人の異世界転生者です」
そんなに死んだのか!? あの爆発で。メチャクチャだ……。
しかも2624人の異世界転生って、アニメやラノベでも見たことがない人数だぞ。
俺の感覚では異常だ……。
「そう、異常事態です」
俺の目を見ながらそう言われた。やっぱり、心の中が筒抜けだ。
この子達の前では隠し事なんて出来やしない。ていうか隠すようなことなんてないけど。
「とはいえ、今回はこれくらいの人数は受け入れるつもりでしたので、想定内といえば想定内なのです」
ようやく勇気ある一人の若い男が前へ出た。
辞めとけ、アイツ等は危険だぞ! という俺の視線なんて、男にはまるで伝わらない。
心を読まれる以上の何かがあるかも知れない。
「これからどうなる? 異世界転生ってなんだ?」
「異世界転生とは……」
「貴様らは新しい世界で生きる。以上」
右の子供が話を遮ると、左の子供は少し不満そうな表情を浮かべ再び話し始めた。
「これより皆さんには、イースターエッグ選定の儀を行って頂きます。この宮殿に隠されたエッグを見つけ出すのです。それが異世界での皆さんを救う力になる……かも知れません」
ニコリと笑うと、双子は向かい合い互いの手の平を合わせた。
そして詠唱を始めると、地面が振動を始める……。
また地面が揺れた!
床のタイルの継ぎ目が解ける。まともに立つのがやっとだ。
再び響めきや悲鳴が起こる中、大聖堂のような空間がトランスフォームを始めた。
俺の目の前の床が突然上に伸びて壁ができる。今度は逆に後ろの床が降下し、俺はミツキの手を掴んで引き寄せた。
落ちたらひとたまりもない。
その間、翻弄される人々が散り散りになる。
「みんな離れるな!」
それを見た父さんの言葉を聞いて、俺達は互いに身を寄せ合い、固くいスクラムを組んだ。
絶対離すもんか!
俺達が立っている床は、旋回や回転、上昇しようやく動きがとまる。
ゆっくりと目を開き、辺を見ると俺は思わず息を飲んだ。
緑の臭いがした。
鳥のさえずりや、水面の揺れる音が聞こえる。
幾層にも歪なフロアが出来上がり、草木が実り、水が溢れ泉となっているフロアが見えた。
縦横に果てしなく広がる幻想的な迷宮がそこにあったのだ。
「何だコレ……」
俺は思わずそう言葉を漏らした。
蠢く地面によって大勢いた人々――いや、転生者達が各フロアに分散している。
はぐれることのないよう固まっていた俺達は、双子の次の言葉を待った。
「さぁ、イースターエッグを見つけるのです」




