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第1話「炎の東京スカイツリーと2624人の異世界転生者」③

 3時間前。



 俺、朱賀 多留斗(しゆが たると)(18)はどこにでもいるただの高校生だ。


 友達はタルトって俺のことを呼ぶ。

 喧嘩が苦手で、超がつくほどに平和主義者……だと皆からいわれるが、自分ではよく分からない。


 そんな俺は家族と共に、東京スカイツリーの展望台で馴染みのある街並みを見下ろしていた。


 奥手で普段からあまり感情を表に出さない光希(みつき)(14)が、胸の前で両腕を組みながら、不機嫌そうに大きな溜息を付く。


「どうして東京に住んでいてスカイツリーなの。しかも休日だしさ。私達以外観光客だよね」


「仕方ないじゃないの光希。パパの計画したことが今まで上手くいったことなんてある?」


「ない」


 母さん(律子(りつこ))は、いつもそうだ。あの短く的を射た言葉は、光希だけでなく、俺も納得させられた。42年生きてきた母親ってのは、やっぱり底が知れない。


 厳しくもその中に優しさがあって、料理も上手いし自慢の母さんだ。


 光希は言葉数こそ少ないが、その分、一言一言に遠慮がなく、もしかすると母さんよりも指摘が鋭い。もう少し愛嬌があれば可愛いんだけどな。


「まぁまぁ、良いじゃないか。そういう時は逆に考えてみるもんだ。自分達が住んでる街を見下ろすって経験はないだろぅ? 近くにあると意外に行かないものだ。きっと新しい発見や未知の経験が待っているのかも知れない。パパ的にこの作戦に名前を付けるならぁ……そうだな、近場リバース作戦とでも呼ぼうじゃないか」


 父さん(みのる)(43)は、高らかに笑いながら嫌がる光希の肩をポンポンと叩いた。


 父さんは良く影が薄いといわれることがある。

 会社でも1日中誰からも気付かれないことだってあるらしい。


 決して目立たない性格でもないのに不思議でもある。

 本人は自慢げにいうけど、俺としてはちょっと心配だ。でも優しくて面白くて、いつも家族のことを第一に考えてくれる。


 母さんと光希は、そんな父さんの言葉を聞いて落胆と嘲笑に満ちていたが、俺は父さんの作戦名を聞いて心が踊った。


「父さん凄いよ。確かに近くにあるからいつでも行けると思っていたら、結局全然行かないってことあるもん。近場リバースは逆転の発想だよね」


「そうだろ多留斗。今度、友達と近場リバースを使うことを許可しよう」


「あざーす」




「ママ、私お腹空いちゃった」


「そうね。稔、そろそろランチにしようよ」


「そうだな、して今日のランチ作戦は……」


 父さんの言葉に耳を傾けていると、激しい閃光が俺達を包み込んだ。


 何が起こったのか状況を理解するよりも早く、爆発音と熱波、そして悲鳴が俺達に襲いかかった。

 あちこちで爆発が起こり、飛散したガラスや内装が荒れ狂う。


 気付けば俺と父さんは、降りしきるスプリンクラーの水の中、光希と母さんの上に覆いかぶさっていた。


 鳴り響く警報音と、恐怖や苦痛に泣き叫ぶ人々の声が混ざり合い、こっちまで混乱する。


 鼻につく焦げた臭い。

 見上げると、黒煙が天井で蜷局(とぐろ)を巻きながら広がる。


 咄嗟に、避難誘導灯のグリーンランプとLEDの閃光を視界に捕らえた俺は、家族に避難を勧めた。


「ここから早く出ないとッ」


「煙を吸っちゃダメだ。服でも何でもいいから鼻と口を覆って、姿勢は低くだ。良いな!!」


 父さんがそう助言をした時、誰かが悲鳴にも似た叫び声をあげた。


「か、傾いてる……崩落するぞッ!!」


 地面が揺れ、確かに傾きを感じた俺達を嘲笑うかのように、トドメの爆発が全てを吹き飛ばしたんだ。

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