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背徳感
「やっぱり、結婚なんて間違いだったろ? 若くて可愛い女なんていくらでもいる」
ラブホテルを出ると、男二人は居酒屋に駆け込んだ。
本当は谷津となんか話したくなかった。けど孝一の胸の内は罪悪感でいっぱいだった。少しでも家に帰る時間を遅らせたかった。
「おかえり」
歩はまだ起きていた。
飲んで遅く帰ることは一度や二度じゃない。だがこの日の歩はいつもと違った。妙にじっと孝一の顔を見て、匂いを嗅いだ。
女の跡は残っていないはずだ。そう思っても孝一の下半身はうずき、ほんの数時間前の確かな裏切りを証明していた。
とはいえ、背徳感は期待した通りのちょっとした刺激になった。孝一はその晩、およそ半年ぶりに歩を抱いたのだ。一日に二度も自分自身を屹立させることができたことは、孝一に誇りを与えた。
尿道に虫が這うようなむず痒さを感じたのは、それから4日後のことだった。