表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/44

お見合い

「歩さんは結婚相手に何を求めますか?」

 ホテルのラウンジでのお見合いを終え、孝一と椎木歩(しいのきあゆむ)は屋上庭園を散策していた。

 まだ二十四才。うっすらピンクの上気した肌、サラサラとしたブラウンの長い髪、つぶらな瞳。黄色のワンピースを着た小柄で愛らしい姿が、孝一にポピーの可憐さを思わせた。

 だからこそ、孝一はそんな女の隣を歩く自分の姿をみじめに感じた。

 すれ違う若いカップルや自分より年下の子連れ夫婦を目にし、やっと年の離れた女に申し込みを続けてきた自らの愚かしさが分かった。

「……」

 椎木歩は黙っていた。何かを質問しても、すぐには答えない。

 自分からお見合いを申し込んできておいて、こんな中年男の相手をするのが嫌なのか?

 疑心にまみれる孝一をよそに、歩は言った。

「……安心させてほしい、と、思っています」

「……安心?」

「ええ。変わらずに傍にいてくれるんだっていう、安心がほしい」

「まだ若いんだし、傍にいてくれる相手ならいくらでもいるでしょう?」

「ええ、それは、います」

 いるんだ。歩の答えに孝一は少し哀しい気がした。

「でも、そういうのは、自由で、楽しいけど、ずっとは続かないでしょう?」

「だからこんなオジサンにお見合いを……でも、やっぱりそんなの間違いじゃないですか。あなたみたいにキレイな人、私なんかには不似合いですよ」

「……」

 また黙り込んでしまった。つまりは、そういうことか。

 目の前の女に、若く美しい女に、一人の中年男として諦めのついた孝一に、歩は言った。

「間違いじゃなかった」

「えっ?」

「上尾さんといると、ホッとする」

 孝一は隣にいる女の顔を見た。他には何も目に入らなかった。そんな純粋な気持ちになれたのは、思い出せないぐらい久しぶりのことだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ