婚約破棄された悪役令嬢だけど、騎士団長に溺愛されるルートは可能ですか?
バッドエンド確定で前世思い出すの、ホントやめてほしい。
乗っている馬車が、小石を噛んでガタンと揺れた。
こんな小さな振動で過去を思い出すくらいなら、今までいくらでも思い出す機会があったはずじゃ!?
どうして今、ここで!
「うぐぅ」
「どうした、エヴァレイン」
あまりの悔しさに、思わず変な声が出てしまった。
騎士団長のロカ様が、冷たい目で私を見ている。
それもそのはず。私エヴァレインは、断罪されて馬車で鉱山へと移送中なんだもの。拘束されているわけじゃないけれど、走る馬車から飛び降りたところで怪我をするかすぐに捕まるだけだ。
私はため息をぐっと堪えて対面に座るロカ様を見上げた。
「いえ、ちょっと前世を思い出してしまって」
「前世を?」
正直に話すと、ロカ様は眉を顰めた。
そんなお顔も麗しいのだけど。
しかし前世の最推しの人であるというのに、私ってば酷いことばかりしてしまっていた。嫌われていても仕方ない。
本当に、もっと早く思い出していれば……。
「どんな前世だったんだ?」
愛しのロカ・ルッツ・アーベルン様に興味を持ってもらえた?
短い金色の髪。アメジスト色の瞳。細身なのに超人的な力を持つ人情家。
そしてヒロインを一途に見守り続ける、この国の騎士団長。
「私は日本のOLで、名前は石嶺玲香……レイカ・イシミネ」
「ニホン……オーエル……」
ブラック企業に勤めていて、家で意識を失うように寝たのが最後の記憶。
多分、過労死。
「そしてこの世界は『ラブメモリーズ〜運命の恋の扉〜』っていう、ゲームの中の世界なの!」
「ゲームだと?」
「スマホっていう、小さな機械に人が映し出されて……とにかくこの世界は、小説の中のようなものなの! 私もロカ様も、みんなその登場人物なのよ!」
「ほう」
なにを言ってるかのかと呆れられるかと思ったけど、ロカ様は興味深そうに身を乗り出した。
「みんな小説の登場人物か。まぁにわかには信じられない話だが、面白い」
「ロカ様は不思議に思わなかった? わずか十五歳で魔王軍を壊滅させたとか、十八歳で学園に通っている間に騎士団長に就任するとか、普通ではあり得ない経歴を持っているでしょう?」
「そうか? みんなこの程度の経歴は普通に持ってるだろう」
「う……確かに」
ヒロインの周りにいるヒーローたちは、みんな若くて美形でとんでもない経歴と素晴らしい能力の持ち主ばかり。
それが普通なのよね、この世界は……。
「小説というなら、この先の展開をエヴァレインは知っていることになるが?」
「ええ、わかっているわよ……この先の、最低最悪な展開をね……」
ラブメモリーズ……通称らぶメモのヒロインであるラブアイナは、十人選べるヒーローの中から、第一王子のフィリップ様を選んでいる。
そしてフィリップ王子の婚約者が、侯爵令嬢であるこの私、エヴァレイン・ヴェンウッドだった。そう、過去形。
ラブアイナは平民だけど魔力が使えて、貴族学園に特別入学してきた。
ヒロインパワーで、どんどんヒーローたちを魅了して攻略していく乙女ゲーム、それがらぶメモ。
攻略の難易度ナンバーワンはフィリップ王子で、課金して魅了アイテムを使わないとなかなか落とせないらしい。私はロカ様一直線だったから、詳しいことはわからないけど。
けど、どうしてよりによって、難易度激鬼のフィリップ王子を攻略してしまうのよ……。
同じくらぶメモにハマっているフィリップ推しの友人の話では、フィリップ王子の攻略ルートを制覇すると、ドアマット悪役令嬢が爆誕するらしい。つまり、それが私……エヴァレイン。
エヴァレインはフィリップ王子の婚約者。
けれどラブアイナが学園に入ると、フィリップ王子は魔力持ちのラブアイナに興味を持ち始めた。
前世の記憶がなかった私は、そんなラブアイナを疎ましく思っていて、少しずつ意地悪をしてしまっていた。あのゲームのように。
くう、フィリップ王子なんていくらでもくれてやればいいものを!!
だけど時すでに遅し。
ラブアイナは課金攻略並の勢いで、フィリップ王子を虜にしていった。
それを許せなかった私は、ロカ様の妹君を誘拐。妹を助けたいなら言うことを聞きなさいとロカ様を脅して、ラブアイナの着ている服を人前で引き裂くように命令した。それが昨晩の社交界でのこと。
人質をとられているロカ様は、仕方なくラブアイナの服を引き裂いた。袖が破れただけだったけど。
それでも大きく肩が見えて、社交の場ではしたない恰好をさらけ出したラブアイナは、注目の的! エヴァレイン的には大成功だったのよねぇ……
人前で肌を晒したラブアイナは、もうフィリップ王子に相手にされなくなるって思い込んでた。
けど王子は、すかさず自分のマントをラブアイナにかけて、肌を隠してあげていた。きっとあの場面にはスチルがあったに違いないわ。
フィリップ王子は激怒し、服を裂いたロカ様を糾弾した。騎士団長ともあろう者が、なにをしているのかと。
私に人質をとられているロカ様は、ぐっと耐えるように黙っていて。ああ、あの悔しそうなお顔を思い出すとたまらないわ! フィリップ王子ルートを選んだことがなかったから、あの表情は知らなかった! 眼福眼福。
まぁそれで全てが終わるわけもなく。
有能王子がなにかあると気づいて、ロカ様の妹を救い出した。首謀者はもちろん私。
大激怒したフィリップ王子に私は婚約破棄を言い渡されて、そこからドアマットモードが始まったってわけ。
今は、王子に許されたロカ様が、私を鉱山へ移送している最中だ。
私はここからの展開がどうなるかを知っている。友人がまとめサイトを作っていたから。
「私はこれから、鉱山区で働くことになるわ。ただ働くだけじゃない。そこで元侯爵令嬢と知られて、散々贅沢してきたんだろうと言われていじめられるの。無視はもちろん、殴られたり、食事を奪われたりね」
「……フィリップ王子はそんなこと、望んでおられない。エヴァレインを更生させるプログラムだと聞いている。苦労を知らぬ女だから、鉱山で働かせるのが一番だと」
更生のために鉱山へ。らぶメモではそういう設定にされているのだから、王子に文句は言うまい。
きっとフィリップ王子はそれが最適解だと思っているし、鉱山で私の身に起こるあれやこれやは想定していないのだから。けど、さすがにその先を思うと気が滅入る。
「更生したと、誰が判断するのかしら。現地の人? 更生したって報告をすると思う?」
「……そんな者たちばかりでは、更生したという報告などしないだろうな」
「ええ。私は毎日罵倒され、いじめられ、朝から晩まで働かせられる……」
そこまで言うと、私の手が勝手に震えた。
これ、前世と同じじゃない。
ブラック企業で体も心もクタクタになるまで働かせられた。
パワハラ・モラハラ・アカハラ・セクハラ・ショカハラ、あらゆるハラスメントが横行して、ロカ様のいる世界に行きたいと願いながら眠った。
鉱山に行けば、前世と同じようなことが待っている。
それだけじゃない。あのゲームは、罪を犯した者を過剰に粛清していた。その方がプレイヤーの気持ちをスッキリさせられるからだろう。いわゆる、ざまぁというやつ。
確か、まとめサイトにはもっと酷い粛清が書いてあった。それを思い出すとますます体が震える。
「エヴァレイン?」
「私は、男の人に無理やり……なのにアバズレと呼ばれて男を騙したと訴えられて、無実の罪を着せられる。そして磔の刑にされて死ぬ運命なのよ……っ」
ああ、本当にどうして断罪後に思い出すの!!
こうしてロカ様に会えたっていうのに……ロカ様を利用して傷つけて、私への印象は最悪じゃない! 断罪された後だから、もうこのルートは変えられない。私はヒロインじゃなく、悪役令嬢なんだもの! 死ぬまでドアマットされるんだわ!!
「落ち着け。実際にそうなるとは限らない」
「なるわ……そういうシナリオなんだもの。ちなみにラブアイナに選ばれなかった九人のヒーローは、職務を全うして幸せに暮らしたってあるけど、誰も結婚はしないわよ」
ラブアイナ以外の人と結ばれてほしくないプレイヤーが多いことからの配慮だろう。選ばれなかったヒーローたちは、一生独身だ。
「そのヒーローとやらに、俺も入っているというのか?」
「ええ。ロカ様も攻略対象よ……残念ながら、今回はラブアイナに選ばれなかったけれど」
「そうか。まぁ問題はないが」
「問題ない? ああ、ラブアイナと結婚できなければ、他の誰とも結婚したくないって意味ね」
そういう設定なのだろう。他の九人が結婚しない理由は。
「いや。別にラブアイナはどうでもいい」
と思っていたけど、違うの!?
「どうでもいいって……ロカ様はラブアイナのこと、好きだったわよね!?」
「いいや。ちっとも」
「ちっとも!?」
そう言われてハッとする。
ラブアイナは攻略対象をフィリップ王子に絞っていたから、ロカ様の好感度が全然上がってないんだ。
「でもラブアイナのことを気にして、見守っていなかった?」
「騎士団長だからな。王子殿下に近づく者は、常に見定めてはいたが」
「そう、だったの……」
ロカ様は、ラブアイナのことをなんとも思っていない!!
もしかしてもしかすると、私にもワンチャンあるのでは!?
……いえ、ないわね……ロカ様の妹君を人質に取る悪女だもの……私……。
「っぷ」
……ぷ? 今、ロカ様が……笑った?
顔を上げると、目の前にいるロカ様が片方の口の端を上げている。
ううっ! 心臓が撃ち抜かれそう!!
「なにを百面相しているんだ、エヴァレイン」
ああ、前世であれだけ夢に見たロカ様に、話しかけてもらえている……!
好き……!
もうどうせ私はドアマットされて死んでしまう身。怖いものはなにもないわ。
伝えるだけ伝えなければ損よ!
「ロカ様。私、前世の時から、ロカ様の推しでした」
「推し?」
「大好きで大好きで、寝ても覚めてもあなたのことを考えていたということよ!」
強く訴えると、ロカ様は目を丸めて私を見ていた。
そりゃ驚くわよね、いきなりこんなことを言われても。
「前世での仕事が大変で……でもロカ様のお顔を見るだけで、本当に幸せになれたの。なのに私、今世ではロカ様に酷いことを……悔やんでも悔やみ切れないわ……本当にごめんなさい!!」
「まぁ、悔いているのならいい」
いいの?
あああ、やっぱりロカ様は神……!
人情家で優しいの……大好き……!
「ロカ様……厚かましいのを承知でお願いします。どうか、私と結婚してください!!」
思わず立ち上がった瞬間、ガクンと馬車が揺れた。
「きゃっ」
「エヴァレイン!」
そんな私を、目の前のロカ様がしっかりと抱きかかえてくれる。
「ごめんなさい、ロカ様……」
「本気か?」
「えっ?」
私を横抱きにしたまま座り、そのアメジスト色の瞳で語りかけられる。
ち、近くない?
心臓が飛び出ちゃいそうなほど、ドクドク鳴ってるんですけど……!
「俺との結婚を本当に望んでいるのかと聞いている」
すごい目力。やっぱり迷惑よね……でも、嫌われたとしても、想いだけは伝える。
このまま何も言わずにドアマット人生を歩むしかないなんて、絶対にイヤ!
「こんな話、信じてもらえないってわかってる。でも! 私はロカ様がずっと大好きで! この世界に来られたのは、ロカ様への強い思いがあったからに違いないの! 結婚、望むに決まってるわ!」
鉱山送りにされたくないがための、作り話だと思われても仕方がない。でもこれは、私の本心。
「私、ロカ様を愛してる。……心からあなたと結婚したいの!!」
本当に私、厚かましすぎる……!
でも今言わなきゃいつ言うのよ。伝えなきゃ、絶対に後悔するもの!
「エヴァレイン」
ロカ様が私の名前を呼ぶ。それだけで、胸が破裂してしまいそう。
そしてなにを言われてしまうのか……怖い。
「では、結婚するか」
「はい……え?」
え? ……え???
ちょ、待っ……今、なんて?
「実を言うと、俺もエヴァレインのことが気になっていた」
は? 嘘!? このエヴァレインを? ロカ様にとっては極悪令嬢だったでしょうに!
「信じられないという顔だな」
私はコクコクと顔を上下させる。
当然、信じられない。だって、私はロカ様の妹君を人質にとって、やりたい放題してたのに!
「俺は、フィリップ王子殿下がラブアイナに惹かれていく様子を見ていた。殿下にはエヴァレインという美しい婚約者がいるというのに、だ」
「う、美しい……」
いえ、確かにエヴァレインは美しいんだけど……! 私に言われていると思うと、照れてしまう……っ
「他の女にうつつを抜かす王子殿下の評価は、俺の中で急落した」
でしょうね。ロカ様はまっすぐ正義の人だもの!
まぁ設定なのだから、王子を責めるのは可哀想ではあるけれど。
あら? 正義の人であるロカ様は、私の悪事も許せないはず。なのに、どうして私と結婚してくれるの?
「王子殿下の興味が薄れて孤立していくエヴァレインが、憐れでならなかった」
憐れまれていたのね……人情家設定が、こんなところで発揮していただなんて……!
「でも私は、ロカ様の大事な妹を……」
「丁重に扱ってくれていたことは知っている。王子殿下が妹を発見した時、むしろ家に帰りたくないと言って大変だった」
ロカ様の妹君は六歳。一緒に遊んでいたら懐かれちゃって、私も楽しかった。
「でも私は、ラブアイナの衣装を破れとあなたに命令して」
「あれには驚いた。けれど袖だけが破れやすいように細工をしていたのは、エヴァレインだろう? 本当の恥をかかさぬように」
「どうしてそれを!」
「少し調べればわかることだ」
うう、ラブアイナにあのドレスを贈ったのは私だった。バレても仕方ないわ。
「そして、実はラブアイナに相談を受けていた」
「そう……だん?」
「ああ。彼女はこういう展開になることを、全部知っていたのだ」
「え……全部、知って……」
「彼女の前世の名前は、アイ・ユウオカ。聞き覚えはないか」
「あ、愛!?」
愛は私のらぶメモ仲間で一番の友人! 超課金勢で、らぶメモのまとめサイトまで運営しているらぶメモフリーク!
まさか、愛までこの世界に転生していたなんて……! 同じ会社だったものね!! きっと愛も過労死に違いないわ!!
それともフリップ王子が好きすぎて、ついに尊死でもしたのかしら……!
「彼女は、フィリップ王子と結ばれると、エヴァレインが不幸になることを予知していた。それをどうか、救ってほしいと頼まれたんだ」
「……愛……!」
愛の気持ちに涙が出てくる。
私がラブアイナを愛だと知らなかったように、愛も私をエヴァレインとは知らなかったはずだ。
愛はエヴァレインも好きだったから、いきなり悪役令嬢にされる展開を毛嫌いしていたっけ。だからエヴァレインが私だって気づかなくても、救おうとしてくれたんだわ……!
「じゃあ、ロカ様は愛に……ラブアイナに頼まれて、私を?」
「それもあるが」
細められるアメジストの瞳。甘いマスク。
目の前で感じる息遣いに、もう倒れてしまいそう。
「半信半疑だったゲームの世界というのも、二人も証人がいるのでは信じざるを得ない。決められた人生から抜け出すのも面白いだろう?」
キラキラと……! キラキラと笑ってる……! エフェクトすご!!
ここ、スチルで欲しいわ!
ん? でもつまりは、別に私を好きではないってことよね……いえ、わかってるけど。
「それに」
ずっとロカ様の膝の上にいる私の頬に、長く美しい指先が乗せられた。
ひゃああ、なにを……っ
「殿下の隣で常に優しく微笑んでいるエヴァレインを、いつも好ましく思っていた」
「ロカ様……」
エヴァレインをデザインしてくれた神絵師様、美しく描いてくれて本当にありがとう!!
「百面相する今のエヴァレインも可愛くて仕方ない」
百面相! 前世の記憶が戻った今の私まで可愛いと言ってくれるなんて……それも大好きな推しに。
ロカ様の指先が、つつぅと私の首筋を撫でる。
くすぐったくてゾクゾクして……変な気分になっちゃいそう……っ
「俺とエヴァレインは、その物語でキスをしたことはあるか?」
「キッ……!? いえ、ないわ。主人公はラブアイナですもの」
「では、俺とキスすれば、運命を変えられるということだ。覚悟はいいな」
「覚悟……な、なんの?」
「決まっている」
私の肩が抱き寄せられて、ロカ様の甘い、甘すぎるお顔が眼前に……!
「俺と結婚し、運命を変える覚悟だ」
「ロ、ん……っ!?」
私の唇に、ロカ様の……! 推しの!! 誰よりも愛おしい人の唇が!!
前世も含めて、ファーストキスです……ありがとうございます!
ロカ様のポスターに毎日キスしていたけど、それはノーカンで!
どうしよう、嬉しい……くらくらしちゃう……
ゆっくりロカ様が離れていっても、頭がぼうっとしている。
「どうする。もう一度するか?」
「は、はい、お願いします……夢じゃないなら……」
「夢ではない。わからせてやる」
わからせきた……!
私はまたじっくり、じっくりとロカ様に味わわれて……
へろへろに、されちゃいました。
それからロカ様は王都へと御者に進路を切らせ、王都に戻ると同時に私と籍を入れてくれた。
元々鉱山地帯へは、エヴァレインの更生のためだったので、ロカ様が自ら更生させると引き受けてくれる形になった。
渋っていたフィリップ王子を説得してくれたのは、ラブアイナ……つまり、愛だ。
私たちはお互いに正体を明かし、一番の友人として互いの幸せを喜びあった。
「やっぱりらぶメモは最高よね!!」
「推しと結婚できるなんて、最高!!」
アラブアイナときゃっきゃとティータイムを楽しんでいると、愛する夫が迎えに来てくれる。
「そろそろ帰るぞ、エヴァレイン」
「ロカ様!」
立ち上がって振り向くと、ロカ様が私を抱きしめてくれる。それだけでは飽き足らず、目元や頬にキスまで……
はぅううう、やりすぎ……!!
「ラブアイナも、部屋に戻ろう」
今度はフィリップ王子が現れて、ラブアイナにちゅっちゅと音を立てている。
この世界の人は、もう……!! 嬉しいけど!!
「じゃあまたね、レイ」
「ええ、アイ」
さよならの挨拶もそこそこに、私はロカ様に抱き上げられる。
「歩けるんだけどっ!?」
「歩きながらだと、キスしづらいからな」
歩きながらまで、キスしなくていいと思うんだけど……!
やっぱり前世の記憶があるから、いつまでも慣れない。嬉しいけど、恥ずかし過ぎて。
「今日の更生プログラムは、覚悟しておくんだな」
「ひぇ!」
まさかドアマット悪役令嬢に、騎士団長溺愛ルートが確立されるなんて……!
「……嬉しくないのか?」
不安そうな顔も、格別。脳内スチル頂きました!
「嬉しいに決まってるわ!」
ちょっと休みたい日もあるけれど! ドアマットの人生より百倍いい!!
「夜が楽しみだ」
そう言って笑う愛しのロカ様に、私はいつまでも、いつまでも胸を打ち鳴らすのだった。
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