8 子猫の地球生活スタート★3
その後、二人はお風呂に一緒に入り、寝間着に着替え、リビングでくつろいでいると、なみのパパも帰ってきて、改めてミカが自己紹介をすると、パパもミカがお家に来ることを歓迎してくれたので、これで、晴れてミカは正式に日乃彩家の一員となった。しかしながら、なみのパパも、ミカと会話することはできなかった。だが、なみのパパも、ミカが外では目立った行動はしない方がいいだろうという意見に賛成した。そしてミカから、なみの口を通して、惑星ウラニャースのこと、ミカの家族のこと、ミカのこと、そして伝説の五色の魔法子猫達の話を聞くと、なみのパパもママも涙なくしては、その話を聞くことはできなかった。
なみのパパは、ミカをそっと抱きかかえると、
「ミカはもう日乃彩家の家族なんだから、ずっとお家にいていいんだぞ。」
と、やさしく語り掛けた。
なみのパパは、なみのママよりも背が高く、髪を短く揃え、あご髭を生やした、やさしそうな感じの人だった。なみは、パパの方にも少し似ているのかもしれない。
「でも、五色の魔法少女だったら、なみが小さい時に大好きでよく観ていたわね。」
なみのママが、なみに向かってそう言った。
「うーん、そうなんだよね。パソコンで伝説の五色の魔法子猫達って検索しても、ヒットするのって五色の魔法少女のことばっかりなんだよね。…もしかすると、五色の魔法少女って伝説の五色の魔法子猫達をモチーフにして作られたのかな? …でも、まさか? ね。」
なみが少し首を傾げながら、ママにそう返した。
「ダメ元でいいから、明日テレビ局にでも聞いてみたらどうだ?」
なみのパパが、なみにそう提案した。
「うん。明日一応聞いてみる。」
なみはそう答えてからミカの方を見てみると、すごく眠そうだ。ミカはソファの上で寝転びながら大きく欠伸をかいていた。なみは時計を見た。そうだよね、もうこんな遅い時間だし、今日はこの娘にも本当に色々なことがあって、すごく疲れているはず。そろそろ寝かせてあげよう。
……あっ! 思い出した。
「ミカ、眠そうなところ悪いんだけど、裏庭の宇宙船を早く回収しなくちゃ。」
「…ふにゃ? あっ! そうだった。」
なみとミカは家の庭に出ると、ミカのパパとママも外に出て、二人の様子を後ろから見守った。
「でも、ミカは学校からの帰り道、ずっと私のバックパックの中にいたのに、宇宙船の位置が本当にわかるの?」
なみは少し不思議そうに、でもミカならなんとかなるんだろうな、と半面思いながら尋ねてみた。
「うん、もちろんわかるよ。裏庭からこのお家までの衛星軌道は全て自動的にインプットしてるから、こちらから操作すれば何の問題もないよ。それに、後でこの地球の衛星地図もインプットしておけば、地球中のどの場所にでも移動することができるよ。」
「なるほど。」
なみは、ミカの言っていることの半分も理解することができなかったが、全く問題はないということは理解した。ミカは、学校の裏庭で見せたように、目の前に透明なスクリーンを映し出すと、尻尾を使ってそのスクリーンをポチポチとタッチし始めた。すると、画面が衛星地図に切り替わり、徐々に画面が拡大すると、ミカが乗ってきた宇宙船を間近に映し出した。そして、ミカがスクリーンを再度ポチポチと操作すると、宇宙船がゆっくりと空中を浮かび出した。画面を見ていると、宇宙船がどんどん裏庭から遠く離れてきているので、その様子がよくわかる。
「それ。」
ミカがそう声を発すると、宇宙船は移動し始めたようだ、画面は、宇宙船から再び衛星地図に切り替わり、宇宙船が裏庭よりかなりの速さで、なみのお家に近づいてきているようだ。ちなみに、なみの家には、目印として猫のマークがついてある。やがて、宇宙船の位置が、その猫のマークと重なると、
「地上に降ろすね。」
ミカがそう言うと、宇宙船は、ゆっくりとミカとなみの目の前に綺麗に着地した。
「…なんだこりゃ。」
ミカの能力を始めてみたパパは、そう言って大きく驚いて口を開いたままで、2回目のママは、中くらいに驚き、何回も見たなみも、少し驚いて、降りてきたばかりの宇宙船をしばし見つめていた。なみの家族は、見た目には、普通のかわいい子猫にしか見えないが、実は宇宙から来たスーパー猫であるミカを地球人の代表として、本当に日乃彩家の家族の一員になってもらっていいのだろうか? と思うと少し怖くなった。
なみは、やがて落ち着きを取り戻すと、
「この宇宙船大事なものだし、とりあえずどこかにしまっておこうか?」
と、ミカに提案した。するとミカは、
「あっ、そうそう大事なことなんだけど、この宇宙船の左右の赤と緑のボタン、特に緑のボタンは絶対に押したらダメだよ。」
と、なみに注意を促した。
「えっ? 本当? ごめん、裏庭で何回も押しちゃった。」
「え――っ!? なんで?」
ミカは、驚きのあまり前後の足を真っ直ぐにしながら、ピョーンと空中に跳ね上がった。この一連の流れは、ミカが驚いた時の定番の動作として、お決まりになっているようである。
「ごめん、ミカ。宇宙船の中を開けようとした時、どうしたら開くのかわからなくって。…それで、何回も押しちゃった。」
なみは、本当に申し訳なさそうに、ミカに謝った。
「…うん。それだったら仕方ないね。うーん、でも、それなら何でこの宇宙船は起動しなかったんだろう?」
ミカは、不思議そうに宇宙船を眺めていた。
「そのボタン何なの?」
なみがミカにそう尋ねると、
「このボタンはね、赤いのが惑星ウラニャースから伝説の五色の魔法子猫達がいる星へ向かうボタンで、それでこの緑のが、ここ地球から惑星ウラニャースへ帰るためのボタンなの。」
「ふーん、そうなんだ。でも、何で起動しなかったんだろう?」
「うん、なんでだろう?」
ミカは、少し考えると、イヤな予感がした。もしかすると、この緑のボタン、そもそも惑星ウラニャースに戻るような設定自体、元々ついていなかったんじゃ? いや、そんなことは絶対ない。ミカは、首を横にブルブルと振ると、
「とにかく…もうこのボタン、絶対押したらダメだからね。」
なみが、パパとママに宇宙船の説明をすると、パパが宇宙船の緑と赤のボタンに、バッテンとテープを貼って使用不可にして、よっこいしょと宇宙船を抱え上げると、押し入れに仕舞ってくれた。ちなみに、ミカが宇宙船を操作したのは科学の力で、そして、食事の時に綺麗にナイフを使っていたのは魔法の力である。そして、宇宙船のような重い物体を魔法で移動したり、科学の力で操作するといっても、細かくコントロールすることはできないらしい。
「ミカ、もう遅いし今日は寝ようか。」
「うん。」
なみとミカは、パパとママにお休みを言うと、二人は再び二階のなみの部屋に戻っていった。なみは、毛布を折り重ねると床に敷き、
「ごめんね、ミカ。ミカのベッドはすぐ買ってあげるから、今日はここで我慢してね。」
「うん、ありがとう。」
ミカは、毛布の上まで移動すると、そこに寝転がった。最初、なみはミカに一緒に寝ようと提案したのだが、ミカは、誇り高きウラニャースショートヘアとして、誰かと一緒に寝てもらうなんて恥ずかしいことはできないと拒絶したのだ。
「じゃあ電気消すよ。」
「うん。」
「お休み。」
「うん、お休み。」
電気が消えると、ミカは暗い部屋をキョロキョロと見渡しながら、長かった今日の一日を振り返った。ミカにとっては、ウラニャースでパパとママとお別れをして、長い宇宙の旅路の果てに、今日地球に到着して、なみと出会い、彼女の家族にお世話になるまでの、これだけの出来事が、体感では一日の間に起こった出来事であった。でも、本当はどれくらいの月日が流れていたのだろうか? それを想像すると、ゾッとしてきた。パパとママとは一日しか会ってないはずなのに、それが何十年にも、何百年にも感じられる。でも、今日地球に来て、なみと出会うことができて、なみの家族とも出会うことができて、本当に幸せに感じられた一日だった。今夜は、地球に来てからの楽しかったことだけを考えることにして、ウラニャースのことは考えないようにしようと心に決めていた。でも、電気が消えて一人ぼっちになってしまうと、どうしてもウラニャースのことをパパとママのことを考えてしまう。ミカは、だんだん悲しい気持ちになってきた。その時だった。なみがベッドの方からミカに声を掛けた。
「ミカ、こっちにおいで。」
ミカは毛布から素早く立ち上がると、なみのベッドの元へとピョーンとジャンプした。