76. 常盤さんの犬派猫派論
プル達は、常盤さんの言ってることがまったく理解できなかった。常盤さんは、さっきは『犬派猫派』なんて存在しないみたいなことを言ってたのに、今度は人類に『犬派猫派』が存在するだなんて言っている。一体何が違うんだろうか?
プルが大きく手を挙げると、四人を代表して質問した。
「はい! 常盤さんのいう『犬派猫派』って、私達の『犬派猫派』とどう違うの?」
「ふふ。人類には『犬派』と『猫派』が存在する。確かに、それだけ聞いても、普通ならまったく理解不能だろうね。そうだ。では、まずはなぜ僕がそのような珍妙な結論を出すに至ったのか、その説明から始めるとしよう。少し退屈かもしれないが、まあ辛抱して聞いてほしい。元々、僕は科学がなんたるかを理解した幼少の頃から……そうだな、大体1年くらい前までは、ずっと未来のことについて研究を続けてきたんだけど……しかしながら、僕が未来のことを研究すればするほど、人類を中心に構成された現在の世界にとっては、害悪でしかないということが最近わかってね。」
「害でしかないって……私は絶対にそんなことないと思うよ。」
害悪と言ってる時、常盤さんがすごく悲しそうな顔をしてたので、ルーシーは、気持ちをこめてその発言を否定した。
「ありがとう。……まあしかしながら、それはどうがんばっても抗いようのない事実でしかないわけでね。それで、僕は未来の研究をすることを一切やめて、ならば、というわけで、それとは逆に過去の研究をすることにしたんだ。」
「過去の研究?」
「未来の研究がダメなんだったら、過去の研究をする以外他にやることがないしね。いわゆる消去法というやつさ。それに、過去の研究をしておけば、過去のどの地点で我々が誤った選択をしてしまったのか、それを回避するにはどのような修正が必要だったのか、そういった要所要所となるタイミングと、それを回避する手段を突き止めることができれば、いつか何らしかの役に立つ時が来るかもしれないしね。」
「??」
プル達は、常磐さんの言ってることが難解すぎて理解が追いつかなかった。
「それで過去の研究を進めていくうちに、なぜか研究がまったく別の方向に進んでいってしまってね。まあ特に何か目的があったわけじゃないし、別に急いでるわけでもなかったから、まあそのまま進めることにしたんだ。そしたら、人類の起源っていうものが『犬派』と『猫派』というまったく異なる二つの支幹から始まったということがわかったんだ。」
「はーっ??」
「ほう。」
メグは、常盤さんの発言に感心し、思わず声を出してしまったが、プル達の驚く声に上書きされたので、幸運にも誰にも気づかれることはなかった。
常盤さんは、メグを見てニヤリと笑うと、話を続けた。
「しかし、これは、決して僕が望んで手に入れた研究成果というものではなく、たまたま発見しただけに過ぎないんだけどね。でも、『犬派』の人間なるものが、犬から進化した人間のことを指すとか、過去に犬を起源とする犬人間なるものが存在していたとか、昔の人類には犬の尻尾が生えていたとか、そんなオカルトの類ではないからね。ただし、この『犬派猫派』なるものが、実際に何を指し示すものなのか……もしかすると何の意味もないのかもしれないけど……いまだ研究途上で、僕自身よくわかっていないんだけどね。」
「犬人間とか猫人間とか獣人が本当にいたら、すごいファンタジーな世界だよね。」
「まあ、意味はなかろう。」
四人の中で、ひときわファンタジー好きであるプルが、うれしそうに言った。
「ふふふ。まあそういうわけで、人類が誕生した時に、『犬派』の人類と『猫派』の人類という二種類の人類が誕生したみたいで、それでその時の構成比というのが、『犬派』が6で『猫派』が5という、『犬派』と『猫派』の割合が完全に6:5で構成されているようで、なぜかこれは起源から現在に至るまで不変の法則になってるみたいなんだ。それで、僕は『犬派』と『猫派』のどちらに当たるのか、試しに調べてみたんだけど、結果、どうやら僕は『犬派』に属するみたいなんだ。」
「はーっ??」
「ふむ。」
プル達は、常盤さんが本気で言ってるのか、冗談で言ってるのか、まったくわからなかった。メグだけが感心して常盤さんの説を聞いていた。
「いや、君達が疑問に思うのも無理はない。それを発見した当人の僕ですら、この研究成果はさっぱり意味不明なんでね。」
「でも、『犬派』の人間と『猫派』の人間ってどこが違うの?」
「うん、いい質問だ。『犬派』の人間だからとか『猫派』の人間だからといっても、外見的、内面的特徴には100%違いがないんだ。だから、『犬派』の方が身体能力に秀でているとか、『犬派』は病気にかかりやすいとか、『猫派』は実況者に向いているとか、そういったことはまったくないみたいなんだ。まあ現時点で僕が調べた限りだと、当人の起源が、『犬派』の人類なのか『猫派』の人類なのか、ただそれだけで、基本的にはそれ以外はすべてが一致したまったく同じ人類になるんだ。『犬派猫派』というのは、もしかすると、いわば一種のフレーバーみたいなものなのかもしれないね。」
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