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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第5章 子犬の魔法少女と子猫の魔法少女と
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73 (5-6) 昼休み屋上の二人 -2

「そっか。薄珊瑚さんが桃色の魔法少女なんか。あの娘もバスケすごいから、魔法少女なっても大活躍しそうやな。それで、薄珊瑚さんが五色の魔法少女の桃色の魔法少女っちゅう事なん?」

「うん……。桃色の魔法少女は他にはいないし、多分、そうだと思う。」

「そっか。それで五色の魔法少女は全員出揃ったっちゅう事か。そうや! 思い出した。そういえば、一昨日から始まったテレビの『五色の魔法少女マジカルキティ』。あのアニメ、うちらの地元の宝箱市が舞台になってるし、宇宙子猫を引き取ったのってA組の緋色さんの事やし、それにあの宇宙子猫って、うちらの学校で飼ってるミカちゃんの事やんな? 最後に黄色の魔法少女になったホタルって娘も、A組の菜の花さんやんな?」

「うん……。私もなぜかわからないけど、五色の魔法少女のアニメは現実の世界で起こった出来事が描かれている。」

「やっぱり……そうやったんや。でも、あのアニメ、うちらの地元が舞台になってんのに、うちの周りの人等、うち以外皆誰もその事に気づいてへんかったみたいやったで。なんでなんやろ? なんかうちだけ頭おかしなったんかと、思わず倒れそうになってもうたで。」

「私もよくわからない。……でも、多分五色の魔法少女に関係する人が、あのアニメを造ってるんだと思う。それで、よくわからないけど、その人が、五色の魔法少女の娘達も、それ以外の人達も、そのアニメを観ても、なぜか自分が魔法少女本人だったり、自分の地元が舞台だって事がわからないように、何か細工みたいな事をしてるんだと思う。多分、その人は五色の魔法少女が現実の出来事なんだという事を秘密にしておきたいんだと思う。」

「へー。そんな悪趣味な人間がいるんかいな。一体何のためなんやろ?」

「もしかすると、何か目的があって、あのアニメを造ってるのかもしれない。でも、その目的が何なのかわからない……。ごめんなさい。」

「いやいや、別に露草さんが謝る必要ないし。でも、それやったら、なんで露草さんが魔法少女の事、色々事わかるようになったん?」

「うん……。多分、これだと思う。」


 そう言うと、詩叙はカバンの中から黄色のイヤホンケースを取り出して、ゆかりに見せた。


「えっ? これってなんなん? ――あっ! もしかして、あれか。この前やってた『五色の音色の魔法少女マジカルクイン』の?」


「うん……。」

 詩叙はうなずくと、『子猫の魔法少女マジカルキティ』の前作『音色の魔法少女マジカルクイン』の公式グッズであった黄色のイヤホンケースの中を開けると、中に入っていたプレシャスストーンをゆかりに渡した。


「えっ? これって青色のプレシャスストーンやん。なんで黄色のイヤホンケースに青色のプレシャスストーンが入ってんの? ……って、うわっ! 重っ。なんなん、このプレシャスストーン。すごい重たいし、それになんか光っとるやん!」


 ゆかりは、詩叙からプレシャスストーンを受け取ると、まずは、黄色のケースの中に、なぜ青色のプレシャスストーンが入っているのか不思議に感じたが、とりあえず受け取ってみると、その青色のプレシャスストーンの、見た目以上に手の平に感じるずっしりとしたその重厚さと、神秘的なまでのその輝きに目を奪われた。


「うん。その青色のプレシャスストーン、いつかわからないけど、私の手元にあって。試しにイヤホンケースに入れてみたら、突然輝きだして。それから私、なぜか色々な事がわかるようになって。」

「えっ、そうなんか。それやったら、もしかしてそのプレシャスストーンは……」

「うん。本物のプレシャスストーンだと思う。」

「うーん。ようわからんけど、露草さんがどこかで青色のプレシャスストーンを手に入れて、それでそのプレシャスストーンを偶然光らせてしまったんで、魔法少女の事が色々わかるようになったっていう事なんか?」

「多分、そうだと思う。江戸紫さんも紫色の魔法少女だから、紫色のプレシャスストーンを持ってると思う。」

「うちが? うーん……。そんなん思い当たらんな。ひょっとして、家の中探してみたら、そんな高価な宝石、どっかに転がっとんのかな?」

(ゆかりは、そんな宝石がホンマにあるんやったら一体いくらくらいで売れるんか。実はそちらの方が気になった。)


「それと……。これも。」

 詩叙はカバンの中をゴソゴソと探ると、もう一つの青いプレシャスストーンをゆかりに渡した。


「えっ? なんや。これも青色のプレシャスストーンなんか。…………。うわっ!? なんや! もしかして、このプレシャスストーンも本物のプレシャスストーンなんか?」


 そのもう一つの青いプレシャスストーンは、最初にゆかりが見て触れたものと同様に、重厚で神秘的に光り輝いていた。


「多分……だけど、私、本物のプレシャスストーンを二つ持ってるから。それで、魔法少女の事について色々わかるんだと思う。」

「そ、そうなんか? でも、なんで露草さんが本物の青色のプレシャスストーンを二つも持ってるんや?」

「うん。もう一つは姉の……。」

「なんや。露草さんってお姉ちゃんいるんかいな。」

「あっ……。」


 詩叙は、その時いつも崩す事のない無表情が一瞬だけ、どうしようない悲しみを帯びた表情に変化した。しかし、すぐにいつもの無表情に戻ると、絞り出すように答えた。


「いえ……。私に姉はいない。」


「なんや。おらんのかいな。まあええわ。ところで、露草さんが五色の魔法少女なんやったら、いずれは青色の魔法少女になって緋色さん達と一緒に戦うって事か。」


 ゆかりは、感がいい娘なので、詩叙が姉という言葉を発した時、彼女の表情が一瞬にして曇ってしまった事にすぐに気がついたが、これ以上この話題には触れない方がいいと思い、とっさに話題を変える事にした。


「いや……。私は魔法少女にならない。」

「えっ? なんで?」

「怖いから……。」

「怖い?」


 ゆかりは、詩叙の回答が意外だった。彼女はいつも冷静で何事にも落ち着いて対処のできるタイプの人間だ。詩叙ほどの強靭な精神力と運動能力があれば、青色の魔法少女になったとしても、超強力で、おいそれとロボット達に負ける事など決してないだろう。それなのに、そんな詩叙がロボットの事が怖いと思ってるなんて。それに、普段は素っ気なく冷たいように見えて、実はやさしくて誰よりも他人想いな娘であり、ロボット達に奪われた子猫の故郷を救うためだったら、何も言わずとも、見返りなど求めず、緋色さんや菜の花さん達と一緒に魔法少女となって戦ってくれる、そんな女の子のはずだ。恐らくやけど、彼女自身が抱える何か特別な理由があるのだろう。


「まあ、魔法少女になるかならんか、そんなん個人の自由やし。他人がとやかく言う事やないしな。それに、そもそもうちなんて魔法少女になれへんようやけど、もし魔法少女になれたとしても、家業の方が忙しくて、魔法少女の仕事手伝おうてくれ言われても、そっちの方に労力が割けるんかどうか正直微妙やし。多分、もう余力残ってないから無理やろーな。」


「うん……。それに……」

「それに?」

「ひばりちゃんとつかさちゃんを守らないといけない。魔法少女になってしまったら、二人を守る事ができない。」

「ひばりちゃんなー。――よっしゃ! もし支子さん達に直接伝えんのが恥ずかしいんやったら、うちが代わりに言ったろか?」

「ありがとう……。でも、大丈夫。こんな話しても二人共多分すぐには信じてくれないだろうし、彼女達を余計に混乱させるわけにはいかない。もし、本当に言わなければいけないタイミングになったら、その時は私が直接言う。――それに、ひばりちゃんに本当の事を言ってしまうと、逆にすごく危険な気がするの。」

「確かにな。薄珊瑚さんはともかく、あの支子さんに本当の事話してしまったら、逆に何しでかすかわからんもんな。実際、昨日もわけわからん暴走してたし。なんでかわからんけど、今日も家から子犬連れてきてたしな。建物の中でじっとしとけ言うても、あの娘の事やったら間違いなく魔法少女達を見に外に出ていってしまうやろな。まあ何にせよ、取扱注意なんは間違いないわ。」

「うん……。彼女、純粋だから。」

(ん? 純粋って?)


「……………………。」


「……………………。」


 詩叙に聞きたかった事も一応話し終えて、これでとりあえず話す事がなくなったゆかりは、それから詩叙との間の無言の時間がしばらく流れた。ゆかりは、詩叙の姉の事とであるとか、支子さんや薄珊瑚さんの事を親し気にひばりちゃんとかつかさちゃんとか言うてたので、二人とは昔から知り合いなんかとか、どーせ向こうの方はうちの事なんて興味ないやろうから、うちの事について向こうから聞いてくる事なんてないと思うし。それやったら彼女のプライベートな部分について聞いてみようかなとも思ったが、なんか彼女とは、まだそこまで親しい間柄でもないし、それに彼女の方があまり言いたくなさそうなので、これ以上話をする事はやめる事した。


 露草さんに聞きたい事だけ聞いたら、すぐに帰ろう思ってたけど、なんかすっかり引き上げるタイミングを失ってもうたな。でも、まあ教室に戻ったって特にやる事があるわけやないし、露草さんと二人きり、何もしゃべらないこの空気感も、なぜかそんなに居心地が悪くない。逆に気い使って、どうでもいい事を色々聞いて、無理に彼女に答えさせる方が、なんか彼女に悪いような気がする。


 それから、そのまま無言のままの時が過ぎ、やがて昼休み終了の時間が迫った。


「そろそろ戻ろっか。」

「うん……。」


 ゆかりがそう言うと、詩叙は素直にうなずいた。そして、二人は午後の授業へと、2年D組の教室へと戻るのであった。


 予想外に本編長文となってしまいました。常盤さんとの話は次回となります。次回は、新作と同時発表予定してますので、11月の予定になります。

11月に本作のリニューアル作品を新たに投稿予定です。

本編の続きは、その時に一緒に発表する予定です。

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