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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第5章 子犬の魔法少女と子猫の魔法少女と
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71 (5-4) ひばりと三人の魔法少女候補

「どうする?」

「どーせ大した話じゃないだろうし。まあ、いいんじゃねーの?」

「そうだね。それに、せっかく常盤さんがどうぞって言ってくれてるのに、断るのも悪いしね。」

「それに……常盤さんだし。別に問題ないよね。」

「うー、お腹空いたー。もうここでいいよ。」

「だな。なんかひばりも限界みたいだし。ここにしよーぜ。」


 そういうわけで、結局科学教室で昼食を食べる事にしたひばり達四人は、教室の中に入ると、教室の後ろ側の一角を陣取っている常盤さんの邪魔にならないよう、そーっと教室の前側へと移動した。


 ひばりは、そそくさと席に座ってバッグを机の上に置くと、まずはメグを、続いて弁当をカバンから取り出し、それから間髪入れず、「いただぐぇまーす。」と噛み気味に言うと、いち早く弁当をがっつき始めた。それからプル達他の三人は、ゆっくりと席につくと、弁当やパンなんかを机の上に広げ、ひばりに続いて各自が昼食をとり始めた。


 一人食事に夢中になって、傍らに置いたメグの事などまるで気にしていないひばりと違って、プル達は、食事よりもひばりが連れてきた子犬の方に関心があるようで、食事もそこそこに、不愛想にブスーッとした表情で教室のどこかを所在なげに見つめながら座っているメグの事をじーっと観察していた。


「ふーん。それにしても素敵なポメだね。」

「本当。毛がもっこもこで、体もころっころとしてて、それに顔もなぜか信じられないくらいに整ってるし、私、こんなかわいらしい子犬見たの生まれて初めてだよ。」

「そうだな。多分すげー血統持ちの犬なんだろーな。こんな小っちぇー犬なのに、変に俺達に媚たりしねーし、誇り高く前を向いたままじっとしてるぜ。」


 ポメラニアン単体としては、業界で優にチャンピオンを獲れる程の美しさとかわいらしさが両立した完璧な外観をしているメグなのだが、実はその中身が外見のかわいらしさとは真逆の要素だけで占められているため、見る人によって、メグに対する印象はマチマチになってしまうのだが、プル達はメグの事を肯定的に捉えているみたいだった。


「ふーん。単に不愛想なだけだよ。」

「えー? そんな事ないよ。ところでひばり。この子犬どうやって飼ったの?」

「近所の家のポメラニアンに赤ちゃんが生まれたから譲ってもらったとか?」

「俺達に内緒で、春休みの間にペットショップで買ったんじゃねーのか?」

「いや、昨日拾ったんだよ。ていうか、メグの方が勝手に家に入ってきたんだけどね。」

「はー? 何言ってんだ、お前は。」

「ていうかさー。ひばり。なんでメグを学校に連れてきたの?」

「いやー。ママがさー、今朝忘れ物だって言って渡すからさ。てっきり私も忘れてたって思って連れてきちゃったんだよ。」

「はー? 何やってんだ。お前も、お前の母親も。」

「それよりさ。ひばり、話ってなんなの?」

「うん。実はさ……」

 ひばりが、本題に入ろうとしたその時、プルが口を挟んだ。


「あの……私、実はわかってるんだよね。」

「え? プル。もしかしてあんた……」

(魔法少女なの?)ひばりの口から、思わずその言葉が出そうになった。

「実は俺もなんだ。」

(え? ミアも?)

「うん。私も。」

(えっ? ルーシーまで?)


 なんてこった。やっぱり私の親友のプル、ミア、ルーシーの三人が本当に魔法少女だったなんて。ひばりは、驚愕の表情で三人を見つめた。


「ひばりさー、『子猫の魔法少女』が始まったから猫が飼いたくなったんでしょ? それで、私達の内の誰かにメグを引き取ってほしいって事でしょ?」

「えっ?」

「お前さ、『子猫の魔法少女』が始まるのなんてずっと前からわかってたくせに。今さら猫が飼いたいなんて、だいたい無責任すぎるぜ。」

「そうだよ、ひばり。ペットを飼うんだったら、飼い主が責任とってちゃんと最後まで飼わなきゃ。」

「ち、違うよ! そんな話じゃないよ!」

「えっ? 違うの?」

「えっ? そうなのか? 俺、すっかりその話だと思ってたのに。」

「じゃあ、メグの話ってなんの話なの?」


 ひどい。三人とも、自分の事そんな風に思ってたなんて。そういえば、昨日つかさにも同じような事を言われたような気がする。


「あっ!」

 その時、ひばりは不意に昨日のつかさとの会話を思い出した。


「どうしたの、ひばり? 急に大声なんか出したりして。」

「あの……。みんな、ごめんね。」

「なんだよ。急に謝ったりして。」

「なんかみんな、魔法少女の衣装着るのも、魔法少女ごっこするのも、もうイヤなんだってね。でも、無理して私に付き合ってくれてるんだよね。ごめんね。私、今までそんなの全然気づかなくって……。」

「えっ? ひばり、その話誰から聞いたの?」

「つかさから。――なんか同級生や近所の人に魔法少女の恰好をしてるとこを見られるのがすごく恥ずかしいって。それで私と別れた後、三人で集まって魔法少女ごっこをやめたいって相談してるって。」


 プル達三人は、ひばりが急に落ち込んで、自分達がつかさにだけ話していた隠し事を突然打ち明けられたので、あたふたと慌てだした。


「えっ? ひばり、何言ってんだよ。そんな事あるわけないじゃん。」

「そ、そうだぜ、ひばり。俺達がそんな事言う訳ないじゃん。つかさの勘違いなんじゃねーのか?」

「え、えーと……」

「えっ? 本当?」

「ほ、本当だよ。そんなの、私達がつかさに相談するわけないじゃん。」

「そ、そうだぜ。なんつーか、そこんとこよろしくだぜ。」

「え、えーと……」

「じゃあ……これからもずっと同じでいいの?」

「当然だよ。でも、気持ち少し減らしてほしいかな、なんて。」

「そ、そうだぜ。なんつーか、そこんとこよろしくだぜ。」

「え、えーと……」

「よし! それじゃあ今週の日曜、早速いつもの場所で五色の魔法少女集結だね。」

「え、えーっと……あっ! ひばり。それより、引き取ってほしいって話じゃないんだったら、メグの話って一体なんなの?」

「そうだぜ。おい、なんなんだよ。一体話って?」

「…………。」

「あっ、そうだ!」


 とっさにプルに話題を変えられ、ひばりは、そこに居た事を初めて思い出したかのごとく、ひばりの横でブスッとしているメグの方を見た。


「よし。わかった、メグ? じゃあみんなに説明してくれる? ほら。」


 ひばりがそう言うと、メグは、はーっと深くため息を吐いて首を横に振ると、ひばりの事をじとーっと見つめた。


「あっ!」

「あのー。ひばり、一体どうしたの?」

「おい。お前さ。犬の用事をまさか犬自身にしゃべらせるつもりなのか?」

「そんな。いくらひばりだって、そんな事ないよね。ね、ひばり。」

「えっ? ははは。もちろんだよ。そんな事あるわけないじゃん。」


 ひばりは、今朝メグが、世の中のうんちゃらかんちゃらとかで、家以外では絶対にしゃべらないと言っていた事を思い出した。いくら鈍感なひばりだからといっても、今回はメグの冷たい視線の意味を理解する事ができた。そしてメグの冷たい視線には、それ以外にも、先ほど四人が魔法少女ごっこをやめたいという話題を話していた時に、三人の中のルーシーという女の子が、すごく迷った表情で、ひばりに魔法少女ごっこをやめたいと言おうかどうか、終始悩んでいるようだったのを、ひばりに教えてやりたいという欲求を必死に堪えて黙っていたがため、よっぽどだった。


「あのさ。聞いて驚かないでね。実はさ。私、魔法少女だったんだよ。」

「うん、そうだよね。ひばりは魔法少女だよね。」

「おう。それでどうしたんだよ?」

「ひばりは魔法少女でいいとして、それとメグとどう関係があるの?」

「うっ。」


 いくら鈍感なひばりだからといって、三人が魔法少女ごっこをやめたいという話をした後に、自分が本物の魔法少女だとカミングアウトした所で、それが趣味の悪い冗談にしか受け取られない事は理解できた。


「いや。信じられないかも知れないけど、私が魔法少女だっていうのは本当の話なの。」

「うん、わかったよ。信じるから。それで話ってなんなの?」

「もしかして、メグが五色の魔法少女の子猫のミカみたいにひばりに魔法を授けてくれたとか?」

「それで、今週の日曜にメグも入れて魔法少女が集合みたいなやつか。」

「あっ。いや。うん、その通りなんだけど……。」


 三人の言ってる事はほぼ合ってるんだけど……信じてねー! ひばりはそう思いながら、どうしたらいいのか真剣に悩んだ。だが、今回はひばりにしては珍しく、すぐに解決策を思いついた。


「よし。わかったよ。じゃあ変身するよ。今から私が魔法少女に変身するから見ててよね。」

 そう言って、ひばりは、カバンの中からイヤホンケースを取り出すと、中から黄色のPS(フィロソファーズストーン)を取り出して右手に握りしめた。


「ウ~~。」

 ひばりが立ち上がって魔法少女に変身しようとすると、メグがひばりに向かって狂暴に唸って、変身を制止させた。


(お前はアホか。今朝必要以上に魔法少女に変身するなと言ったばかりなのに、いきなり変身しようとしよって。しかも、恐らく五色の魔法少女がいるであろう学内で。)


「あっ、そっか。」

 ひばりも、メグに注意されて、ようやくその事を思い出し、変身するのを思いとどまった。


 プル達三人は、ひばりの事だから、まあ大体こんな中身のない話なんだろうなと予想していたので、いつにも増して絶好調のひばりの奇行にも特に驚いた様子もなかった。そんな時、ルーシーがひばりが右手に桃色ではなく黄色のPSを握りしめている事に気がついた。


「あれ? ひばりの持ってるPS(プレシャスストーン)って、もしかして黄色のPSなの?」

「…………。(フィロソファーズストーン、な。)」

 よっぽどそう言いたかったのをメグは必死に堪えた。

「えっ?」

「本当だ。ひばり。なんでひばりが黄色のPSを持ってるの?」

「お前、桃色以外の魔法少女は絶対やりたがらないのに。」

「えっ? あっ、うん。」


 そうだった。自分が桃色の魔法少女じゃなくて黄色の魔法少女だったって事、つかさの次に、プル達には絶対言いたくなかったんだった。


「実は……」

「おや? これは、なんともかわいらしい子犬ではないか。」


 ひばりは、後ろから不意に声がしたので振り返ると、実はひばり達の会話を後ろから終始興味深く聞いていた常盤さんが、気づけばひばりの真後ろまで来て、メグと、ひばりの黄色のPSを満足そうに交互に見つめていた。

ご読了ありがとうございます。

本作について、再度内容編集して新作として再度投稿する予定です。特に1章の出来がひどかったので、今やり直ししてる所です。

※変更理由の詳細は活動報告に記載しております。

※初期版に書いてあるあらすじが新作の方の流れになる予定です。


ですので、本作は初期版という形で残します。初期版の続きは、新作と同時進行で投稿予定してます。次話のキノコたけのこ論争の内容自体は完成してますが、原稿は書いてませんので、今しばしお待ちください。

続きを楽しみにお待ちしていた方々には申し訳ありません。

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