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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第4章 子犬の魔法少女
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 二人は、かなり時間も押してきたので、早速桃色の魔法少女への変身チャレンジに入る事にした。ひばりは、つかさから桃色のフィロソファーズストーン(PS)のキーホルダーを受け取ると、フィロソファーズストーン(PS)に電気を与える装置、イヤホンケースの真ん中に置いてみた。


「わー。」

 イヤホンケースからの電気を浴びて、つかさのフィロソファーズストーン(PS)がほのかに桃色に輝きだすと、不思議な事にフィロソファーズストーン(PS)の根本からチェーンが自然に外れた。そして元々チェーンが刺さっていた箇所を見てみると、まるでそんな事実はなかったかのように、キズ一つなく完全な真円を描いていた。これで、つかさが桃色の魔法少女になる準備は整ったようだ。


「よし! じゃあ願ってみるからね。」

 つかさは、淡く光り輝くフィロソファーズストーン(PS)を右手に握りしめると、ひばり(メグ)に言われた通り、桃色の魔法少女になりたい! と強く願ってみた。


「うん……。」

 ひばりは、そんなつかさの様子を複雑な感情で眺めていた。自分も魔法少女になれたのはうれしかったけど、大好きな桃色の魔法少女をつかさに取られるなんて。でも……、自分以外で桃色の魔法少女になるんだったら、やっぱりつかさが一番よかったのかな……。


「よし。全ての準備は完璧に揃ったようだ。では、早速始めるとしよう。――私はお前達万物を創造せし者。そしてお前達六色の魔法少女達を創造せし者。よって、たった今お前に魔法を授けてやろう。」

 自信満々にそう言うと、メグはつかさが桃色の宝石を握っている右手を真剣な表情で見つめだした。


 ……………………

 それから、しばらくの時間が経過した。


「あのー……。」

「…………。」

「なんか……全然変わったような感じがしないんだけど……。私、もう魔法少女になったのかな?」

「…………。あれ? 一体どういう事か? なぜだ? なぜ魔法少女に変身しない。」

「いやいや。それはこっちのセリフだよ。なんだよ。かっこつけてさ。何が授けてやろうだよ。つかさ、全然魔法少女に変身できてないじゃん。」

「いや……。こんなはずじゃ……。」

「本当に……。どういう事なんだよ。一体。」

「なぜだ? なぜ変身しない。」

「それはこっちが聞きたいよ。」

「あれ?……マニュアル通りにやったはずなのに……。」

「は―――。結局、つかさは桃色の魔法少女じゃなかったって事じゃないの?」

「いや……そんなはずは……。――所でひばりよ……。参考までに、お前はどうやって魔法少女になったのだ?」

「は――――。何言ってんだろ。あんたがマニュアルを作ったんじゃないの? 本当に……。私の場合はプレシャスストーンをイヤホンケースに入れて、それでロクボーセーを指で書いて……。あっ!! ロクボーセーだよ、ロクボーセー!」

「ロクボーセー?…………。あっ! 六芒星か! なるほど。確かに、考えてみると六芒星の呪文の効果が切れている事を忘れていた。」

「本当に呆れるよ。そんな肝心な事を忘れるなんて。」

「まあ、確かに忘れてしまっていたのは事実なのだが、実はそんなに責められる事ではないのだぞ。本来ならば、魔法少女に変身するためにわざわざ六芒星を描く必要などないのだ。」

「ふーん。じゃあ、なんで今回はロクボーセーを描く必要があるの?」

「うむ。通常ならば、フィロソファーズストーンの中に六芒星の呪文が既に込められているはずなので、改めて魔法少女が六芒星を描く必要などない。だが、お前の場合もそうだったように、フィロソファーズストーンに込められた電気が完全に切れてしまっていたため、六芒星の呪文の効果も切れてしまっていたのだ。そのため、今回は改めてフィロソファーズストーンに六芒星の呪文を込める必要があるのだ。」

「たく……。本当に何やってんだよ。全く。しっかりしてよね。」

「う、うむ……。」

「あのー……。もういいかな?」


 それから、つかさは六芒星の一筆書きに挑戦する事になった。だが、肝心のひばりは、昨日自分で六芒星の一筆書きに成功したばかりだというのに、どうやったらできるのか完全に忘れていた。そしてメグの方も、自分では六芒星の一筆書きをした事がなかったので、まるで役に立たなかった。実は一般の人間の場合だと、ネットで検索しただけで一発で正解に導く事ができるのだが、魔法少女になる者がそういうチート行為を取る事は運命レベルでできないようになっていた。それから10分程、つかさとひばりの二人は頑張って色々試してみたものの、どうやら正解には導かれなかったようだった。つかさは、ひばりとメグのためにも、何とか六芒星の一筆書きに成功してあげようと必死にがんばってみたが、残念ながら、それはどうしても叶わなかった。つかさは、こういう系統のクイズや謎解き問題などが苦手なのだ。ひばりは、もう既に諦めていて早く家に帰りたかった。


「ごめん。つかさ、もういいよ。そんな急いでないし。別に明日でもいいよ。」

「でも……。」

「いやいや。つかさ部活とか忙しいだろうしさ。もしあれだったら、ヒマな時ができたら、その時にでも適当にチャレンジしてもらっていいから。」

「いやいやいや。それでは困るのだが……。」

「でも……。うーん……。どうしたらいいのか。…………。あれ?」

「どうしたの?」

「うん。なぜかわからないけど、私魔法が使えるようになったみたい。」

「はー? まさか? そんな事ある訳ないじゃん。」

「うん。そうなんだけど……。確か、ワールドスピーカーだったよね。とりあえずメグにかけてみるから。よし! それ!」


 つかさが右手の人差し指を突き出して、その先に少し力を込めると、つかさの指先がほのかに光り輝いた。つかさは、その光をメグ目がけて軽く投げると、メグの体全体をやさしい光が包み込んだ。


「なんと! 本当に魔法が使えるようになるとは。」

「わっ! メグってかわいらしいけど、そんな厳粛な声をしてたんだ。」

「えっ!? 本当に魔法が使えるようになったの?」

「うん。なんだかよくわからないけど。……もしかしたら六芒星の一筆書きに成功してたのかな?」

「ふむ。つかさよ。残念ながら、お前はまだ魔法少女には完全に覚醒していない。だが……しかしこれは驚いた。つかさよ。ちなみにお前の誕生日は何日だ?」

「え? 誕生日? 私の? 私の誕生日だったら4月3日だけど。」

「そうなんだよ。私が4月2日でほぼ1年遅れだから、つかさ、いつも私にお姉ちゃんぶるんだよ。」

「え? 私が? でも、仕方ないじゃん。いつもひばりミスってばかりだし、なんか危なっかしくて放っとけないのよ。」

「やはりそうか……。まさか、このタイミングで真なる天才の日に生まれた、そして天賦の才能にも恵まれた、完全なる天才魔法少女を引き当ててしまうとは。これぞまさに僥倖といわんや。」

「え? つかさが天才魔法少女なの? じゃあ私は?」

「………。まあ、それは一旦置いておく事にして……。つかさよ。ご苦労であった。まあ今日の所はこれで十分だ。ひばりが言う通り、魔法少女に変身するのは明日以降でも特に構わん。」

「そう?――じゃあ、もしダメじゃなかったら、しばらくの間は魔法少女にならなくてもいい?」

「え? なんで? 魔法少女になったらいいじゃん。」

「うん。自分が魔法少女になったらすごい事になるんだろうって、自分でもよくわかるんだけど……。でも……、それってすごくズルい気がするの。そんな他人から得た力を使ってバスケの試合とかに勝ったとしてもうれしくもないし。それに、本当に困った時に、心が折れてその力に頼ってしまう事になるかもしれないし……。だから、本当に必要になった時、その時が来るまでは、魔法少女になるのはとっておきたいの。」

「……うむ。まあ、とりあえずはそれでよかろう。」

「え? いいの?」

「うむ。魔法少女の活動に参加するのは基本的に自由参加だと、先程お前に言っただろう。」

「そう? まあ、それでつかさもメグもいいっていうんならそれでいいけどさ。」

「ごめんね。メグ。もし本当に私の力が必要になったらいつでも言ってね。」

「うむ。ありがたい。その時が来たら、私も喜んで声を掛けさせてもらおう。」

「そういえば、私達六色の魔法少女の目的ってなんなの? もしかして、五色の魔法少女のお手伝いをする事とか?」

「うむ。まあ、それについては、話せばまた長くなってしまうので、時間がある時にでもゆっくりと説明する事にしよう。」


 本来魔法少女というのは、ひばりのように軽はずみな気持ちでなっていいものでは決してない。これから魔法少女として活動する事になるほぼ一年という期間の中で、魔法少女達は常に自らの生命が危険にさらされる事になるであろうし、今後、自らの運命が大きく左右される事になる重大な局面や岐路に立たされる事が何度も訪れるはずである。ただし、その重大な局面を最後まで乗り切った後に、それに見合うだけの報酬も、また用意されているのだが……。


 実はこの時、メグの頭の中で、もしもひばりの身に危険が迫った時や、実際に命を失ってしまうような事になってしまった場合、別に頼まなくとも、その時は、つかさは自ら進んで魔法少女になるであろうと、そんな事を考えていたとは二人には知る由もなかった。


「つかさ。ありがとう。助かったよ。長い時間お邪魔したね。それじゃ、私達帰るよ。」

「うん。別にいいよ。私も久し振りにひばりと一杯おしゃべりできてうれしかったよ。また私の家に遊びにきてね。」

「う、うん……。また、来るよ。」


 ひばりは照れながら、壁に立てかけていた最強の武器ケラウノスに手を掛けた。そして両手で持ち上げようとしたが、魔法少女の変身が解かれた今のひばりの力では、ケラウノスはうんともすんともいわなかった。


「いいよ。家も近いし、私が家の前まで持ってってあげるよ。」

 つかさはケラウノスを両手で持ち上げると、そのままひょいと右肩に担いだ。


「なんか……ごめん。」

(なんかつかさが一緒だと、なぜかいつも締まんないんだよな。)

 そう思いながら、帰路につくひばりであった。

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