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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第4章 子犬の魔法少女
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 ひばりは、自分が魔法少女だと子犬に言われたことにショックを受け、しばし呆然としていたが、さすがに一日の間に、こうも立て続けにショッキングな出来事が起こってしまうと、その度に一々ショックを受けていたり、頭の中でとやかく考えたりすることが段々と面倒くさくなってきた。そしてその時、この子犬を庭先で初めて見た時の自分の直観を思い出した。


(待て! よく考えろ。そんな都合のいい話があっていいのか? 冷静になれ私! もしかすると私、この子犬に騙されてるのかも?)


(あっ! よく考えたら、私魔法少女になったっていうのに何も変わってない。なんか肉体がパワーアップしたような感じもしないし、魔法なんか全然使えない。もしかすると…、これは魔法少女になるなる詐欺という新手の詐欺の手口なのかもしれない。最近子猫の魔法少女が始まったばかりだから、似たようにかわいい子犬の姿に変身して油断させといて、それで私を騙そうとする手口なのかもしれない。そしてこの子犬は実はどこかのペットショップの手先で、私にドッグフードやらドッググッズなんかを死ぬほど買わそうとしてるんだ。やはりこの子犬は悪。私の直観は間違えてなかったんだ。)


 残念ながら、ひばりの頭では、これ位の想像が彼女の限界であった。


(私が超がつくほどの魔法少女好きだから。だからチョロいと思ったんか! くそっ! 魔法少女を愛する純粋な気持ちに付け込んで騙そうだなんて…。)


 そう思うと、ひばりはだんだん腹が立ってきた。ひばりは、その場からすくっと立ち上がると、子犬目がけて指をビシッと突き立てた。そして、


「ちょっと待って。何が魔法少女よ! 私、魔法なんて使えないし何も変わってないじゃん。それに、なんで私が魔法少女だってことあなたが知ってるの? それにあなた一体何者? 何のためにここに来たの?」

 と、怒りの表情になって子犬に対し一気にまくし立てた。


 子犬は、徘徊したりクルクル回ったり動かなくなったり、面白い顔をしたかと思うと今度は怒り出したりと、目の前でせわしなく変化する、そんなひばりの言動に対しても一切動揺した様子も見せず、眉ひとつ動かさずに冷静にひばりのことを見つめると、


「ふむ。一度にそう何件も質問されても困るのだが。――そうだな。では、まずはお前がなぜ魔法少女であるのか。それを証明してみよう。」

 そう言うと、子犬は顔を右手にある机の方に向けた。


「そこにある黄色い宝石を手に取るがよい。その宝石はPS、別名フィロソファーズストーン(Philosopher`s Stone)といって、その所有者がまさしく魔法少女本人であることを証明する特別で唯一の魔法の宝石なのだ。」


 子犬がそう言うと、ひばりは子犬に言われた通り机に向かって歩き出すと、昨日父親の耀司からもらったインチキな魔法の宝石だと思っていたが、なぜか家に帰ってから、今でも自ずから光り輝いている黄色の丸い宝石を不審な顔をしながらも手に取った。確かにこの宝石がどう考えてもただの石じゃないことだけは、ひばりにでも理解することができた。


「でも、これが本当に魔法の宝石だなんて。それに風呂ソファーストーンって何? プレシャスストーンの間違いじゃないの?」


 ひばりは、一々設定が五色の魔法少女と似ているようで微妙に違っていることに少し不満を感じながら、子犬に問いただした。


「ふむ。プレシャスストーンというのは、五色の魔法少女が持つ魔法の宝石のことを言う。しかし、私の六色の魔法少女が持つ魔法の宝石の本来の名称はフイロソファーズストーンと言う。」


「えっ? あなたは五色の魔法少女と知り合いなの?」

 ひばりは、子犬が五色の魔法少女と何か知り合いらしいことが意外で、そのことが少しうらやましく思った。それと同時に、どうせ魔法少女になれるんだったら、六色の魔法少女の方じゃなくて五色の魔法少女の方がよかったなと思った。


 子犬は、そんなひばりの気持ちを見透かしていたかのように、

「お前は五色の魔法少女の方がよかったと思っているかもしれないが、実際には向こうの魔法少女より私の魔法少女の方が優れているのだぞ。向こうは一度に五人までしか魔法少女を生み出すことができないが、こちらは六人もの魔法少女を生み出すことができる。」


 子犬は、少し自慢げにそう話すと、再びひばりの部屋を軽く一周見回した。そして、ふむ。と一言言って軽くうなずくと、


「お前は五色の魔法少女のことについてはよく知っているようだから詳しい説明は不要だろう。今、地球では惑星ガイアから来たロボットと、地球の五色の魔法少女、今回は子猫の魔法少女、マジカルキティが戦っていることは知っているだろう。」


「うん。」

 ひばりにとっては、もちろん知っていて当たり前の事だったが、なぜ急に子犬がアニメの話を持ち出してきたのかわからなかった。


「だが、本来は五色の魔法少女の他に、六色の魔法少女も一緒に戦わなければならないというのが正式なルールなのだ。」


「はー?」

 ひばりは、なぜか五色の魔法少女マジカルキティに子犬の自分も出たいなんて、自分勝手なことを急に言い出したこの子犬のことを怪訝そうな顔で見つめた。


 子犬は、自分のことを訝しい目で見つめるひばりの視線の意味を理解し、うんうんとゆっくりと二度程うなずくと、

「ふむ。お前はアニメの世界の話を言っているのだろう。あのアニメでの出来事は、同時に現実の世界でも起きている事象なのだ。」


「はー??」

 ひばりは、この子犬の言っている意味がさっぱりわからず、増々怪訝な顔をした。


 子犬は、そんなひばりの表情をさも気にする様子も見せず自身の言葉を続けた。


「お前も魔法少女として覚醒したのならば、まさしく本日魔法少女とロボットによる戦闘空間を認識、経験してきたのではないか?」


「??」

 ひばりは、そんな子犬に対して、「何言ってるんだろう?この子犬は? そんなの経験してるはずないじゃん。」と思って、ムーと難しい顔をすると、何も言わず目を細めて首を斜めに傾げた。


 子犬は、そんなひばりの薄いリアクションを見て、あー、これは何言ってるんだろう?この子犬は?そんなの経験してるはずないじゃん。と思っているなと理解し、会話をひばりレベルに合わせることを特に苦にする様子もなく、一定の間を空けると、


「世界が白黒になり、周りの人も物も、何もかもが彩りを失った世界だ。それに、もしかすると、お前も会ったのではないか? 五色の魔法少女達の内の誰かと。」


「??」

 ひばりは、そんな子犬に対して、「何言ってるんだろう?この子犬は? 五色の魔法少女? そんなの会ってるはずないじゃん。」と思って、ムーと難しい顔をすると、何も言わず再び目を細めて首を斜めに傾げた。が、しばらくすると、今日放課後に起きた一連のあの奇妙な出来事。急に世界が白黒になって、そして親友のプルとミアをやってしまった事。それから教室の中で五色の魔法少女マジカルキティのナミ、ホタル、ミクの三人を立て続けに見て。プル達のことを彼女達に助けてもらおうと必死に追いかけて。そして廊下で派手にコケて大怪我しちゃって。それから、シノに両肩にやさしく手を置いてもらった事。それらの出来事が、今脳裏に鮮明に蘇ってきた。


(えっ!? あれが夢じゃなかったってこと!?)

 ひばりは、あの一連の奇妙な出来事が夢などでなく、実は現実の出来事であったという早すぎる伏線回収に、目を大きく開いた驚愕の表情になった。そして、その表情のまま、子犬に対し、


「えっ!? そしたら今日周りが全部白黒になって、プルとミアをやっちゃって、それでマジカルキティのナミ、ホタル、ミク、シノと会ったのも、全部本当の事だったの?」

 と興奮した様子で、子犬に飛びつきかねない程の勢いで、早口で一気にまくし立てた。


 子犬は、そんなひばりの一気に激しくなったリアクションに対しても一切動じることなく、


「ふむ。お前は今日四人の魔法少女と会ったのか。私は三人だけだったのだが。そうか。向こうは既に四人発見されているのか。」

 と、冷静に答えた。


 それに対しひばりの方は、自分が本当に魔法少女だったこと、自分が大好きな五色の魔法少女達も本当に現実世界に存在する魔法少女だったこと、それにプルとミアをやってしまった事なんかも本当だったりと、頭が混乱してきて、もう何が何だか訳がわからなくなってきて、もう完全にキャパシティオーバーになってしまった。こうなってしまうと、もうこれ以上何も入って来なくなって、その場にボーっとするしかなかった。


 そして子犬の方も、今はこれ以上のことを少女に話をしても無駄だろうという事を理解した。そして、


「では、最後に私が何者か教えてやろう。私はお前達万物を創造せし者。そしてお前達六色の魔法少女達を創造せし者。よって、たった今お前に魔法を授けてやろう。」


 そう言うと、子犬は、ひばりが手にしている黄色い宝石を真剣な表情で見つめだした。


 ひばりは、頭がボーっとしながらも、今自分の手元に握られている黄色の宝石、風呂何とかストーンが、先ほどとは比べられないくらい眩く光輝いてくると同時に、自分にははっきりとわからないが、おそらく魔法の力みたいなものが全身から溢れ出しているのを感じた。そして、同じく子犬の左耳についたピンクの小さなリボンに付いている六色の横に並んだ、これも小さな丸い宝石の内の一つが、ひばりの黄色の宝石に呼応して強く光り輝いているように見えた。実際は米粒大のサイズの宝石だったので、ひばりから見ると、そんなに強く光っているようには見えなかったのだが、実際にはひばりの持っている宝石と同じように強く光り輝いているのだろう。


 そして、

(もしかして?多分?やっぱり?自分は魔法少女なのかもしれない。)

 と、ひばりは、頭の中でぼんやりとそう思って目を瞑ってみると、魔法少女になりたい! と、とりあえず強くそう願ってみた。そして、ひばりと子犬の二人の周りが鮮やかに光り輝きだしたその瞬間、


(よし! 変身できる。)

 ひばりは、なぜかそう確信して目を開けると、自分の周りがなぜか黄色く輝いて、目の前にいる子犬から、なぜか六色の魔法子犬、マジカルパピーの魔法の叡智を授かったことがぼんやりと理解できた。ひばりは、その場で何度も変てこなポーズを決めると、次にフィギュアスケート選手のように床の上をクルクルと何回も回った。そして、とうとう魔法少女に変身した。


「タコの公園で約束した友情は永遠だよ。五色の魔法少女ピンクパピー!」

 ひばりは、両足を少し開いて、人差し指を立てながら両手を大きく空中に突き上げると、自然に、なのか前から考えていたものかわからないが、口からセリフと決めポーズが飛び出した。


 それからしばらくの間、そのポーズを維持していたひばりだったが、上げていた両手をゆっくりと降ろすと、魔法少女になった自分の魔法少女姿をじっくりと確認した。


 間違いない。自分は今早着替えたした訳でもないのに魔法少女の姿になっている。しかも、その色は黄色ではなく桃色だった。ひばりは、うれしさのあまり、再度、今度は拳を握りしめながら、両手を空中に突き出した。そして叫んだ。


「やった! 私、とうとう魔法少女になったんだ。それも桃色の魔法少女に!」


 一方子犬の方はというと、そんなひばりの興奮した様子をなんとも微妙な顔をして眺めていた。

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