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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第3章 二回目の異変と謎の子犬
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48 (3-16) エピローグ ~子犬の旅~

 光の塔から突如その姿を現し、南美達との邂逅をあっさりと済ますと、校舎の方へと去っていった謎の子犬は、校舎脇を横切ると、そのまま学校を出て、長い階段をトコトコと降りて道路に出ると、山を下って歩き出した。


 見た目で判断する限りでは、まだ生後間もない小型犬のポメラニアンの子犬である。そのため、子犬の山下りはものすごく遅い歩みとなって、子犬が山を下っている最中に異変は収束し、周囲には彩りが戻り日常の時間が再開した。


 その時、同じように学校から山を下って下校中だった宝箱女子高校の数名の生徒達は、時間が再開した瞬間に、突然目の前に、山を一目散に下りている子犬が出現したことにビックリすると、キョロキョロと周囲を振り返り、この子の飼い主がどこにいるのか捜した。だが、どこを捜しても飼い主らしき人が見当たらなかったので、とりあえず子犬を保護して飼い主が来るのを待とうか、それとも今から学校に引き返して子犬を職員室にでも連れて行こうかなどと相談していたが、その間にも、その子犬はトコトコと歩き続けて先へと行ってしまった。女子高生達は少し慌てて子犬に、「おーい!」とか「わんちゃん!」などと呼び掛けてみたのだが、子犬からはまったく反応がない。女子高生達はその様子を見て、多分あの子犬は人見知りで恥ずかしがり屋なんだろうと思って、その子犬の元へ向かおうと小走りで追いかけた。そしてすぐに子犬に追いつくと、横から子犬にやさしく呼びかけた。


「わんちゃん、どうしたの?」


 女子高生達は、そう言って子犬のことを見ると、その子犬は、まるで自分達の存在などまったく眼中にはないようで、彼女達の声かけにも何の反応を示さず、そのまま前を向いて淡々と歩き続けた。その子犬を間近で見てみると、間違いなく生後間もないポメラニアンの子供で、幼いながらに顔は整って、全身は由緒正しき血統をもったポメラニアンだと証明する綺麗なオレンジ・セーブルの被毛で覆われていて、飼い主の手入れもしっかりと行き届いていることがよくわかる。左耳についた小さなピンクのリボンの飾りを確認する必要もなく、その子犬が野良だなんていうことはあり得ない。そして、小さくて全身が毛皮でコロコロとした子犬が、一生懸命にトコトコと道を歩いている様は、愛らしくて仕方がないはずなのだが、女子高生達はその子犬を見て、可愛らしいという感想よりも、むしろなぜかその子犬からは威厳しか感じなかった。そして最終的に親切な女子高生達は、その子犬を保護することを諦めて、子犬が去っていくその後ろ姿を黙って見つめることしかできなかった。


 その後の道中でも、同じように子犬を見かけた他の宝箱女子校生や近隣の住民にしてもそれは同様だった。中には、先ほどの女子高生達のように子犬に声を掛けた者もいたが、子犬に無視されると、最終的には黙ってその後ろ姿を見つめるだけであった。


 やがて子犬は山を下ると、当たり前のように駅に入った。駅員は、もちろん改札から子犬が駅の構内に入っていくのを目撃していたが、その様があまりに自然で堂々としていたので、子犬の元に駆け寄って止めることができず、その様子をただ呆然と見つめるだけであった。その後、子犬は駅構内に入ると階段を上って、ある電車に乗り込むと、車内の片隅で静かに立ちすくんでいた。偶然その車両に乗り込んでいた複数の乗客達も、車内にいる子犬を見て一様にビックリすると、多分電車に乗った乗客から脱走した子犬なんだろう思って、近くに飼い主がいないかキョロキョロと見回してみたものの、それらしき乗客が見当たらない。とりあえず駅員に知らせようかと思ってその子犬を見ると、大体こういったケースだと、突然飼い主がいなくなって一人心細く震えていてしかるべきなのに、子犬からはそんな気配などは一切感じられず堂々としている。また、その子犬を保護しようとして立ち上がった一部の乗客は、子犬から、余計なことはするな、という大きな圧を確かに受け取って、どうしようどうしようと真剣に悩んでいる間もなく、子犬を乗せた電車は発車した。


 そして、電車が発車して何駅か過ぎると、やがて目的の駅に着いたようで、子犬は電車を降りて、入った時と同じように当たり前な様子で駅の改札をするりと抜けると、目的の場所に向かって再びトコトコと歩き出した。それからしばらくすると、ある一軒の家の前で立ち止まった。その家は、どこにでもあるような普通の二階建ての白い一軒家で、なぜその子犬がこのような場所に来たのだろうか誠に謎だった。

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