表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第3章 二回目の異変と謎の子犬
47/73

47 (3-15) 二回目の異変の収束

「もうお帰りいただけるかしら?」

 三玖は、戦闘に勝ったからといって勝ち誇った仕草なども一切見せず、いつもの落ち着いた様子でクスに語り掛けた。


「あっ、はい。」

 クスは三玖の言うことに素直に従うと、現場ネコロボ班共に直ちに撤収するように命令した。現場ネコロボ班の連中は、光の塔の中に戻るためのギリギリの動力はかろうじて残しており、(おそらくこれも三玖が調整していたのだろう。)なんとかその場から立ち上がると、ガタガタと震えながら、ものすごくスローな動きで光の塔の中に向かって行った。そのタイミングで、南美がうれしそうな表情をして、三玖達三人の元に戻ってきた。どうやら少し練習した成果、魔法の調整がある程度できるようになったみたいである。


 そして、最後の四体目のロボットが光の塔の中に入ろうかとしたその瞬間、


「クッソふざけんな! 俺のプライドが許さねー!」

 動けないと思っていた現場猫ロボット班長が、そう叫びながら突然三玖に向かって突進してきた。


 現場猫ロボットの中でも、班長クラスになると、通常の現場猫ロボットよりも多少耐久性が高いらしい。だからといって、マジカルキティ達にとってやはりそれは単なる誤差程度でしかないのだが…。


 三玖は、急に自分に向かって突撃してきたロボットを前にしても、まったく驚いた素振りも見せず、なかば呆れた様子でその場ではーっとため息を吐くと、


「蛍! 力を貸して!」

 蛍の方を振り向いてそう叫ぶと、ウィップを軽く空中に振り上げた。


「あっ、うん。」

 蛍は三玖の言葉にすぐに反応すると、空中に放たれたウイップに向けてキロライトの魔法を放った。


 すると、鞭全体に蛍のキロライトの魔法を浴びた三玖のウイップは、電撃効果が付与され、三玖は振り上げたウイップをそのまま突進してきた現場猫ロボット班長に向けて放った。現場猫ロボット班長を狙ったウイップは、先ほどと同じく左足、腰、左手、首、右手、腰、右足の順番で各関節部位を全く同じ位置に正確にくるっと一周してしっかりと締め付けた。その直後、三玖はウイップを軽く引っ張ると、各関節に決まったウイップは、グイッと班長の関節を強く締め付け、各関節部にウイップがめり込み、電撃によるバーン!という破壊音と共に、細かいパーツが各所に飛び散ると、各部位からはプスプスという煙が発生し、班長は完全に動作不可能となって、受け身も取れずじまいで、そのまま前のめりで地面にばたんと倒れた。


 現場猫ロボット班長は、地面に倒れて完全に身動きができなくなって、頭だけを横に向けながら、

「チクショー!」

 と、くやしそうにその後も虚しく三玖達に対して負け惜しみを言い続けた。


「すごい!」

 三玖の鮮やかな魔法捌きにすっかり感心した南美は、


「三玖! 私も手助けするよ。」

 と、うれしそうに三玖に話し掛けた。


「あっ、別にもういいから…。」

 三玖はそう言って、南美のサポートを遠慮しようとしたが、


「トロビ!」

 もうすでに、南美は三玖のウィップに向かって魔法を放っていた。


 すると、南美のトロビを受けた三玖のウィップは、手元のグリップだけを残して全て燃えて焼失してしまった。


「ごめん…。」

 南美はしょんぼりとして三玖に謝った。南美は今回の戦闘で最初から最後まで何の役にも立つことができなくて、他の二人に対し申し訳ない気持ちだった。


「別にいいわ。もう戦闘は終わったみたいだし。」


 三玖が言うように、今回の戦闘はすでに終わっていたようだ。現場に最後に残ったクスは、現場猫ロボット達のような暴力はもっていないようだし、マジカルキティ達にとっても特に脅威になる点は感じられない。それに最初から自分達と戦闘行為を行おうという意思もないようだった。


 地面に倒れて完全に自力で動けなくなった現場猫ロボット班長は、さすがにクス一人では運べないようなので、南美と蛍の二人で光の塔の中まで持っていってあげた。その最中、危ないから絶対に光の塔には触れちゃダメだよ、とミカから何度も厳しく注意された。後でミカから聞いた話だと、現在の光の塔の通路は、ガイア、地球の双方から出入りする質量が満杯の状態で、そこに魔法子猫のような強力な力の集合体が入ってしまうと、完全にオーバーフロー状態になってしまい、光の塔のエネルギーが反作用して、最悪の場合、ガイアと地球のどちらか、もしくは双方に大きな損害を与える可能性があり、また入ってしまったた本人も、ガイアではなく、どこかの宇宙の狭間に飛ばされるか、時空の切れ目でバラバラになってしまう恐れがあるということだった。南美達はミカからその話を聞いて思わずぞっとした。しかしながら、南美と蛍の二人が慎重に現場猫ロボット班長を光の塔まで運んでいる間も、班長がしきりに二人に文句を言い続けていたので、怒った三玖が班長を後ろから蹴り上げて、最終的に班長を光の中に放り込んだ。


 そして最後まで残ったクスは、申し訳なさそうな表情で南美達の方を向くと、


「あ、あの…。えー、この度はこのような結果になってしまって、あの誠に…。」

 と、その先を言おうとした瞬間


「あっ、光の塔が閉まっちゃうわ。早く戻らなきゃ。」

 三玖が冷静な声で光の塔を指さすと、クスは光の塔の方を振り向いた。


「あっ!」


 三玖が言うように、光の塔は急速に輝きを失って、すぐにでも消えようとしていた。


 クスは、南美達四人に対し軽く一礼すると、急いで光の塔の中に入った。そしてクスが光の中に入ったとほぼ同時に、光の塔は完全に消え去り、それと同時に、南美のチュウビと対照的な暖かな赤色の夕暮れ時と、いつもの平穏な日常が戻ってきた。


 マジカルキティから制服姿に戻った南美達三人とミカは、グラウンドにいる他の部活生達の迷惑になるといけないので、すぐに校舎の方に向かってゆっくりと歩き出した。


「それにしても、あのおじさん結局何しに来たんだろうね?」

 校舎への帰り際、南美がいつもの不思議そうな表情でみんなに問いかけた。


「自分のこと猫さんロボット化実現室の室長だとか言ってたけど。でも、悪いロボットさんには見えなかったよね。」

 蛍は異変が終わったことにすっかりホッとした表情になって、あのおじさんについての自分の率直な感想を述べた。


「そうね。あのおじさん何か私達と話たかったみたいだったから、また次に来た時にゆっくりと話をすることにでもしましょう。」

 三玖が異変の前後から変わらずの余裕のある表情で、続けて南美達にそう答えた。


「ふぁあ~。うん、そうだね。もしかしたら何かいい解決策が見つかるかもしれないね。」

 ミカもロボット達の来襲が終わってホッとすると同時に急に眠気が襲ってきて、あのおじさんロボットは、もしかすると自分達の味方になってくれるかもしれないと思った。


 それとミカの予想だと、光の塔を一回開設するためにはものすごい労力と時間が必要で、多分ロボット達はしばらく地球には来られないだろうとのことだった。そして光の塔についてもう一つ注意する点があって、光の塔の出力が一回目の時と比べて今回は五倍程度にまで大きくなっており、次回はさらに大きくなる可能性が高いということだった。ミカの話を聞きながら、その時南美は何気なしに立ち止まり顔を上げると空を見上げた。


(うん?)

 すると、日が沈み赤く染まった空の中にユニークな形をした雲が左右に浮かんでいた。それはまるでぼんやりと数字みたいにも見える。だが、南美は特にそれを気にすることもなく、前を向くとすぐに三人の元へと戻った。


 教室に戻った南美達三人は、再び生徒会室へと戻っていった三玖のことを引き続き教室で待つことにして、三人は再び放課後のまったりとした平和な日常の時間へと舞い戻った。そしてしばらくして三玖が教室に戻ってくると、四人は再び正面玄関を通って家路へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ