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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第3章 二回目の異変と謎の子犬
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46 (3-14) 天才魔法少女

 三玖はミカを蛍に預けると、凛としながら、いつもの余裕のある佇まいで現場猫ロボット班に向かってゆっくりと一歩一歩前へと踏み出した。現場猫ロボット班の方は、先ほどの南美の魔法の圧倒的な火力を目の当たりにして、いまだ戸惑いが消えていなかったものの、三玖を認識するとすぐに戦闘態勢に入ろうとした。が、彼等ロボット達は三玖を前にすると、本来自分達が決して感じることができないはずの、自分達では絶対に相手にならないと思わせるような圧倒的な強者感を三玖に対して感じ取っていた。三玖には、蛍の外面に明らかに現れていたような自分達に対する恐怖の感情や、南美が所々自分達に見せていた隙なども一分も感じられず、その顔には自信しか感じ取れなかった。彼女のその表情と佇まいが、その自信が彼女の生まれ持っての性分からだけではなく、自分達を寸分の狂いもなく確実に仕留められるという確信からきているものである、ということが察せられたのである。そういえば、光の塔を伝って彼女達魔法少女三人を見た時から、三玖の存在にだけは常に意識しないようにしていたことに、彼等は今気がついた。


 三玖は、表情一つ変えることなくいつも通りの落ち着いた様子でロボット達の前に颯爽と立つと、右手を軽く広げた。すると、南美の時と同じように光の塔から光の塊が出現し三玖の右手に吸いよせられると、三玖はそれをしっかりと握りしめた。三玖が握りしめたそれは、黒を基調とした凝ったデザインがあしらわれたウィップ(鞭)だった。そのウイップは、地属性であるグリーンキティ三玖の専用装備だったのだが、三玖が握りしめていたのは、鞭の持ち手のグリップ部分だけしかなかった。だが、三玖がグリップに少し魔法を込めると、グリップの先端から、細かく棘のついた長い枝がシュルシュルと伸びてきた。


 三玖は、試しにウィップを軽くしならせて地面を軽く叩くと、バチーン!!という耳をつんざくような大きな反響音が周囲に鳴り響いた。その破壊力は、一撃でロボット達が間違いなく再起不能にされるのがわかるほどの威力だった。


(ひ~っ。)

 クスは、その音を聞いただけで、恐怖のあまり思わず頭を抱えながら地面にへたりこんでしまった。現場ネコロボ班の連中も、ウィップのあまりの威力に、ビビった様子でズルズルと少し後退した。


 三玖は、現場猫ロボット達を見つめると、はーっとため息を吐いて、


「何も最低な誰それっていうのは、人間だからとかロボットだからとかそう言った話に限るものじゃないのよね。もちろん人間の中にはいい人も多くいるけど、残念ながらそうじゃない人も少なからずいる。異星人だからとかロボットだからってそういう理由だけで、悪いっていうことはない。もちろん彼等の中にもいい存在はいる。でも悪意をもった存在って、それが人間であろうが何であろうが、それはどんな種類に限らず、もうやめてってどんなにお願いしても決してやめてくれない。自分達の利益のためだったら平気で他人の幸せを犠牲にする。」

 と、ポツリと独り呟いた。


 その時の三玖の表情はものすごく悲しそうだった。


 三玖の言葉をそれまで黙って聞いていた現場ネコロボ班達は、人間の三玖ごときにロボットの自分達が舐められることなど到底看過できず、(彼等ロボット達にとって、魔法子猫だろうが魔法少女だろうが、三玖達のことは、種族的劣位によって昔惑星から滅亡してしまった下等な人類と同種の一種という認識でしかなかった。)


「こ、この人間ごときがー!」

 と、班長が典型的な負けフラグのセリフを大声で叫ぶと、現場ネコロボ班の四体のロボット達は、なりふり構わず三玖に向かって突進してきた。


 三玖は、敢然と自分に向かってきたロボット達を目の前にしても全く慌てず、いつも通りの余裕のある佇まいで、まず最初に向かってきたロボットの突進を華麗に後ろに軽くジャンプしてかわすと、後退しながらそのロボットに向けてウィップを放った。ウィップは真っ直ぐロボットの左足に向かうと、パンパンパンパンパンパンパンという七回の連続音と共に、左足、腰、左手、首、右手、腰、右足の順番で各関節部位を寸分の狂いもなく正確に一周すると、各部位をしっかりと締め付けた。そして、三玖は手元のグリップをくいっと軽く引っ張ると、各関節部にがっちりと決まったウィップはギュッとロボットの関節をさらに強く締め付け、ウイップが関節に深くめり込んで、バキッという乾いた破壊音と共に、各パーツに大きなひびが入ると、ロボットは完全に動作不能となってしまって、何もできぬまま前のめりに地面にばたんと倒れこんだ。その直後、班長も含め残りの三体のロボット達が三玖に次々に襲い掛かってきたが、先ほどのロボットとの戦闘と同じVTRを観ているかのごとく三玖のウイップ攻撃を受けると、各関節部位が破壊され、何の抵抗もできぬまま、次々に地面にばたりばたりと倒れこんでいった。


 グラウンドの奥からは、南美がトロビトロビと叫ぶ声が聞こえてきて、南美が魔法を唱えるそのたびに、グラウンドの周囲が真っ赤に染まっていた。


 もし南美が傍にいて三玖の戦いを間近で観戦していたら、その魔法はなんていうの? なんて興味津々に聞いていたかもしれないが、多分三玖のことだから今の所魔法の名前は特につけていないのだろう。


 それにしても、三玖はグリーンキティとなって初めて魔法を使ったとは思えない程、意のままに魔法を扱っている。地属性である緑色の魔法少女は、赤色程ではないにしろ、その魔法はバラエティに富んでいて、その上、癖が強いため非常に扱いづらい。ちなみに三玖の魔法は、炎属性の南美の魔法同様に、魔法力の調整も可能だが、使用中のウイップの長さの調整なども可能である。三玖はロボット達の実力を瞬時に見分け、今回は純粋にウイップの威力とその長さ調整だけを使用することを選択し、絶妙の手加減をして、見事にロボット達の動作部位のみを破壊し、一瞬にして全ロボットを行動不能にすることに成功していた。これだけのことを初めての戦闘でとっさに判断し、それをいとも簡単に実行してしまえるのだから、やはり魔法少女としての才能は、マジカルキティ達の中でも随一、天才といってよいだろう。戦局はこれにて決した。

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