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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第3章 二回目の異変と謎の子犬
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43 (3-11) マジカルキティとクス

 南美を先頭にして正面の光の塔に向かって勢いよく駆け出した四人は、石段を降りてグラウンドに入ると、すぐに光の塔の目の前まで到着した。だが、光の塔の傍にいる四体のロボット達は、中には南美達の方をちらっと見たロボットもいたものの、南美達が自分達の目の前まで接近してきたにも関わらず、ミカを捕まえようなどという気配なども一切感じられず、変わらずに興味なさそうに周囲をぼーっと見ているだけだった。そして、その時のことであった。

 光の塔の中から、一人の人間?が突然飛び出してきた。


「あれ? 何か出てきた。」

 南美は、チカチカと光って見にくいので、右手で目の上に日差しをつくると、その人間?のことを片目を閉じて不思議そうな顔で観察した。


「あれは…、もしかして人間、かしら?」


 三玖が言うように、それは、目の前にいる四体のロボット達が、むき出しの無機質な合金のボディと、曲線と直線を多用したシンプルな構造で形成されていて、まさにステレオタイプのロボットという感じなのとは対照的に、ぱっと見た限りだと、地球にいる人間と同じような姿形をしていて、人間が着ているような黒いスーツのようなものを着ている。


「でもウラニャースには人類はいないよ。」

 ミカが、その人間?を見つめながら、いぶかしそうな表情をしている。


「あっ、でもよく見たら人間じゃなくてロボットみたいだよ。」


 蛍はよく見ると、その人間?みたいなものは人間によく似ているが、その着ている服や、その表情やその髪形さえ、非常に精巧にできているものの、実はそのすべてが人工的なパーツで構成されていることに気がついた。


「確かにヒューマノイドタイプのロボットはいたけど。でも、こんなに人間っぽかったかな?」

 ミカは首を傾げながら、その人間に見えるロボットのことを不思議そうに眺めていた。


 そのロボットは、突然光の中から現れると、あー終わったという感じで、少しの間その場から動かなくなったと思うと、キョロキョロしたり、ホッとしたり、頭を抱えたりと、せわしなくその表情を変えていったが、しばらくすると、落ち着きを取り戻した様子で、


「はははは。」

 と、軽快に笑い出した。


「なんか笑ったよ。」

 南美は、不思議そうに目を大きくして、そのロボットのことを見つめた。


「あら? 何がおかしいのかしら?」

 三玖も、そのロボットがなんで突然笑いだしたのか気になって、ロボットに直接問いかけた。


(うん?)

 クスは、自分の左の方から声が聞こえてきたので、声がした方を振り向くと、子猫のリカと三人の魔法子猫達が目の前に立っていて、自分の方をじーっと見つめていた。


(あれ? 魔法子猫が三人もいる。えっ? そんな報告受けてないぞ。こいつら、ちゃんと報告しろよな。正確な情報の伝達は業務の基本中の基本だろうが。もし魔法子猫一人だけだったら、ワンチャン現場猫ロボット三体がかりで魔法子猫の足止めをして、その間に残った現場猫ロボット一体で子猫を捕獲して、とっととガイアにずらかろうなどと考えていたが、さすがに魔法子猫が三人も相手だとどうしようもない。絶対に戦闘行為などという愚かな行為をしてはダメだ。)


 クスは、左を向いて驚愕の表情となって魔法子猫達の存在を確認すると、次に正面を向いて現場猫ロボット達のことを恨めしそうな顔でじとっと見つめた。そして再び左を向き直して南美達と正面で対峙すると、口に手を当てて、オッホン、と軽く咳払いし、


「やあ、地球の皆さん。こんにちは。」

 はははは、と再び軽く笑って余裕のあるところを装ってみた。


「あっ、申し遅れました。私は惑星ガイアから来ましたロボット達の代表者の一人クスと申します。」


 まるで魔法子猫達に対し一切の敵愾心を感じない、人当たりのよいこのやわらかな笑顔。クスは、惑星ガイアで五大長官という非常に高い地位にありながらも、決して威張ったり偉ぶったりすることはない。地位の上下に関係なく、職場であってもプライベートであっても、接するロボットに対しては常に腰が低く、丁寧で誠実な応対を心がけており、クスと初対面で会ったロボット達は、クスに対して間違いなく100%好印象を抱くという。ぱっと見ただけでわかるこの感じのよさは、クスに本来備わっている魅力の一つなのである。


「えっ? ガイア?」

 すると、赤色の魔法子猫が不思議そうな顔をしてすぐに反応した。


「あっ、言い忘れました。そうでした。惑星ウラニャースという星は名前が変わってしまって、現在はガイアという名前になっているんですよ。まあ名前が変わっただけで大した違いはありません。」


 少し焦ってしまったが、クスは、ははははと軽く笑って、引き続き余裕のあるところを装い続けた。五大長官という身分にあるクスが500年以上に渡って、普段から部下達に対しても偉そうぶることなどなく、まして立場の弱いロボットに対しても高圧的な態度などとるはずもない。常に上下の分け隔てなく公平に接してきた事実は、その場限りの付け焼刃とは違ってごまかしようがない。自分よりもはるかに年下に見える魔法子猫達に対してでも、それは変わることはない。長年実践してきたこの経験則が、この土壇場においても存分に発揮されるのである。


「なんか感じのよさそうなおじさんみたいだね。」

 南美が、横にいる蛍に対し率直に感想を述べた。どうやら、クスに対して好印象を抱いているみたいだ。


「うん、そうだね。よかった。」

 蛍も、この感じでいくと戦闘にならないみたいだと思ってホッとしているようだ。


(よし、いいぞ。話のわかる人間のようでよかった。)

 とりあえず、つかみはOKのようだ。クスは、心の中で密かにガッツポーズをしていた。


「こうして地球の人類の皆さんにお会いすることができてこちらも光栄です。おそらく短い時間にはなると思いますが、我々が争う必要などどこにもありません。それに異惑星交流の機会などめったにあることではありません。お互い友好的にいきたいものです。」


 クスとしては、今回は戦闘行為だけはなんとか避けて、とにかく無事にガイアに帰ることができれば御の字だ。それに、もしミカを連れて帰ることができれば、これ以上幸運なことはない。まあ特に方策など何もないのだが。


「あら、そうなの?」

 三玖は、相手の意外な発言を受けてもなお、いつもの余裕のある態度で応じた。


「………。」

 ミカは相手の真意がわからず、真剣な表情でクスのことをじっと見つめている。


「ところで、皆さんのことを拝見する限りですと、もしかすると皆さんは伝説の五色の魔法子猫の方々ではないでしょうか?」


「ええ、そうみたいだけど。」

 三玖が落ち着いた様子で、四人を代表してクスの質問に即答した。


(げーっ!! やっぱり…。)

 クスは、一瞬体中がゾクっとした。


「いやー、もしかするとそうなんじゃないかと思いましたよ。伝説の皆さんとまさかこうしてお会いできるとは誠に光栄です。」


 クスは、内心の焦りと恐怖の感情を必死に内部に押しとどめ、余裕のある素振りを演じ続けた。


「いえいえ、こちらこそ。」


 南美は、クスに負けず劣らずの感じのよさでそう答えると、宇宙から来た人間そっくりなロボットさんに会えるなんてねー。 ねー♡ なんて蛍とニコニコと会話していた。ミカも、ロボットの中にはよいロボットさんもいるからね。 三玖は、ところであのおじさん一体何者なのかしら? なんて話をしている。


(よし、このまま行けば、なんとか平穏無事にガイアに帰ることができそうだな。一時はどうなるものかと思ったが、なんとかなるものだな。残念だが、今回は子猫のことは諦めてこのまま帰るとするか。)

 クスはホッとして、実際に少し心に余裕が出てきた。そして、


「はははは。そう言って頂けると私もうれしい限りです。私は惑星ガイアでは、「全猫類ネコ型ロボット化実現室」の長官などを務めておりまして。」


 言葉には細心の注意を払っていたつもりが、クスは、ここでついに気を緩めてしまった。


「えっ!? 全猫類ネコ型ロボット化実現室!?」

 すると、ものすごい反応速度で、四人が食い気味にクスに聞き返した。


(あっ! しまった!)

 これは明らかなNGワードだ。クスは、ここで余裕がまったくなくなってしまい、


「えっ? いやいや、ネ、ネコ型ロボット化実現室といいましても、惑星ガイア全猫類保護センターなーんていうのと、実際にはそんなに違いはありません。た、単なる名称というだけのことでして、大した意味はないのです。」


 クスはしどろもどろになって、自分でも何を言っているのか意味のわからない言い訳をしながら、本当は泣きそうだったのだが、はははは…となんとか懸命に笑顔を作ろうとした。


「おい、おっさん。」

 その時、誰かが自分に呼びかけてきた。


 クスは声が聞こえてきた右手の方を振り返った。すると、自分のことをおっさん呼ばわりしたのは、現場猫ロボット四体の内の班長ロボットだった。現場猫ロボットでも班長以上のクラスのロボットになると、実は言語を話すことが可能になる。ちなみに、班長を確認する方法は、わかりにくいが、頭部に赤い一本のラインがくるっと入っているのが班長の目印となっている。


「なんだ?」

 クスは、失礼な奴だなと思いながらも、今はこいつの相手などしている場合ではない。一刻も早く魔法子猫達の誤解を解かなければ、ということで頭が一杯だった。


「おっさん。なんでこんな弱そうな人間ども相手に下出に出てるんだ? 俺達の仕事はあの子猫を捕獲することだろ? あいつらが抵抗してきたらやっちまえばいいだけの話だろ? さっさとあの猫を捕まえて帰ろうぜ。」


「ガシャガシャガシャ。」


 残りの三体の現場猫ロボット達も、班長の意見に賛成のようで、クスのことをバカにして高笑いしているように見えた。そしてクスは、それが自分に対して、情けないおっさんだぜ。という気持ちで笑っているのだということが理解できた。


「!!??」

 南美達も、状況が完全に変わってしまったことを認識し、それまで和やかなムードだったのが、一転して真剣な表情になって、ロボット達との戦闘に備えて身構えた。


「おい。…お、お前は一体何を言っているんだ?」

 クスは、班長の言葉に青ざめながらも、完全に焦せりきった頭の中では、いまだに必死に魔法子猫達に対する弁明の言葉を探そうとした。


「よし、行け!」


 だが、クスの努力は結局報われることはなく、班長がそう言って蛍の方を指さすと、現場猫ロボットの内一体が、蛍目がけて勢いよく襲い掛かってきた。

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