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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第3章 二回目の異変と謎の子犬
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42 (3-10) 五大長官と光の塔

 少し時間が戻って、ここは地球への二度目の光の塔が開通したばかりの惑星ガイアのとある場所である。


 ガイアの首都イエブより数千km離れた大陸のその場所は、現在現地時刻でいうと真夜中となり、周囲に住居エリアや商業エリアもないためか、辺りは一面漆黒の闇で覆われている。そして、その大陸のとある丘の上に、薄いピンク色した一軒のかわいらしい二階建ての建物がぽつんと建っている。実は、この建物こそが、惑星ガイアから何百光年も遠く離れた異次元へ向かうための光の通路を開設するための研究所になっている。また、なんで首都イエブよりもかなり遠方のこんな僻地といっていい場所に、それに加え、光の塔の莫大なエネルギーを異次元転移のエネルギーに集約するという、高度で繊細なテクノロジーが必要とされる施設としては、あまりに似つかわしくないかわいらしい建物なのであったが、まさしくその建物が建っている位置こそが、惑星ガイアの中で、光の塔のエネルギーを異次元転移に利用するための、エネルギーの出力調整とその力を密集するために一番適した場所だったからであった。


 その建物には、昔からなぜか、通常の住居スペースの他に研究スペースも設けられており、光の塔のエネルギーを利用した異次元への転移技術を確認するための初期の基礎研究の段階では、そのスペースを利用するだけでこと足りていたのだが、時間を追うごとに、目標とする対象物の位置が遠くなるにつれて、必要とするエネルギー量もそれに比例して莫大なものになってゆき、現状のスペースでは手狭となって、その度に設備を拡充し、増築に増築を重ねていった結果、今ではその建物は、住居スペースより研究スペースの割合の方が、はるかに多くを占めるようになっていた。


 現在では、高校の体育館大の大きさになった研究所内は、(しかも、現在も並行してかなり大規模な拡張工事を実施中であるのだが。)真夜中で黒一面になった外の世界とは対照的に、光の塔が開設した影響で、館内で働いている数多くの白衣姿のDr. ロボット達を含め、館内全体の何もかもすべてを真っ白に眩しく照らし出していた。そして、たった今四体目の現場猫ロボットを光の塔を伝って地球へと向かわせたばかりのクスは、その様子を間近で見つめながら、少し満足気であった。地球にいるミカの位置は、前回の地球での彼女との邂逅の時に、彼女の体内に設置してある生体認証により、ガイアにいながらも、常に正確に補足しているので、光の塔はミカから数m~100m以内の距離で、ロボット達が地球の大地に降り立つために、安全な平地に設置した。それからしばらくして、現地に派遣した現場猫ロボットが光の塔から首を突っ込んできて、子猫が近くまでやってきた、それに人間、おそらく伝説の五色の魔法子猫?も一緒にいるという報告が入った。


「ふむ。とりあえず今回は現場猫ロボットを四体も地球に送り出すことができた。私の予想では、おそらく今回は三体程度が限界だろうと踏んでいたのだが。フフフ。二回目の実験としては、十分に満足な結果が得られたといえよう。実験は大成功ということにして、後で「G」に報告するとして、今回はこのまま撤退するとでもしようか。それとも、とりあえず現地の現場猫ロボットどもに、ワンチャン子猫を捕まえさせてみようか。いや、相手はおそらく伝説の五色の魔法子猫だ。現場猫ロボット程度の力であの者に適うはずがない。単に余計な損失を増やすだけだろう。まあ止めておいた方が無難だろうな。」

 クスは光の通路を見つめながら、にんまりとした表情で独り言を言っていた。


「おい!」

 その時、クスの後ろから不意に声が掛かった。


「うん?」

 クスは振り向くと、見た感じだけだと10代中盤くらいだろうか? そこには、この場には不似合いな、黄金色のふんわりとしたロングの髪と純白のドレス姿が似合う小柄で可憐な少女が、不機嫌そうな表情で両手を腰に当てながら、後ろからクスの方を睨んでいた。


「ああ、クリスか。遅かったな。」


 そう、彼女こそがクスと同列の惑星ガイアの五大長官の一人、科学技術部門の長官で、この光の塔のエネルギーを利用した異次元への転移技術のクスとの共同責任者でもあるクリスであった。


(そういえば、今日ここに視察に来るとかなんとか聞いていたな。姿が見えなかったので、直前になって面倒くさくなって来るのを止めたのかと思っていたが。今頃になって来たのか。)


 クスは、振り返ってクリスを見つめると、両手を広げ誇らしげな表情で、

「見たまえ。今回は現場猫ロボットクラスのロボットを四体も地球へと飛ばすことに成功したぞ。私の予測だと、おそらく今回は現場猫ロボット三体程度が限界だと思っていたが。フフフ。今回はこれだけでもかなりの成功と言えよう。」

 と、今回の成果を自画自賛した。


 それに対し、クリスはますます不機嫌な様子で、

「はあ? 一体何を言ってるんだお前は? お前の目的はパタパのガキを連れて帰ることだろう。それなのになんでお前はこんな所でチンタラ待機してるんだ?」

 と、その可憐な見た目とは正反対な言い様で、クスに文句をつけた。


「ふむ。そうしたいことは私としても山々なのだが、残念ながらこれ以上の質量を地球に送り出すことは不可能だ。先ほど地球に派遣した現場猫ロボ班に、今から子猫の捕獲の指示を出すので、我々はよい知らせが来るのをおとなしくここで待つこととしよう。」

 クスは、クリスの不機嫌な様子などさほど気にせず落ち着いた様子で、少し顔に笑みを浮かべながら、クリスにそう返答した。


「はあ? さっきから何寝ぼけたことを言ってるんだお前は。お前も行くんだよ。」

 それに対し、クリスは明らかにイライラしており、もう少しでキレそうだ。


「いやいや、お前こそ何を言っているんだ。今回は現場猫ロボットクラス四体までが限界だ。それに私のような五大長官の一人が光の通路の中に入ってしまったら、余裕でキャパシティオーバーだろうが。」


 これだからこの女は。そう思って再び光の塔の方に振り返ると、クスは腕を後ろに組んで、光の通路をじっと見つめだした。


(クッ……。)


 背後からは、歯ぎしりしてくやしがるクリスの声が漏れ聞こえてくる。恥をかくのがいやだったら、最初からおとなしく傍で見学していればいいものを。クスは、科学技術部門長官という立場にはふさわしくない、クリスのいつもの激情的な性格に半ばあきれていた。これに懲りて、少しは落ち着いて物事に取り組むことができるようになればいいのだが。などと、光の塔を見つめながら考えていたのだが、一方クリスの方はというと、実際はクスに言われて反省するなんていうことはありえず、格下のクスにバカにされたということがもう我慢ならず、すでに彼女の怒りは沸点に達していた。


「うるさーい!! 早く行けー!!」


 後ろから彼女の叫び声が聞こえたかと思ったら、突然クスは背後から自分の臀部を思い切り蹴とばされた。


 いきなり無防備に後ろからケツを蹴られる形となってしまったクスは、何ら抵抗することができないまま、そのまま勢いよく体ごと光の中へと飛び込んでいってしまった。


「うわ―――!」

 情けない声を出して光の中へと吸い込まれていったクスは、目を瞑って両手でとっさに顔を覆いながら、爆発する、シンデマウ、もう終わりだと思った。背後からはクリスの、


「ふん!!」

 と言う不機嫌な声が微かに聞こえてきた。


 それからどれくらいが経ったのだろうか? 実際はほんの一瞬の出来事だったのだろうが、クス本人としては、それが永遠のように感じられた。まぶたの外側では、目を開けていられないような眩しさがなくなって、目の前が真っ暗に感じられた。クスは、ゆっくりとまぶたを開けると、周りは一面が白黒の世界だった。正面を見ると、先ほど地球に派遣したばかりの四体の現場猫ロボット達が、興味なさそうに自分の方を見つめていた。


「あれ?」

 助かったのか? フーよかった。クスはホッとしたが、少しすると、


(いやいや、何で通れたんだ? もしかして私の存在価値ってそんなに高くないの?)


 実は、毎回光の塔を通れる物質の総量の限界というのは、そのもののサイズやウエイト、質量といったものももちろん関係しているのだが、それ以上に、そのもの自身が持つ頭脳や身体能力、その他付加機能といった総合力の方が関係している。


(もしかすると私の存在価値って、現場猫ロボット一体分よりも低いっていうことなの?)

 クスはそう考えると、大きなショックを受けた。これでも自分は五大長官の一人なのに…。クスは頭を抱えて、少しの間その場から動くことができなかったが、やがて立ち直ると、


(ふむ。少しショックだが、それよりも落ち着こう。)

 クスは気を取り直すと辺りを見渡した。


(フー。それにしても、やはり一面白黒の世界のようだな。パタパから報告があった通り、理由はわからないが、光の塔の開設の影響で、この惑星にあるものは全てどこかの場所に一時転移されているようだ。ふむ、私もこのような用事がなければ、一つ惑星観光というものを楽しんでみてもよいのだが、今はそうも言っていられない身。それに子猫を連れて帰ってしまいさえすれば、もうこの星には用事はない。別に白黒になっていようがいまいが、私には関係はない。)


「はははは。」

 クスはそう考えると、急に気が軽くなって自然と笑みがこぼれた。


「あら? 何がおかしいのかしら?」


(うん?)


 突然自分の左手から声が聞こえてきたので、クスは声がした方を振り向いた。すると、子猫のリカと三人の魔法子猫達が気づけば目の前に立っていて、自分のことをじーっと見つめていた。

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