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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第3章 二回目の異変と謎の子犬
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41 (3-9) マジカルキティと謎の子犬

 学校の正面玄関で急遽マジカルキティに変身した南美達三人の魔法少女とミカは、正面玄関から校舎を出ると、南美を先頭に、三玖、蛍、ミカの順番で、この色のない世界の中では異様な印象を与える、黄金色の一本の細い線が地上から天まで繋がっているグラウンドのある場所へと向かった


 校舎を出て校舎脇をまっすぐに駆け抜け、間もなくグラウンドの前まで到着した四人は、グランドを挟んで2m程の高さにある石段の上からグラウンド全体を見渡した。すると、グラウンドの手前と奥に、それぞれ合計二本の光の塔が天高くまで伸びているのを目の当たりにした。


「あれ?」

 南美はグラウンドに目をやるやいなや、その場に立ち止まって、思わずその場にそぐわない間の抜けた声を出してしまった。


(むむ? どちらの光の塔に行ったらいいんだろう?)

 確か…前回自分が目撃したのは、グラウンドの奥から伸びた一本、それだけだったはずだ。それとも私がグラウンドに到着する前には二本あったのかな? それとも何本あっても別にいいものなのかな? 


 自分達から見て正面、グラウンドの奥から伸びる光の塔を確認すると、多分前回光の塔の中から現れたのと似たすっきりとした形状をしたロボットが四体、光の塔の側で固まって、特に何をするでもなく、その場にじっと待機していた。遠くからなのでよくわからないが、ロボット達は、何か手持ち無沙汰でダラダラしているようにも見える。向こうも南美達の姿を確認したように見えるが、だからといって特に何かのアクションを起こすような素振りも見せない。そしてもう一本、教室からだと死角になって確認できなかった、自分達から見るとグラウンド左手の奥から伸びる光の塔を確認すると、確信はできないが、塔自体はグラウンドの奥のものと変わりないように見える。そしてこちらの塔の方は、周囲に人影らしきものは見えない。


「どうしよう?」


 南美は、どっちの光の塔に行けばいいのか自分では判断がつかず、真剣な表情をしたまま、後ろにいる三人の方を振り返った。蛍は、南美の後ろに隠れるようにして、身を縮めてビクビクしていた。魔法少女になったとはいえ、やはり異変の世界、そしてロボットと再び対峙するのが怖いのだろう。南美の後ろでオロオロとしながら、二本の光の塔を交互に確認しては、困惑しきった表情をしている。一方、三玖の方はというと、こういう特殊な状況下におかれても、普段通りの余裕のある表情で、優雅に腕を組みながら、次の行動に備えて、落ち着いた様子で待機している。南美と目が合うと、軽く微笑んでみせた。準備は万全のようだ。それに三玖は、前回異変が発生した時は終始生徒会室にいて、グラウンドに出て実際に光の塔を確認していないので、光の塔が何本立っていようが特に気にはならないのだろう。そして事前の取り決めの通り、三玖の足元で、ロボット達からの不測の攻撃から身を守るために、四本の足をしっかりと地面につけて悠然と立っていたミカは、真剣な表情で二本の光の塔をそれぞれじっくりと観察していた。が、やがて、


「うん、ウラニャースの光の塔は、多分正面から伸びている方だと思う。光の塔の中から、五色の魔法子猫達の溢れ出す魔法の力が、確かに感じられるもん。うん、間違いない。正面の方だ。…でも、左手の方から伸びているもう一方の光の塔は一体何なんだろう? 少なくともウラニャースの光の塔じゃないのは確かなんだけど…。」

 ミカはそう断言すると、おそらくウラニャースの光の塔じゃない方の光の塔を見ながら小首を傾げた。


「それじゃ、とりあえずロボット達がいる正面の光の塔に行ってみようか?」

 ミカの意見を聞いてから、南美はみんなにそう提案した。

「うん。」

「ええ。」

「う、うん。」

 三人は、それぞれ南美の提案に同意した。これで行く先は決まった。よし、まずは正面のロボット達がいる光の塔の方に向かおう。それに、左手の光の塔からは何も出てきていないようだし。南美は、左手の光の塔をチラッと振り向いて確認すると、正面の光の塔に向かおうとした。しかし顔を正面に戻そうとしたちょうどその時、左の光の塔の中から何かが出てきたように見えた。


「あ、あれ?」

 南美は一歩を踏み出した瞬間、その存在に気づき、思わず急停止した。


「きゃっ。」

 その時、南美に続いて正面の光の塔に向おうとしていた三玖が、南美の背中にぶつかった。


「もう。急に止まったりしてどうしたの?」

 三玖は、南美の背中に勢いよく顔面をぶつけたらしく、少し不機嫌そうになって言った。


「ご、ごめんなさい。…でも、あれ。」

 南美はそう言うと、左手の光の塔の方にそっと自分の顔を向けた。南美はそう言いながらも、心の中では、三玖って意外とこんなかわいらしい反応をするんだ、と新しい発見をしていた。南美の発言を受けて、他の三人も左手に見える光の塔に再度注目した。すると、先程までは誰もいなかったはずの光の塔からは、確かに一人何者かが出てきている。しかも、ゆっくりとこちらに向かってきているみたいだ。


「うーん、一体何なんだろう?」

 その何者かは、徐々に南美達の方に近づいてきているのだが、小さくてよく認識できない。だが少しして、それがなぜなのか理解した。それはものすごく小柄で、四本足で歩いていたのである。


(もしかして…。まさかミカのパパなのかな? それとも、もしかしてママ?)

 南美は、目を細めて、その猫?らしきものがよく見えるように観察していた。すると、後ろで南美と同様に、その猫?を観察していたミカが、


「うーん、何なんだろうね?」

 と、それが一体何者なのかわからない様子だった。


(あっ、ミカのパパとママじゃないのね。)

 南美は、それを聞いて少しホッとした。ロボットになってしまった両親をミカにはあまり会わせたくない。


「あれは犬ね。」

 その時、南美達と一緒にその何者かを観察していた三玖が、はっきりとそう断言した。


「えっ? 犬!?」

 南美は、三玖の予期せぬ一言に驚いたが、そう言われてあらためてその何者かを観察してみると、確かにあれは猫、というより犬に見える。でも…、なんで突然犬が? 一体なぜ? 南美は、たくさんの?マークが頭の中に浮かんだ。


 その犬?は、引き続き南美達の方へ向かってゆっくりと歩いてきた。そしてしばらくして、南美達は、その犬?と目の前、つまり石段の上と下のグラウンドを挟んだ形で対峙した。


 すると、蛍はその犬?を見つめると、不思議そうな表情をして、

「…ポメ?」

 と、小さく呟いた。


(ポメ?)

 南美は、蛍がそう呟いたので、ポメって何? って思って、その犬?のことをじーっと観察してみた。


(ポメ? うーん。……あっ! ポメか! 確かに、あれはポメラニアンだ。)


 ポメラニアン。ドイツ原産の小型犬。小さいながらも丈夫な犬種で、粗く豊富な被毛と長い飾り毛のついた巻毛をもつ。首と背はひだ飾りのような、臀部は羽飾りのようなトップコートが密毛している。(※Wikipediaより)そのポメラニアンは、鮮やかなオレンジ・セーブルの被毛をもつ、おそらく生後2,3か月くらいの子犬で、ミカと同年代くらいだろうか? それとそのポメラニアンの左耳には、小さなピンクのリボンが飾りとして付けられている。そのポメラニアンの飼い主が付けたのだろうか? その外的特徴は、まさに地球にいるポメラニアンそのものであり、ぱっと見た限りでは、長い尻尾といった地球のアメリカンショートヘアにはない明確な特徴があるウラニャースショートヘアのミカのような、明確な違いは見当たらない。至って普通のポメラニアンだ。やっぱりどこかの宇宙から来たのだろうか? それに一体何のために? 


 しばらくは、そのポメラニアンのことをポカーンとした様子で見つめていた四人だったが、そのポメラニアンは南美達の方を軽く一瞥すると、興味なさそうにフーとため息をついた。もしかしたら、南美達にはそう見えただけなのかもしれない。それから、そのポメラニアンは蛍の方を見つめると、小さくウーと唸って顎を軽く上に突き上げた。


「あっ!」

 すると蛍は、ポメラニアンの意図にすぐに気がついたようで、急いで石段の下に降りると、そのポメラニアンを軽く持ち上げて石段の上まで運んであげた。そして、そのポメラニアンは、蛍から地面に降ろされると、それがさも当然といった感じで、南美達の方を一切振り返ることもなく、フンとしてそのまま校舎の方に向かってゆっくりと歩き出した。


「なんか可愛げのない小犬ね。」

 校舎の方へと去っていく子犬の様子を眺めながら、三玖が率直に感想を述べた。


(………。)

 南美も、その愛らしい見た目に反して、その子犬に対しては、なぜか可愛らしさを感じなかった。そのため、半分は三玖と同意見だったが、南美の方はそれをあえて口には出さずに、ただただ苦笑いを浮かべた。


「で、でもすごくキレイな毛並みで可愛らしい子犬だったよ。」

 そして蛍の方は、なんとかその子犬のためにフォローを入れてあげようと、必死にその子犬の外観的特徴に対しての賞賛の言葉を並べた。


「確かに。見た目だけだったらチャンピオンクラスなのにね。」

 三玖も、蛍のその意見にだけは同意のようだ。


「ミカはあの子犬がどこから来たのかわかる?」

 南美は、もう一つの光の塔から突然現れた謎の子犬の正体について、ミカに尋ねた。


「うーん、ウラニャースには犬種自体がいなかったから、少なくともウラニャースから来たんじゃないね。コンピュータで分析した限りでは、地球にいる犬種、ポメラニアンそのものだったよ。」

 ミカも、その子犬の正体については、まったく見当がつかないようだ。


「そうなの? でも、なんで光の塔を通って来たんだろう?」

 南美は、地球にいる普通のポメラニアンがなぜ光の塔を通ってきたのか、いまだ謎のままだった。


「うーん、まったく意味不明ね。」

 三玖も、難しい顔をして腕を組みながら、首を傾げた。


「それにあの子犬…どこかに行っちゃったけど、一人にして大丈夫かな?」

 南美は、子犬のことをいまだに少し心配に思っていた。


「まあ、あの子犬だったら別に大丈夫なんじゃない?」

 三玖は、南美の質問に対し、根拠なく単に適当に答えただけのようだったが、実は聞いた南美自身も、他の三人も、理由はわからないが、なぜかあの子犬なら絶対に大丈夫だろうという気がしていた。


「よし! それじゃ、改めて正面の光の塔に向かおう!」


 南美は、みんなに対しそう力強く宣言すると、なぜかロボット達がいまだに待機したままの光の塔に向かって、高い石段を元気よく駆け下りた。

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