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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第3章 二回目の異変と謎の子犬
34/73

34 (3-2) 新学期二週目の休み時間

 ゆかりは、席に座ると、一刻も早く昨日の魔法少女のことは忘れてしまいたかった。だが、残念ながらそういうわけにはいかなかった。なぜかというと、同じクラスにはひばりがいるからである。ひばりと、プル、ミア、ルーシーのいつもの仲良し四人組は、授業が終わるたびに集結しては、そのたびに、昨日の五色の子猫の魔法少女マジカルキティの第一話について、熱く語り合った。


「ねぇねぇ、ひばり。やっぱりレッドキティのなみってキレイですごくいい娘だよね。私、やっぱり今回も赤色の魔法少女推しでいくよ。」

 歴代に渡って変わらず赤色の魔法少女推しであるプルが、ピョンピョン跳ねるようにしゃべっている。


「そうだね。…そういえば、なみっていえば、A組の緋色さんに少し似てない? 美人だし、髪型もポニーテールだし。それに名前も同じなみちゃんだし。」

 ルーシーが、何の気もなしにそう言った。


(いやいや、名前もほとんど同じやし。あの娘絶対緋色さんやろ。)

 ゆかりは、授業が終わると、心身の疲労から、すぐに机の上に頭を倒して休息をとっていたのだが、教室の反対側から、四人のキャッキャした会話が、いやでも耳に入ってきてしまうため、心の中で一人つっこんでいた。


「確かに。そういえば、緋色さんの実家も市内で洋食屋さんをやってるし。俺、緋色さんの洋食屋さんに行ったことがあるけど、なみのパパとママも、緋色さんの両親にちょっぴり似てるかも。」

 ミアが、ルーシーの意見に同意するように、そうつけ加えた。


(いや、それやったら、緋色さんに緋色さんの両親も入れて、もうそれは絶対緋色家やんけ。)

 ゆかりが、全身をプルプルさせながら、心の中で、さらにつっこみを入れる。


「いや、全然似てなかったよ。完全なる他人のそら似だね。緋色と日乃彩って、名字が全然違うし。それに、なみって名前の女の子なんて日本中にいっぱいいるよ。レッドキティのなみだったら、緋色さんよりも、むしろプルの方が全然近かったと思うよ。」

 ひばりが、彼女達の感想に対し、自信満々な表情で最後にそう否定すると、


「確かに。」

 と、三人は納得した。


(なんでやねん!)

 ゆかりは、すぐに立ち上がって、四人組の輪に割って入って、


「あれはどう見ても緋色南美本人やろが。それに、このプルって娘のどこがなみに似とんねん。チンチクリンで、何から何まで全くの別人やろが。」と、つっこみを入れたくって仕方がなかったが、そんなことをしてしまえば、あの四人組だけでなく、クラス中の生徒から、ものすごく引かれてしまうと思ったので、全身をプルプルさせながらも、泣く泣く断念した。なぜなら、あの四人組は五色の魔法少女マジカルキティの第一話を始めから終わりまで、30分間じっくりと観ているにもかかわらず、アニメの舞台になっているのが、自分達が今住んでいる、ここ宝箱市であることや、赤色の魔法少女の日乃彩なみが、緋色南美本人であるという認識がまったくないのである。それと、あの四人組なのだが、始業式から、傍目で観察している限りだと、今日私と一緒に登校してきたひばりという娘が、どうやら四人の中のリーダー格のようである。あの四人組の中で一番アホっぽいのに、あの娘が断言すると、なぜか妙な説得力があって、他の三人はすぐに納得してしまうみたいだ。


 それでは、ここでひばりをリーダーとする仲良し四人組について紹介しよう。この四人は、小学生の時に、いち早くこのグループから抜け出すことに成功したクラスメイトの薄珊瑚つかさを含めて、家が近所で幼少の頃からの親友である。そしてこの四人は、幼少の頃からの伝説の五色の魔法少女好きで繋がっており、その絆は高校2年生になった今でも揺るがないものとなっている。


 まず、ひばりから赤色の魔法少女本人である緋色南美より、なみに似ていると言われて、キャッキャ喜んでいるプルという女の子。先に言っておくと、先ほどゆかりがつっこんでいた通り、レッドキティのなみとは似ても似つかない。まず、背が低い。過去に、ひばりとゆかりがクラスで一、二位を争うくらい背が低いと言っていたが訂正させてもらおう。実はクラスで本当に一番背が低い女の子が、このプルであり、ひばり達ももちろん低いのだが、彼女はひばり達よりさらに一回り低い。それに、髪もショートカットで、前髪も眉毛の上の方で短く整えているため、より幼さが強調されている。しかし、性格はポジティブで、成績も比較的優秀な方で、外見に反して、中身の方はかなりしっかりしているみたいである。そして、彼女の推しは赤色の魔法少女である。


 次にミア。彼女はプルとは逆で、背が高く、髪はロングのウルフカットで、顔立ちも含め、見た目はかなり男っぽく見える。初見だと、なぜか怒っているように見えるかもしれないが、元々がそのような顔立ちなのである。オレっ娘で、性格は、自身では冷静で理論派だと分析しているようだが、これは何代か前のシリーズの青色の魔法少女のキャラクターそのものに寄せようと、常日頃から意識しているからであり、実際の中身はプルとは逆で、少し子供っぱいのかもしれない。もちろん彼女の推しは青色の魔法少女である。


 そして最後にルーシー。彼女は、身長もクラスでちょうど真ん中くらいで、成績も中くらい。四人組の中では、一番まともなように見える。くるくるふんわりとパーマをおしゃれにまとめ、全体的にも愛くるしい顔立ちをしており、彼女だったら、別に好き好んでこのグループにいなくてもいいのに、と思わなくもないが、彼女自身は、この場所にいるのが一番居心地がよいのだそうだ。そして彼女の推しは緑の魔法少女、なのだが、実は元々緑色の魔法少女に愛着があるわけではなく、幼い頃、五人で魔法少女ごっこをしていた時に、たまたま緑色の魔法少女が最後まで余ってしまったため、控えめな彼女が残った緑を選んだに過ぎなかった。


 そして、ひばりの父である耀司から、桃色の魔法少女だといわれた薄珊瑚つかさ。彼女は、ひばりと同じ2年D組に在籍しているが、今はひばり達とは別のグループに所属しているため、この場では紹介する必要はないだろう。


 そして、次の授業が終わると、四人は再集結し、

「ねぇねぇ、ひばり。イエローキティのほたるってすごくかわいいね。でも、ほたるがなみより先に魔法少女になっちゃうからビックリしたね。」

 プルが、またピョンピョン跳ねるようにしゃべっている。


「そうだね。…そういえば、ほたるちゃんって、A組の菜の花さんに少し似てない? かわいいし、雰囲気なんかも似てるし。それに名前も同じほたるだし。」

 ルーシーが、また何の気なしにそう言った。


(いやいや、名前もほとんど同じやし、あの娘絶対菜の花さんやろ。)

 聞きたくなくても、四人の会話がいやでも耳に入ってくるゆかりは、心の中で、再びつっこみを入れていた。


「そうだな。そういえば、菜の花さんも雑誌でモデルやってるし、ほたると似たような髪留めをつけてるな。」

 ミアが、ルーシーの意見に同意するように、そうつけ加えた。


(だから、それはもう菜の花蛍本人やろ。)

 ゆかりが、全身をプルプルさせながら、心の中で、再度つっこみを入れる。


「いや、全然似てなかったよ。ふん、完全なる他人のそら似だね。奈野原と菜の花って、名字が全然違うし。それにほたるって名前の女の子なんて、日本中探せばどこにでもいるよ。むしろ黄色と言えば、菜の花さんより私…じゃなくてつかさの方が近かったと思うよ。」

 ひばりが、彼女達の感想に対し、自信満々で最後にそう否定すると、


「確かに。」

 と、三人は納得した。


(なんでやねん!)

 三人が少し疑問に感じても、それを全て自信満々に一蹴するひばりのせいで、話がまるで核心部分に進みそうな気配がない。ほたるっていう名前の女の子なんて、日本中そんなにおらんやろう。まあ、ほたるとひばりが全然似てないっていうところだけは間違ってないけどな。


 しかし、それにしてもこの四人組以外に、クラスメイトの中にも、他に昨日の五色の子猫の魔法少女の第一話を観ていた娘がいるはずや。それに、学校全体でいったら、かなりの数がおるかもしれん。それやのに、あの四人組以外、誰も昨日のアニメの話題なんてしてへん。おかしな話やけど、アニメに出てたなみとほたるのことを同じ学校の緋色南美と菜の花蛍に見えてるんは、どうもうちだけみたいのようや。やっぱりうちは病気なんやろうか? ゆかりは、額を机の上に当てて下を向きながら、一人絶望的な気持ちになっていた。


 そして、本日の授業がすべて終了し、放課後再集結した四人は、

「宇宙から来た子猫のミカってすごくかわいいね! 私もあんな猫飼いたいな。」

 プルが、またまたピョンピョン跳ねるようにしゃべっている。


「緋色さんが毎日学校に連れてきている子猫のミカちゃんもすごくかわいいしね。」

 ルーシーが続けてそう言った。


(……………。)

 ゆかりは、もうつっこむ気力がなかった。


「やはり時代は猫。今時家で犬なんか飼うなんて時代遅れだよ。私がもしもこれからペットを飼うなら断然猫。犬なんて論外だね。」

 ひばりが言うと、なぜかそれが不吉なフラグのようにしか聞こえない。


(あれ?)

 ゆかりは、疲れたからもう帰ろーと思って、机から顔を起こして、教室全体をさっと見渡すと、自分以外に、ひばり達四人の会話をちらちらと横目に聞いている人間がいることに気がついた。それは、先週の異変が起きた時、屋上からゆかりに指示を出していた露草詩叙つゆくさしのだった。露草さんといえば、授業が終わると、いつも教室から消えてどこかに行ってしまうのに、そういえば、今日は授業が終わってからも、ずっと教室に残っている。ゆかりは、この際やから、いっそのこと露草さんに聞いてみたろうかな、と思ったが、露草さんとは1年の時にクラスメイトだったが、そんなに親しくはない。それに、普段から、私にしゃべりかけないでのオーラが強めの娘や。ゆかりは、どうしようか自分の机に座ってしばらく迷っていると、詩叙は静かにスッと自分の席より立ち上がると、気がつくと、ゆかりの席の前に立っていた。


 ゆかりは、下を向いてどうしようか迷っているところだったが、机の端をトントンと指先で叩く音が聞こえてきたので、上を向いた。


「へっ?」

 詩叙が、いつもの無表情でゆかりを見下ろしている。


「あの…」

 詩叙は、いつもの聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、ゆかりに話し掛けた。


「な、なんや?」

 ゆかりは、まさか詩叙の方から話し掛けてきてくれるとは思わなかった。そして、少しビビりながらも、詩叙に聞いてみようと思った。何か聞きたくないような気もせんでもないが、ピンチはチャンスや、ともいうし。


「今日…あるから…」


「な、何がや?」


「異変…」


「い、異変?」


「そう…」


「えっ? まさか先週と同じヤツか?」


「そう…。それで…」


「そ、それで何や?」


「これから…しばらく、教室から出ないでほしいの…」


「えっ? 何でや?」


「死ぬ…かもしれないから…」


「ふぐわっ!?」

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