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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第2章 『誕生??魔法少女』
32/73

32 (2-10) 新学期の一週間

 翌朝、なみは猫専用のキャリーにミカを入れると、いつもよりか、かなり早めに学校に登校した。このキャリーは、春休みが始まってすぐにミカのベッドを購入した時に一緒に購入したもので、どこかに行く時に、たまに使用していたものである。なみは、早朝の学校に到着すると、A組の教室には向かわず、生徒会室に直行した。まだ誰も生徒がいない朝靄が残る校舎の中を一人歩き、そして生徒会室の前に着くと、ドアを軽くノックした。


「失礼します。」

 なみは、少し緊張して、そう挨拶してから、そーっとドアを開けると、生徒会室の中には副会長である三玖が、いつもの余裕のある笑みを微かに浮かべながら、一人待ち構えていた。


「おはよう、南美。」

「おはよう、三玖。」

 南美が三玖に挨拶しあうと、南美の下の方から、

「おはよう、三玖。」

 というミカの声が聞こえてきた。三玖も、

「おはよう、ミカ。」

 と、ミカの入っているキャリーに向かってそう返した。


 南美は、机の上にキャリーを置いて中を開けると、ミカが外に出てきて、生徒会室の中をキョロキョロと見回した。すると、三玖が、


「とりあえずミカ、あなたは私達が授業中の間は、生徒会室の中でお留守番しててね。どうしても必要な時以外は、この部屋から絶対に出ちゃダメよ。」

 そう言って、ミカにくぎを刺すと、


「ミカ。お昼休みになったら迎えに行くから、一緒にお昼ご飯食べよ。だからそれまでは、生徒会室の中でいい子にしていてね。」

 続けて南美がそう言うと、


「うん、わかった。」

 ミカは、素直にそう返事した。すると、


「ふむふむ、なるほど。その子猫がそうなんだね。」


 南美達の後ろから、そう言う声が不意に聞こえてきたので、二人は後ろを振り返ると、ボサボサの長髪で目が隠れてしまっていて、その上、大きくて黒いマスクをしているため、顔がほとんど識別できない同じ制服を着た女の子が、知らない間に南美達の後ろに立って、一緒になってミカのことを眺めていた。よく見ると、その女の子は、生徒会の相談役である常盤さんであった。


「えっ? なんで常盤さんが生徒会室にいるの?」

 生徒会の副会長である三玖が、同じく生徒会の相談役である常盤さんに対する質問にしては、非常におかしな質問ではあったが、生徒会相談役である常盤さんが、実際に生徒会室に来ることなど、めったにないことだったので、三玖も思わず、このような的外れな質問をしてしまったのである。


「ふふ。私も名目上ではあるが、若葉さん、一応は君と同じ生徒会の一員なんだよ。それに、その子猫の共同所有権を有する者の一人として、私の行いは極めて自然な行動だと思うのですが。さて、どうだろうか?」

 そう言って、常盤さんが、ふふと小さな笑みを浮かべながら、三玖の方を見て、少し意地のわるそうな顔をしてみると、


「そ、そう言われると、確かに常盤さんの言う通りね。ごめんなさい。おかしな質問だったわ。」

 三玖は、慌ててそう訂正した。南美は、こんなに余裕がない三玖を普段見たことがなかったので、少し驚いてしまった。


「ふふ。いやいや、そんなことはない。確かに若葉さん、君の言うことの方が正しい。申し訳ない。少し君のことをからかってみただけだよ。いやー、昨日、実に若葉さんらしくないお願いをされてしまったので、それならば、よっぽどのことがあったのかと興味をもったので、今日の朝早く学校に来て、君達が来るのをこうして待っていたんだよ。」

 常盤さんは、そう言ってくすりと笑うと、ミカの目の前に来て、じっくりとミカのことを観察し始めた。


 ミカは、常盤さんの顔をじっと見つめると、

「おはよう。」

 と、とりあえず常盤さんに朝の挨拶をした。


 すると、常盤さんは、ミカを見ながらうんうんと軽くうなずくと、

「ふむふむ、なるほど。確かにこれはとても興味深い。猫類の中でも、この子猫は突出した存在だといえよう。しかし、残念なことだが、今の私は猫類の研究には興味がないんだ。それに、どちらかというと私は犬派でね。よし。それじゃあ、その子猫の長い尻尾は、私の研究の賜物、ということにでもしておこうか。その方が面白いし、説得力があるだろう?」

 そう言うと、一人納得したような顔をして、三玖達の方を振り返った。


「常盤さん。もしかして、ミカがしゃべっていることがわかるの?」

 南美は、常盤さんの反応がイマイチよくわからなかったので、もしかしたら、常盤さんも伝説の五色の魔法子猫達の一人なのかもしれないと思って、思い切ってそう尋ねてみた。


 すると、常盤さんは、

「ふむ。それも興味深い質問だね。確かに昨日も、そして先ほども、君達はこの子猫と会話しているように見えたよ。それに、今もこの子猫は私に対して、何か一言語りかけたみたいだが、少なくともニャーと言っていないことだけは確かなようだ。」


 常盤さんは、南美の質問に対して、要領を得ない返事をしたので、次にミカが直接、

「常盤さんは、私がしゃべっていることが理解できるの?」

 と、首を傾げて、常盤さんに質問した。


 すると、常盤さんは再度振り返って、ミカの方をじっくりと見つめ、

「ふむ。おそらく君は、今私に対して、猫である君と人間である私が会話ができるのかどうか質問したのだろう? 猫類の中でも突出した存在である君に敬意を表して、それに対し、私も真剣に答えよう。答えはノーだ。残念ながら、私は君と会話をすることはできないようだ。しかし安心していい。先ほども言った通り、今の私は猫類の研究にはまったく興味がない。だから、たとえ君が特定の人間と会話することができるのだとしても、何者かであっても、私は決してそれを誰かに他言することはないよ。それじゃ、私はこれで。おじゃましたね。」


 そう言うと、常盤さんは生徒会室から出て行った。


 常盤さんが出ていく様子をただポカンとした表情で見送っていた南美は、

「私、初めて常盤さんと話したけど。常盤さんって、なんか不思議な人なんだね。」

 と、思わず率直な感想を漏らした。すると、突然の常盤さんの来訪に終始戸惑い気味だった三玖も、いつもの落ち着きを取り戻して、


「うん。確かに彼女は、なかなか会話が成立しづらい人なんだけど。でも、決して悪い人じゃないのよ。」


「でも、常盤さんは本当にミカと会話できないんだろうか?」


「うん。それについては、間違いなく会話できないんだと思うわ。常盤さんは人をからかうような所があるけど、決してウソをつくような人じゃないから。でも、常盤さんが言ってた通り、ミカと会話することはできないみたいだけど、ミカが会話をしているということについては理解しているようね。でも、常盤さんだったら、普通にあり得る話だと思うわ。」


「へえ、やっぱり常盤さんってすごい人なんだね。だったら、なんでミカに興味をもたないんだろう?」


「それについては、本当に興味がないんだと思うわ。私もよく知らないんだけど、彼女、今はものすごくつまらないことを研究しているらしいの。それで、それ以外のことについては、まったく興味がないんだって。それで、先生方も嘆いているらしいわ。」


「へえ、そうなんだ。」


 南美は、常盤さんのことについて、やっぱり不思議な人なんだと思った。そして、急にはっとして、

「あっ! そういえば、常盤さんにお礼言うの忘れてた。」


「あっ、そういえば、私も忘れてたわ。まあ、常盤さんはあんな感じだったし。それはまた改めて、ということでお伺いすることにでもしましょう。」


 そして、そうこうするうちに、始業の時間も近づいてきたので、南美と三玖の二人は2年A組の教室に戻り、早くもウトウトとしてきたミカは、一人生徒会室でお留守番となった。


 それでは、ここで、これまでの事の経緯について、明らかにしよう。


 まず、常盤さんのことだが、彼女が天才だということは、彼女が小さい頃から、すでに全国的にも有名な話で、彼女が中学時代までに発表した研究や論文の数々は、世界中でもセンセーショナルを巻き起こし、日本としては、彼女の海外流出を防ぎ、国内で保護することが喫緊の至上命題とされている。そんな彼女なので、高校でも、彼女の存在は重宝されており、その代わりに、学内でも、ある程度の治外法権が許されており、授業中、席に座りながら、授業とはまったく関係のないようなことをしていても、授業を途中で抜け出して、どこかに消えてしまったとしても、彼女だったらと、特別に許されているのである。また生徒会でも、彼女のために、相談役という新たなポストを創設し、何か学校の内外で不測の事態が発生した場合に備えて、彼女にお願いして、特別に生徒会に在籍してもらっているのである。実際に、彼女が高箱女子高等学校に入学してから、彼女のちょっとした発案から、学年の学力テストの平均点が50点は上がったし、彼女がたまたま少し関わることになった一部のクラブ活動の成績も、地方レベルから全国レベルに飛躍的に上昇したりなんかしていた。彼女がいるといないとでは、その安心感が全然違うのだ。


 そういうわけで、そんな彼女にお願いすれば、ミカを学校においてもらうことなど、造作もないことなのであった。大体のストーリーとしては、以下のようなものであった。元々常盤さんの研究用のペットとして、学校で密かに飼育していた子猫が、春先に彼女の元から脱走し、それを偶然保護して家に連れて帰ったのが南美であり、春休みが明けてすぐ、南美よりミカと名付けられたその子猫を発見した常盤さんと南美との間で話し合いが行われ、ミカは南美と常盤さんの共同所有という形で落ち着いた。そして、ミカは南美の方で飼っていいということになったのだが、その代わり、それに対し、ミカを毎日学校に連れてくること、という条件がついた、というような内容である。


 そして、そんな天才な常盤さんなのだが、先ほど三玖が言っていた通り、高校に入学したあたりから、対外的な研究を一切止めてしまって、現在は、学校の先生方だけではなく、世界中の学者連中が悲嘆にくれるような、意味のわからない研究を一人続けているそうである。


 それと、ミカについてだが、授業中は生徒会室内で飼うということになり、それは生徒会の内部関係者のみの秘密厳守となっていた。しかし、そんな秘密が厳守されるわけもなく、生徒会がものすごくかわいい子猫を生徒会室で飼っているという噂が、瞬く間に校内中に伝わり、休み時間になると、ミカを見るため、大量の学生が生徒会室の前に押し寄せてしまうという事態になってしまったため、そんなルールは自然となくなっていき、ミカは学校のマスコット的な存在として、授業中も校内を比較的自由に行き来できるようになっていた。そんな彼女の指定席になったのが、2年A組の教室の三玖の席の真後ろ、ちょうど南美のバッグが置いてある棚の上なのであった。

常盤さんのキャラ設定は、未だ定まっていません。

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