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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第2章 『誕生??魔法少女』
29/73

29 (2-7) 惑星ガイア★1

 所変わって――ここは地球より何百光年も遠く離れた宇宙の果てにある星。五百年以上前、かつて惑星ウラニャースと呼ばれていたその星は、現在は惑星ガイアと呼ばれている。


 そして、その惑星ガイアを支配しているのは、人類でもなければ猫類でもない。いわゆる種そのものがないロボット達である。その星には、形や大きさ、その使用用途に合わせて、多種多様なロボットが生活している。そして、かつて惑星を支配していたウラネコ達はどうなったのかというと、地球でミカのパパが言っていた通り、ウラニャースで暮らすウラネコ達は、現在はすべてロボットに改造されてしまい、それに伴い、彼等彼女達の特長であった優れた頭脳は、時間と共に徐々に退化していってしまい、魔法なんかも一切使えなくなってしまった。今では、その長い尻尾だけが、唯一彼等彼女達がウラネコだった頃の特徴を残すのみである。


 それでは、ロボット達がクーデターによってウラネコ達から惑星の支配権を勝ち取った後、ロボット達の言っていた通り、その後、ロボットとウラネコとの間の、完全に平等で平和な世界が実現したのかというと、実際はまったくそういうようには見えなかった。


 ウラネコ達をすべてロボットにしてしまった後、惑星を支配したのは、ロボット達の代表者であり、彼等の反乱を主導した、ロボットの中でもヒューマノイドタイプ、いわゆる人型ロボット達であった。彼等は、ウラネコ達の支配下の中で、ヒューマノイドでありながらも、頭の上に猫耳なるものを装飾として取りつけられていたが、それは彼等にとって屈辱の象徴であった。彼等は、惑星を支配した後、屈辱の象徴であったその猫耳を取り外し、ロボット達の中で階級制のようなものを築き、彼等はそのピラミッドの頂点に君臨した。その階級の中で、現在最下層に位置するのが、優れた頭脳も魔法も失ってしまった現在のウラネコ達なのである。


 では、なぜヒューマノイドが、数あるロボット達の中で、唯一の支配者に成りえたのか? それは、彼等ヒューマノイドと、その他のロボット達との間には明確な違いがあったからであった。ロボットの中で、なぜかヒューマノイドにだけは、本来ロボットには備わっていないはずの、感情というものが備わっていたのである。彼等ヒューマノイドが言うところでは、完全に平等で平和な世界を実現するためには、一部の優れた存在が、全体の愚かな存在を正しい方向に導いていかなければならない。そして、その理論でいうと、現在の支配体制は至って正常である、ということである。


 惑星ガイアの現在の首都であるイエブは、大陸の東端にある小さな島全体のことを指し、現在このガイア統治の拠点となるのが、その小島の中心にそびえたつ高さ1000m超の巨大なビル「QLクーエルタワー」である。現在ガイアは、ロボット達の代表者「G」という存在をピラミッドの頂点にして、主に五人の部門別長官達によって統治されている。


 その日の朝、五人の部門別長官の一人であるクスは、タワーの上階の廊下を一人歩きながら、今日の空模様と同様、灰色で憂鬱であった。


「惑星ガイア全猫類ネコ型ロボット化実現室」の長官である彼の仕事とは、「G」や、その他四人の部門別長官達とは違い、質的にも、量的にも、比較的軽いものであった。今から五百年以上前に、彼等ロボット達がウラネコ達に反乱を起こしてから、一年も経たずして、彼等は惑星に住むすべてのウラネコ達を捕獲し、順次ロボットにしていった。そして現在、惑星ガイアには、ネコ型ロボットではない生身の猫など一人も存在しなかったのである。


 だが、ガイアより遥か遠くに、ネコ型ロボットにできていない猫が一人だけいたのである。惑星よりいなくなってしまった猫のことなど、別に放置しておいても構わないのではないか、という意見が、ロボット達の中でもあったのだが、かつてはウラネコの一人であり、ミカのパパでもあった、現在はネコ型ロボットでありながらも、名誉ヒューマノイドとなったパタパと、ある約束を交わしてしまったがために、その子猫ミカの捜索をその後五百年以上も続けてきたのである。


 パタパの話によると、ミカを乗せた宇宙船は、惑星に伝わる「伝説の五色の魔法子猫達」を探すための旅に出たのだという。伝説の五色の魔法子猫達というのは、はるか昔、かつてこの惑星自体にそもそも名前がなかった時代に、この惑星に生息していたといわれており、ウラニャースという猫類が支配する魔法国家と、ガイアという人類が支配する文明国家との、二国間の平和と共存の証とされてきた。だが数千年前に、その伝説の五色の魔法子猫達が、突如としてこの惑星から姿を消してしまい、その後、ウラニャースとガイアとのパワーバランスは、徐々に崩れていった。そしてしばらくすると、猫類と人類との間で戦争が始まった。そして戦況は、人類が劣勢となり、人々は自らが存亡の危機に陥った時に、彼等彼女等を救ってくれるといわれた伝説の五色の魔法子猫達が、再び自分達の前に現れてくれることを切に願ったのだが、結果は歴史の知る通り、彼女達が再びこの星に現れることはなく、惑星に住む人類は一人残らず滅亡してしまった。その後、惑星の支配者となったウラネコ達に仕えることになったロボット達のほとんどは、ヒューマノイドの彼等を含めて、元々は人類に仕えていたロボット達なのであった。


 そのパタパが、自分達ヒューマノイドが、かつて仕えていた人類を救ってくれるといわれた伝説の五色の魔法子猫達を探すために、彼の娘であるミカを宇宙船に乗せて、遥かなる宇宙への旅に向かったというのである。


 確かにパタパの言う通り、伝説の五色の魔法子猫達はこの惑星にはいないので、もし本当にいるのであれば、どこか別の惑星にいるということになるのであろう。だが、それにしても、もうすでに滅亡してしまった人類を救ってくれる存在を今さら探すといわれても、まったく意味のないことのように思われたが、かつては自分達の主人であった人類のためと言われれば、それを無理に否定することもできなかったのである。それとパタパとは、彼がウラネコであった時に、娘のミカと、ミカのママであるママメトと、家族全員がロボットになって、永久に一緒にいさせてあげるという約束をしてしまった。ロボット達のする約束というのは絶対である。嘘をつくという機能は備わっていない。


 そのため、ミカが宇宙に旅立ってしまってからは、宇宙船につけていたレーダーから、ミカのいる位置を常時把握することだけが、長官であるクスの主だった任務だったのである。その後五百年以上、ミカを乗せた宇宙船は、どこの星に着陸することもなく、宇宙の中を彷徨い続けていた。それは当然のことであった。伝説の五色の魔法子猫達は、数千年前に惑星ガイアからいなくなってしまった。だからといって、他の惑星にいってしまったという可能性もなかったのである。そのため、クスとしては、いつか宇宙船が故障して機能を停止し信号を一切発信しなくなるか、もしくは永久に宇宙を彷徨い続けるか、それを見届けるだけの簡単な仕事だと思っていたのである。


 それがつい二週間程前のこと、宇宙船がどこかの星に着陸したという報告が入ったのである。

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