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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第2章 『誕生??魔法少女』
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27 (2-5) 宇宙子猫と学校一の常識人

 翌朝、南美は、昨日と同じように、ミカをバックパックの中に入れて、学校へと向かった。ミカには、若葉さんと話ができるタイミングまで、学校の屋上にでも待機してもらおうと考えていたが、今日は昨日と違って、あいにく空は灰色の雨模様である。だったら、今日は南美のママがお家にいるので、若葉さんと話をするのは後日にして、ミカにはお家でお留守番してもらうという選択肢もあったが、いつ再び、光の塔からミカを連れ戻しに、ロボット達が現れるのかわからない。そのため、南美は、できるだけミカの側から離れるわけにはいかなかった。南美は、教室に入ると、バッグを大事そうに抱えながら、若葉さんの席の真後ろにある棚にバッグをしまった。若葉さんは、すでに教室に来て席に座っており、南美が通りがかると、


「おはよう、緋色さん。」

 いつもと変わらない余裕のある表情で、南美に挨拶した。


「あっ! おはよう、若葉さん。」

 南美は、一瞬ビクッとしたが、できるだけ普段通りに努めて、挨拶を返した。すると若葉さんは、


「あっ、そうそう。例のあなたの子猫の件なんだけど。いい解決策が見つかったので、よければ、お昼休みにでもお話できないかしら?」


「えっ? もう見つけたの? あ、ありがとう。だったら、お昼休みに一緒にお弁当を食べながらお話しようか?」

 南美は、若葉さんのあまりの手際の早さに驚いたが、若葉さんの方からわざわざ時間を作ってくれたのは、南美の方からしても、むしろ好都合だった。


 それから授業が始まり、南美は普段通り授業を受けて、そして一限目が終わると、ミカの様子を見に行った。


(あっ!)

 すると、昨日と同じように、バッグの中から、スース―と気持ちのよさそうな寝息が聞こえてきた。南美は、恐る恐る若葉さんの席の方を振り向いた。若葉さんは、いつも通りの落ち着いた表情で、席に座って何かの勉強でもしているみたいだった。南美はそれを見て、ホッ、よかった。若葉さんには気づかれていないみたい、などとは決して思わなかった。若葉さんのことだから、おそらくすでに気づいているだろう。そして、南美の予想は当たっていた。お昼休みの時間になると、若葉さんは、南美の席までやってきて、


「緋色さん。それじゃ一緒にお昼に行きましょうか。それに…、ここじゃ都合が悪いようだから、どこに行って食べようか?」

 と、話掛けてきた。


「そ、そうだね。じゃあ、どこか空いてる教室がないか探そうか?」

 南美は、そう答えると、棚にしまってあったバックパックを抱えて、若葉さんと教室を出た。すると、蛍が後ろから二人の後についてきた。


「あら、菜の花さん。申し訳ないんだけど、私達、これから大事なお話があって…」

 と、若葉さんが言いかけたところで、


「あの、若葉さん。子猫の話なんだけど…、実はこの話、蛍にも関係があって。」

 南美が若葉さんにそう説明すると、蛍も、横でうんうんとうなずいた。


「ふーん、そうなの。それじゃ一緒に行きましょうか。」


 若葉さんは、少し不思議そうな顔をしたが、特に気にはしていない様子で、その後、三人でどこか空いている教室がないか校内を少し歩き回ったが、科学教室が空いていたので、三人で教室の中に入った。すると、教室の片隅で、科学教室の備品を使って、何か調理をしている白衣姿の女の子がいた。


「あれ? 誰かいる。」

 南美は、教室に人がいたので、別の教室を探そうと外に出ようとしたが、


「あー、あの娘ね。あの娘だったら大丈夫だから、私達は反対側の教室の奥でお弁当を食べましょう。」


 若葉さんは、その女の子のことは特に気にせず、といった感じで、その女の子がいる席とは反対側の席の方へと向かった。南美は、こういうルール事に関しては、人一倍厳しいはずの若葉さんが、なぜその女の子のことをスルーしたのか、少し気になって、その女の子の方を見た。そのぼさぼさ頭の女の子は、よく見ると、校内では有名人である同じ高校2年生の常盤さんだった。


 彼女の名前は、常盤香ときわこう。ひばりと同じ2年D組の生徒で、校内での学業テストでは、いつも一位。おそらく全国でも一位。周囲からは、規格外で、真の天才と言われている。若葉さんと同じく生徒会に所属しており、若葉さんは生徒会副会長で、常盤さんは生徒会相談役を務めている。若葉さんが、至って普通の常識人というなら、常盤さんは至って普通とはかけ離れた非常識人といわれているので、常盤さんがどんな行動をとっても、彼女にとっては、至って平常運転なのである。若葉さんも、理由があって、彼女の行動に対しては、なぜか許容する他ないのである。


 南美も、常盤さんだったら別に問題はないか、と思ったので、三人は教室の奥の席に座ると、お弁当を食べながら、話をすることにした。


 若葉さんは、お弁当を机に広げると、開口一番、

「それで。緋色さんは、なぜ今日も学校に子猫を連れてきたのかしら?」

 と、聞いてきた。


 とうとうこの時が来たか。南美はそう思って、ゴクリと唾を飲み込むと、机の上に乗せていたバックパックのチャックを開けた。


「ミカ! お願い、出てきて。」

 南美がバックに向かってそう叫ぶと、ミカがバックの中から、勢いよくピョーンと飛び出した。そして、机の上に着地すると、若葉さんの方を振り向いた。若葉さんもミカをじっと見つめると、


「あら、この子なのね。なんてかわいらしい。それに、なんて長い尻尾。」

 と、ミカのかわいらしさに、思わず笑顔になると、次に、そのピーンと垂直に伸びた長い尻尾を見て、そのままの感想を述べた。


 ミカは、南美と顔を合わせて、お互いウンとうなずくと、若葉さんに自己紹介を始めた。

「こんにちは、若葉さん。私は惑星ウラニャースという所からやってきた、誇り高きウラニャースショートヘアのミカといいます。今日は昨日に引き続き、無断で学校に来てしまって、本当にごめんなさい。実をいいますと、私の故郷ウラニャースが大変なことになっていまして、それで私は、故郷のネコ達を救ってくれるといわれる伝説の五色の魔法子猫達を探すために地球に来たのです。実は、つい昨日のことなんですが、五色の魔法子猫達の内、赤色の魔法子猫は南美で、黄色の魔法子猫は蛍だということがわかりました。それで、昨日の放課後に世界が白黒になってしまった時に、若葉さんが大丈夫だったという話を南美から聞いて、もしかしたら、若葉さんも魔法子猫かもしれないと思い、校則違反とは知りつつも、失礼は承知で、それを確かめるため、今日も学校にきてしまいました。あの、すみませんが、若葉さんは魔法子猫でしょうか?」


 若葉さんは、最初は普段通りの様子でミカの話を聞きながら、冷静にウンウンとうなずいていたが、それが徐々に不思議な表情に変化していって、その後、頭を傾げて、何か考えごとでもしているような表情になると、最後は驚いた表情に変化した。


 南美は、ミカが若葉さん相手に立派に自己紹介したことを誇らしく思いながら、若葉さんの驚いた表情を確認すると、

「若葉さん。もしかして、ミカがしゃべっていることがわかった?」

 と、聞いた。すると、若葉さんはすぐに落ち着きを取り戻し、南美の方を見ると、


「驚いた。」

 と、一言だけ言った。

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