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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第2章 『誕生??魔法少女』
25/73

25 (2-3) 誕生??魔法少女

 ひばりは、リビングのテレビが一番いいポジションで観ることができる、いつものソファの指定席に腰掛けると、テレビに注目した。そして、テレビからはしばらく関係のないCMが流れていたが、やがて待ちに待ったアニメがとうとう始まった。そう、「伝説の五色の魔法少女シリーズ」の最新シリーズである「五色の子猫の魔法少女マジカルキティ」の第一話である。アニメの主題歌が流れ始めると、耀司も洋子も万智も、家族全員がリビングに集まり出した。先ほど魔法少女の話をしていたばかりだから、やはり少しは気にはなるのだろう。アニメの主題歌では、早くも五色のうち四色の魔法少女が紹介されていた。レッドキティのナミ、イエローキティのホタル、ブルーキティのシノ、グリーンキティのミク。それから、ピンクはいつも通りシリーズの後半部分からの登場になるのだろう。


「こちらの黄色の魔法少女は、ずいぶんかわいらしい娘じゃないか。」

 アニメを観ながら、耀司がひばりに余計なことを言ってくる。


 主題歌が終わると、CMをはさんで、いよいよ本編がスタートした。

 本編をおおまかに説明すると――まず物語の舞台となるのが、日本にある架空の街、宝石市ほうせきし。そして、宝石市にある宝石女学院高校に通う日乃彩ひのいろなみが、1年生の終業式の学校への登校の途中、高校の裏庭に謎の飛行物体が落下するのを目撃する。そして終業式の後すぐに、裏庭にその飛行物体を探しに一人で向かう。そして、そこで出会ったのが、地球より遥か離れた惑星に住む、宇宙から来た子猫のミカなのであった。そして心やさしいなみは、ミカを自宅に連れて帰り、日乃彩家の家族の一員に迎えると、ミカから、彼女の故郷であるウラニャースの猫類がロボットの反乱によって滅亡の寸前にあり、科学者である両親より故郷を救ってくれるという「伝説の五色の魔法子猫マジカルキティ」の捜索を託されて地球に来たことを明かされる。そしてなみは、春休みを利用しミカと一緒に魔法子猫達の探索を行うこととなる。そして日を経るごとに、なみとミカの二人の絆は深まるも、その間魔法子猫達の手掛かりは何一つ得られず、ミカは、なみの春休みの終了と同時に日乃彩家から出ていき、一人魔法子猫達を探す旅に出ることを決意していた。そしてなみの高校2年生が始業式の日、ミカは家族全員の外出を見送ると一人家を出たが、実はミカが出ていくことをあらかじめ予想していたなみが、家の前でずっと待ち伏せしており引き留められる。その時、魔法少女を見つけた時に光ることになっているミカの首元に着けていたリボンが初めて反応し、実は、なみ自身が赤色の魔法少女レッドキティだったことが判明する。その後、なみはミカをバッグに入れて学校に向かうが大遅刻となってしまい、授業終了後、学級委員のみくに呼び出しを受ける。その間ミカを預かることになった、なみの一番の親友であるほたるは、グラウンドでミカとなみが戻ってくるのを待っていたが、その時、街全体に異変が起こり、ウラニャースからミカを連れ戻す刺客であるロボットが突然ほたる達の前に現れた。そして、ミカはロボットに捕まってしまい、ウラニャースへ連れ戻されそうになってしまうが、寸前になって、伝説の子猫の魔法少女イエローキティに覚醒したほたるによってロボットは倒され、ミカは救出された。そして、世界は再び平穏を取り戻したところで一話は終了となった。


「いきなり黄色が出ちゃったな。」と、特に感想もない耀司。

「そうね、出ちゃったみたいね。」と、耀司と同じ事を繰り返す洋子。

「まあ、そんなもんだよ。」と、冷静な万智。

「えっ!? なんで黄色が出たの?」と、一人ショックを受けているひばり。


 まさに四者四様の反応であったが、ひばり以外の三人は、ひばりが黄色の魔法少女になったからといって、アニメ伝説の五色の魔法少女シリーズに、これから黄色の魔法少女として登場することになる、などとは夢にも思っていない。まあ当然だよね、という反応である。それについてはひばりも同意見であった。では、なぜひばりはショックを受けたのだろうか? 実は、それとはまったく違う理由からであった。今までアニメで放送された伝説の五色の魔法少女シリーズは、ひばりが生まれる前の過去作を含め、全29シリーズすべてをもちろん観ているが、今までのシリーズの中で、第一話で主人公以外の魔法少女が一番最初に変身するという展開が初めてだったのである。まさに予想外のシリーズのスタートに、ひばりの機嫌は一気に回復した。


(この五色の子猫の魔法少女は絶対に名作になる。)


 ひばりは、心の中でそう確信した。それから、ひばりは自分の部屋に戻ると、しばらくはプル達仲良し三人と、第一話の感想について興奮しながらグループチャットをしていた。自分の誕生パーティーの後に、不愉快なサプライズを両親に仕掛けられたが、もうそんなことは気にならない。やがてグループチャットが終わり、少し気持ちも落ち着いてきたひばりは、突然何かを思い出したようにポケットの中をゴソゴソとあさると、先ほど耀司からもらったばかりの黄色の魔法の石を取り出した。


「は――、やっぱり黄色か…。」


 ひばりは、そう言って長いため息をついたが、何も石の色を確認するためにその石を取り出したわけではなかった。ひばりは、その石を手の平に乗せながら、じっくりと観察してみた。色には不満があるが、確かにその石は、「伝説の五色の魔法少女シリーズ」に共通して魔法少女が必ず持っていて、そしてその娘が魔法少女であるという証でもあるプレシャスストーン、略してPSにすごく似ているのだ。ひばりは、机の上に置いてあった小さな箱を取り出した。その箱は、ピンク色のワイヤレスイヤホンの充電ケースであった。そのケースを開けると、左右のイヤホンのちょうど真ん中に、桃色のプレシャスストーンが入っていた。実はこのイヤホンは、前回の第29シリーズである「五色の音色の魔法少女マジカルクインテット」で、魔法少女に変身する時に必要な変身アイテムであるイヤホンケースを模したアニメ公式のグッズであった。ひばりは、ケースに元々収納されていた桃色のプレシャスストーンを外して、黄色の魔法の石と見比べてみた。確かに形やサイズはまったくといっていいほど同じなのだが、重さや質感が全然違うのである。桃色のプレシャスストーンは、所詮はおもちゃなのでガラス製の軽量なものだったのだが、その黄色の石は何の材質なのかよくわからないが、その大きさに対して少し重すぎるように感じた。ひばりは最初その黄色の石が元々はその黄色の魔法少女版のイヤホンケースに元々入っていたグッズか何かではないかと疑ってみたが、どうもそうじゃないみたいだ。次にひばりは、黄色の魔法の石を試しにイヤホンケースにはめてみた。すると、黄色の魔法の石は、そのイヤホンケースが元々その石専用に作られた宝石箱であるかのようにピッタリと収納された。そしてその時、ケース全体が五色に派手な光りの線を描くと、魔法少女へ変身する時に流れる効果音がケースから流れ始めた。しかし、だからといってひばりは別に驚いたりしない。これは、単にケースにそういうギミックが入っているだけなのである。ひばりはイヤホンケースに再び桃色のプレシャスストーンを入れ直すと、黄色の魔法の石はとりあえず机の上に置いておいた。その後、耀司に言われた通り、六芒星の一筆書きに挑戦した。車に衝突した衝撃でワンチャン魔法少女になるよりはよっぽど安全だし、それに他に特にやることもなかったので、とりあえずやってみようと思ったのである。


「何だよ、この六芒星って! こんなの本当に一筆書きできるのか? 一筆書きにするんだったら普通の星にしてくれよ!」

 それからしばらくして、ひばりは、机のイスに腰掛けながら一人マジギレしていた。


 六芒星の意味は理解したようであるが、どうやったら一筆書きができるのかわからず、しばらくの間は悪戦苦闘していた。その後一時間くらいが経過して、何とかできるようになったみたいだが、特に変化がない。何度かやってみたが、やはり変化がない。変化がなくて正解なのか、一筆書きがうまくいっていないのか、そのどちらかさえもわからない。


「もー! 何なんだよ、コンチクショー!」

 ひばりは、魔法少女にはあるまじき言葉遣いでそう叫んだ。そしてひばりは、ものすごい時間の無駄遣いをしたという実感が湧いてきた。


「……疲れた。もう寝よ。」


 ひばりは、寝る前に、習慣であるスマホのメールを確認した。今回で一体何十回目になるのだろうか? そこには伝説の五色の魔法少女シリーズの制作会社の代表からの返信メールが返ってきていた。


 支子ひばり様

 いつも伝説の五色の魔法少女シリーズのアニメをお楽しみ頂き、誠にありがとうございます。伝説の五色の魔法少女シリーズは、長年に渡りあなたのような熱心なファンの皆様のご声援に支えられ、今年で無事に30周年を迎えることができました。

 伝説の五色の魔法少女達が、もし本当にこの地球にいるのでしたら、とても素敵なことでしょうね。私達自身は彼女達のことをまだ見たことがありませんが、もしかしたらこの世界のどこかにはきっといて、いつかあなたも出会うことがあるかもしれません。

 4月からは、伝説の五色の魔法少女シリーズの記念となる第30シリーズ「五色の子猫の魔法少女マジカルキティ」がいよいよスタートします。我々スタッフ一同もシリーズの開始に向けて、みなさんに喜んでもらえるよう現在全員が情熱をもってアニメを制作している所です。新しいシリーズも、そして新しい五色の魔法少女達のことも、きっとあなたに大好きになって頂けるものと信じております。

 これからも引き続き伝説の五色の魔法少女シリーズの応援よろしくお願いします。

                            宝箱プロダクション


 ひばりは、伝説の五色の魔法少女シリーズが始まると、定期的にアニメの問合せフォームに、魔法少女は本当にいないんですか? 実はいるんじゃないんですか? もしいるんだったらこっそり私にだけ教えてもらえませんか? という謎のメールを頻繁に送っているため、その度にアニメの制作会社より、このような定型文のメールを定期的に受け取っているのである。だが、ひばりは知らない。それゆえにアニメ制作会社の中では、ひばりはちょっとした有名人であるということに。


 ひばりは、そのメールを確認するとがっかりしたが、いつも通りの内容に少しホッとすると、部屋の明かりを消してベッドの中へと潜り込んだ。

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