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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第2章 『誕生??魔法少女』
24/73

24 (2-2) 魔法少女に憧れる少女*2

「待ちなさい! ひばり。まだ話の途中だぞ。」

 その時、父親の耀司が、ひばりに対して、少し語気を強めて叱った。

「そうですよ。人の話はよく聞くもんです。」

 母親の洋子も耀司に同調し、いつものマイペースでひばりにそう諭す。


 ひばりは、なおも強硬な態度を崩さない両親のことを解せぬ、と思いながら、不満げに再び席に着いた。両親の頑なな態度を見て、さすがのひばりも、これはネタではないな、ならばパパとママは、もしかすると私の魔法少女好きを本当に辞めさせるために、今回はネバーギブアップの精神で挑んできているのかもしれない、と思った。


(どうしよう? そんなことになったら、今日から始まる「五色の子猫の魔法少女マジカルキティ」の第一話が観れないかもしれない。そんな…伝説の五色の魔法少女は、物心がついたころから放送を見逃したことがないのに。)

 実は録画してるんだけどね。そう思いながら、これから両親に対して、どう徹底抗戦しようかと身構えていた。だが、ひばりの予想に反して、両親の話はそういう内容の話ではなかった。耀司は、ひばりが少し不満そうな表情をしているが、そんなことは特に気にした様子も見せず、


「ひばり。これは本当に冗談なんかじゃないんだ。パパも真剣に話するから、ひばりの方も最後まで真剣に聞いてほしい。」

 耀司は、ひばりに対してそう念を押すと、

「そう。それに聞いたからといって、特に何か変わるってことでもないんだから。」

 洋子は、耀司の言葉にいちいち補足を入れる。


「…わかった。」

 ひばりは、憮然としながらも両親の話を一応聞くことにした。


 その時、万智はひばり達と同席しながら、自分が部屋に戻るタイミングを完全に逸してしまったことに気づいた。


「そう言えば、どこまで言ったっけ? …そうそう、我々支子家が魔法少女の一族で、ひばりが魔法少女に選ばれたっていうところまでだったな。」

「パパ、その通りですよ。」


「そうか…。うん、実は我々支子家が魔法少女の一族だというのは本当なんだ。我々支子家は代々魔法少女の家系で、なぜかはわからないが、口頭でそのことが我々一族の間で伝承され続けているんだ。…あっ! そうだ。ママ、例のものを。」

 耀司がそう言うと、洋子は、手元に持っていた茶封筒を耀司に手渡すと、


「その証拠に…実はこの封筒の中に私達支子家が魔法少女であることを指し示す、伝説の魔法の石が入ってるんだ。ほら、ひばりも覚えてるだろ? はとこの鳩子ちゃん。ほら、ひばりが小さい頃にパパの実家に行った時に、一回会ったことがあるだろ? あの娘だよ、あの娘。それで、あの娘が実はこの前までは魔法少女だったんだよ。」

 そう言って茶封筒の中をゴソゴソと漁ると、何か石みたいなものを取り出した。


(鳩子ちゃんなんて知らないよ。そんな小さい頃のこと覚えてるわけないだろ。それに、なんで伝説の魔法の石の伝達方法が普通郵便なんだよ。)

 ひばりは、もし万が一にも自分が魔法少女になったにしても、もっとドラマチックな展開があるだろうと、まったく納得がいってなかった。そして、耀司からその魔法の石を渋々受け取り、その宝石を見てみると、


「…黄色だ。」

 ひばりが一言そうつぶやくと、耀司がそれに同意したという風に、


「そうなんだよ。黄色なんだよ、わが支子家は。」

「そう、黄色なのよ。」

 耀司がそう言うと、洋子が耀司と同じことを繰り返した。


(なんだ…黄色なんだ。もし自分が本当に魔法少女になれるんだったら、ウソでもいいから桃色がよかったな。)

 ひばりは、心の中でそう思った。


 耀司は、少し不満そうなひばりの様子など、まったく意に介さず、

「そういえば、近所の薄珊瑚うすさんごさん家があるだろ? あそこの娘のつかささん。ひばりも昔一緒によく遊んでいたからよく知ってるだろ? 実は、つかささんも魔法少女なんだ。それで薄珊瑚家は代々桃色なんだ。」

「そう、桃色なのよ。」


「えっ!? つかさが桃色?」


 この話は、ひばりにとって、自分が魔法少女であること云々以前にショックだった。幼少の頃から今に続くまで永遠の桃色推しのひばりであったが、実は幼き頃に幼馴染の五人組で魔法少女ごっこをして遊んだ時、どちらが桃色の魔法少女をするかで、つかさとケンカになったことがあったのだ。その時は、ひばりが泣き叫び、ゴネにゴネたことで、つかさも渋々桃色を譲ってくれたのだが、実はその時内心では、本当は桃色の魔法少女は自分よりつかさの方が似合っているように感じていた。だから今、つかさが桃色の魔法少女だと言われて、少し納得がいくような気持ちになった。


「つかさが桃色の魔法少女だったら、プルやミア達も魔法少女なの?」

 ひばりは、別にどうでもいいと思ったが、念のために耀司に聞いてみた。


「いや、薄珊瑚さん家が桃色なのは確かなんだけど、実はそれ以外は知らないんだ。」

「そうなの。それに、全部で何色魔法少女がいるのかもわからないのよ。」


「ふーん。それで話はもう終わり? もうそろそろ「五色の子猫の魔法少女」が始まる時間なんでテレビを観たいんだけど。」


 ひばりは、もうこの話題には興味がないといった様子で、両親にそう確認すると、耀司は、何か他に話し忘れたことがないか少し考えていたが、やがて何かを思い出すと、

「あっ、そうそう。一つ大切なことを言い忘れていた。六芒星ろくぼうせい、六芒星だ!」


「ロクボーセー?」


「そう、六芒星だ。魔法少女になるには、その魔法の石の他に六芒星が必要なんだった。正式に魔法少女になるには、その魔法の石を手に入れて、それから六芒星を空中に一筆書きをする必要があるんだ。それが終わると、ひばりは晴れて魔法少女の仲間入りだ。」

「そうそう。だから正確に言うと、ひばりはまだ魔法少女としては半人前ね。」


「…わかったよ。それじゃ部屋に戻ったら、一応書いとく。」

 ひばりは、とりあえずそう言ってみたものの、六芒星なんて一筆書きできるのだろうか?


「あっ、それと最後に言っておくけど、別に魔法少女になったからといって、魔法が使えるようにはならないし、特に何も変わらないようだから安心しろ。鳩子ちゃんもそうだったみたいだったから。まあなんにしろ、ひばりが小さい頃からなりたかった魔法少女に、形上でもなれたんだからよかったじゃないか。」

「うんうん、それに期待しないでねって言ってたでしょ?」


「うん。確かにその通りだった。」


 ひばりは、洋子の意見に激しく同意すると、魔法の石を片手に持ちながらリビングに行って、テレビの電源のスイッチを入れた。

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