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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第1話 『誕生!!魔法少女』
16/73

16 (1-15) なみの高校2年スタート★2

 なみはバックパックにミカを入れると、改めて学校へと向かった。


「なみ、私のせいで遅刻になってごめん。学校の方は大丈夫なの?」

 学校への移動の道中、ミカはなみに対して、チャックの開口部の隙間から、申し訳なさそうに小声で聞いた。


「うん。ほたるから連絡があって。新しいクラスで先生が出席を取っている時に、ほたるが私がいないのに気づいてて、それで私の名前が呼ばれた時に、「先生。日乃彩さんは今日体調不良で、少し学校に来るのが遅れます。」って、とっさに言ってくれたんだ。それで、ほたるとは2年生でもA組で同じクラスになれたんだよ。」

 なみは高校2年生を、ミカと一緒にスタートすることができたので、いつも通り笑顔一杯だ。


「そうなんだ。」

 ミカもバッグの中で、伝説の五色の魔法子猫達の捜索というほぼ実現が不可能だと思っていたミッションに、一筋の光明が差し込んできたことと、そして何よりも、これからもなみの家族と一緒に暮らすことができるといううれしさで笑顔一杯だった。なみは電車を降りると、いつもより、かなり早いペースで学校までの坂道を登っていった。なんだかんだいって、現在遅刻をしている最中であるというのは事実である。桜ももうほとんど散っちゃって地面がピンク色だね、などと下を向いて季節を楽しんでいる場合ではない。いつもなら20分程掛かる駅から学校までの坂道を今日は10分程で登って、正門まで30段程の階段を登れば学校に到着だ。始業式の方はすでに終わっていて、校内ではもう授業が始まっているようだ。


「たしか2年A組だったよね。」

 なみは、ほたるから自分のクラスはA組だと聞いていたので、下駄箱で上履きに履き替えると、2年A組の教室へと向かった。1年生の時の教室は1階だったけど、2年生の教室は2階にあった。そして教室の前まで行くと、教室の後ろの扉をそーっと開いた。すると、先生を含めクラスメイト全員の視線がなみに集中した。いつも元気一杯ななみが、体調不良で遅刻したことなんて今までなかったし、それに、休み開けに体調を崩すタイプでもない。だから、みんな心配そうになみの方を見つめていた。


「すみません! 遅刻しました。」

 それに対し、なみはいつも通り元気一杯で、数学の授業中の桜井先生に謝った。


 すると、桜井先生も、クラスメイトも、みんな「あれ?」というような変な顔をした。なみは体調不良で遅刻していると、ほたるからそう聞いていたので、みんな心配していたのに、いつも通り、というより、むしろいつも以上に元気一杯なように見える。だが、教室の中で、二人だけは違う顔をしていた。


 一人は、もちろんほたるである。なみを見ながら、あちゃーって顔をしている。

(せっかく体調不良で遅刻するって言っといたんだから、少しは調子が悪そうな演技でもしてくれたらよかったのに…)


 そしてもう一人は、教室の一番後ろに座っていた新葉しんはさんだった。なみは体調不良で遅刻していると聞いていたのに、遅刻の理由が、明らかに体調不良でないのがまるわかりだったので、不満そうで、何か言いたそうな顔をしている。


「日乃彩さん。もうわかったから早く席に着きなさい。」

 数学の桜井先生も、少し呆れた顔でなみにそう即した。なみは、自分の席がどこかわからないので、教室をキョロキョロと見回すと、すぐ近くにいたクラスメイトがなみの席を教えてくれた。なみは、自分のバックパックを教室の後ろの棚に慎重に入れると、小さな声で、


「ミカ、これから私は授業だから、私が来るまでおとなしくしてるんだよ...。でも、何かあったら、言ってくれていいからね...」


「うん…」


 そして、なみは自分の席に座ると、それからは他のクラスメイトと同じように普通に授業を受けた。自分の席は教室の右端の前の方だったので、教室全体を見渡すことはできなかったが、1年の時にクラスメイトだった女の子も、何人かいるみたいである。そして、午前の授業もつつがなく終了し、昼休みの時間となった。なみは、いつもだったら教室で机を囲んで、クラスメイトと一緒にお弁当を食べるのだが、今日は授業が終わると、棚に入れていたバックパックを大事そうに抱えると、すぐに教室の外に出ていった。すると、ほたるが自分のお弁当の入ったカバンを持って、急いでなみの後ろについていった。


「なみ。なみ、待って。」


 なみは、お昼休みになったら、どこでミカとお弁当を食べようか、それだけを考えて廊下を出たが、振り向いてほたるに気がつくと、

「あっ! ほたる、今日はごめんね。先生に私の遅刻、報告してくれて。」


「うん、それは別にいいんだけど…。もしかして、あなた、今ミカちゃんを連れてきてるの?」


「…うん、実はそうなんだ。」


「やっぱり…。なみが始業式が始まっても学校に来ないので、多分ミカちゃんのことなんだろなって思ってたから。」


「うん。それでね、どこかにミカと一緒にお弁当を食べられる場所はないかな? って探そうと思って。」


「そう。だったらいい場所があるよ。」


 ほたるの案内で、なみ達がついていったのは、学校の校舎の屋上だった。屋上に入るための扉の鍵はいつも施錠されていて立入禁止になっているはずなのだが、いつの間にか誰かに鍵を壊されたようで、ほとんどの生徒は知らないが、現在は屋上に入れるようになっていた。


「実はこの前、洋服のデザインとかを考えてて、ちょっとアイデアに煮詰まった時に、どこか気分転換になるような場所はないかなーって、学校の中を探している時に、偶然見つけたんだ。」


 ほたるがそう言って扉を開けると、三人は屋上に出た。そして、周りを見渡すと、自分達の他に、誰もいないようだったので、ようやくバックパックからミカを出して、昼食タイムとなった。だが実際は、屋上の片隅で、1年の時にクラスメイトだった遊草ゆくささんが、一人パンを食べながら、なみ達が屋上を歩いている姿を興味なさげに、ボーっと見ていたことに、三人は気づかなかった。


 なみとほたるは、お互いのお弁当を三人で分け合いっこしながら、今朝の出来事について、ほたるに話ししていた。


「そうか。ミカちゃんは、なみのお家から出て行くつもりだったんだね。私も、なみが遅刻するなんて初めてのことだったから、多分そういうことなんじゃないかって思ってた。…でも、ミカちゃんもお家にいられるようになってよかったね。」


 ほたるは、本当にうれしそうな表情で、ミカを見つめた。それから、なみの方を振り向くと、心配そうな表情で、

「でも、なみが伝説の五色の魔法子猫だったなんて…」


「魔法子猫じゃなくて、魔法少女だから。」

 なみは、ほたるにそうツッコミを入れると、ミカは、一人うーんと何やら真剣に考え事をしている。


「どうしたの?」

 なみとほたるは、ミカの方を心配そうに見た。そして、ミカは、ほたるの方をじっと見つめると、



「多分…だけど、ほたるも魔法子猫だと思う。」


「えっ? 私が?」

 ほたるは、ビックリした様子で、ミカに聞き返した。


「うん。だって、私とおしゃべりできたのって、結局なみとほたるの二人だけだったから。多分、地球上で私とおしゃべりができるのは、伝説の五色の魔法子猫達だけなんだと思う。」

 ミカは、とうとう伝説の五色の魔法子猫達を探し当てる法則を発見したのだと、そう確信した。


「でも…私とミカちゃんが近くにいた時も、全然ミカちゃんのリボンは光らなかったし。そんな…私が、まさか…」

 ほたるは、自分が魔法子猫だという自覚がまったくないのに、いきなりミカにそう断言されても、どう対応したらいいのかわからない。


「でも、私もミカとずっと一緒にいて、今まで一回もリボンが光らなかったのに、今朝、赤い石が急に光ったの。だから、ほたるの場合も、いつか何色かの石が光るかもしれない。」

 なみも、ミカが言う通り、ほたるも自分と同じ魔法少女かもしれない、というような気がしてきた。


「でも、急に魔法少女だって言われても、私、全然魔法なんて使えないし、それに私、本当に魔法少女だったら、一体どうしたらいいんだろう?」

 ほたるは、二人から自分が魔法少女である可能性があることを指摘され、少しパニックになってしまった。


「ほたる、安心して。私も、別に魔法が使えるようになったわけじゃないから。実は、ミカのリボンが光ったからといって、私自身、特に何も変わったように感じないんだ。だから、この件については、とりあえず今日学校が終わってから、私のお家で三人で一緒に考えようよ。」


「そうなんだ。なみも何もわかってないんだ。だったら、そうしようか。」


 ほたるは、なみが魔法少女になったからといって、すぐに何かが変わるわけでもないということがわかって、少しホッとした。と同時に、自分が魔法少女になることが、果たしていいことなのか、悪いことなのか、どちらが正解なのかわからず、でも、まあそれは魔法少女になってから考えるしかほかないか、と、思った。それから三人は昼食を済ますと、ほたるは、はっと何かを思い出して、バッグの中からスケッチブックを取り出した。そのスケッチブックは、ほたるが洋服やアクセサリーなどのデザインを考えている時に使用しているデッサン帳だった。中には、絵を描くのが得意なほたるが、鉛筆でデッサンした洋服などのデザイン案などが、数多く書き込まれているのをなみも知っていたが、恥ずかしがり屋のほたるが、その中身を今までなみにさえ見せたことがなかった。


「あのね、実は私、二人のお話を聞いてから、魔法子猫の一人がなみだったらいいのになって、ずっと思ってて。それで…書いてみたんだ。」


 そう言うと、ほたるは、スケッチブックの中から、一枚のデッサンを見せてくれた。そこには、鉛筆で、なみに似た女性が、魔法少女のコスチュームを着て、ミカと並んで、笑顔でジャンプしている姿が白黒で描かれてあった。そして、ミカの方はいつものミカなのだが、なみの方は白を基調とした制服に膝上のブリーフスカート、そしてロングタイツという定番に近い魔法少女のコスチュームで、ミカとお揃いのリボンを首元に着けている。コスチュームのデザインは、ほたるらしく、かわいらしさの上に、センスの良さが光っている。コスチュームのベースは白色で、それに黒色で塗られた部分が、おそらく、なみの場合だと赤色になるのだろう。ただ、魔法子猫らしく、頭の上には猫耳が、そしてスカートの後ろには、ミカのように長い尻尾が着いているのが、なみにとっては、かなり恥ずかしかった。


「…どうかな?」

 ほたるは、恥ずかしそうになみに感想を求めた。


「うん、全体的にはすごくかわいくてかっこいいんだけど。でも、猫耳と尻尾だけは却下かな。」

 なみは、ほたるにそう断言した。


 ほたるは、(むしろ、そこが一番のアクセントなのに…)と心の中で思った。


 そうこうしていると、昼休み終了の時間になってきたので、三人は教室に戻ることにした。遊草さんは、知らないうちに屋上からいなくなっていた。

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