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魔法少女っているよね ☆初期版*  作者: ににん(ni-ning)
第1話 『誕生!!魔法少女』
15/73

15 (1-14) なみの高校2年スタート★1

 春休みが終了し、今日から新年度が始まる。なみは、今日から晴れて高校2年生になる。天気は昨日から引き続きの快晴で、なみはカーテンを開けると、朝の心地よい日差しが、部屋一面に入り込んできた。なみはミカのベッドを覗き込むと、ミカはまだスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。しかし、なみが制服を着たり、髪型を整えたり、学校に行く準備をしているうちに、ミカも目が覚めた。そして、朝食をとるために、二人揃って台所へと階段を降りた。台所では、すでに朝食の準備も終わっていて、パパとママも座っていて、二人が来るのを待っていてくれていたようである。パパもママも、ミカの顔を確認すると、少しホッとしたような表情をしていた。その後、普段と変わらないように朝食をすまして、それからしばらくすると、なみが学校に行く時間がきた。


「ごめんね、ミカ。悪いけどお留守番お願いするね。私も学校が終わったらすぐに帰ってくるから。」


「うん。」


 なみは、ミカと初めて出会った時のように、ミカを彼女のバックパックの中に入れて行こうか、出かける直前まで本気で悩んでいたが、ミカを学校に連れて行くのは、そもそも校則違反だし、それに、小さいミカをバックに入れていくこと自体とても危険なことなので、最終的には断念した。


「ミカ、ママ、いってきます。」


「いってらっしゃい。」

 ミカは、ママに抱きかかえられながら、玄関のドアの前まで、なみが家を出るのを見送った。


 そして、それから1時間ほど、ミカはパパとママと一緒に過ごしたが、やがてパパとママも洋食屋へ出勤しないといけない時間になった。ミカは、なみの時と同じように、パパとママを玄関の前まで見送った。


「ミカ、悪いけどお留守番お願いね。夕方になったらなみも戻ってくると思うから、それまでお家で待っててね。」

「それとミカ。危ないから絶対お外に出ちゃダメだからな。それに、誰かが来ても絶対出ちゃダメだぞ。」


「にゃん。」


 二人は、ミカに再三そう注意すると、後ろ髪を引かれる思いで、お家を出ていった。ミカは、玄関の前で二人が家を出るのを見送ると、階段を上ってなみの部屋に入り、机の上に登って、窓から、二人が乗った車がお家から出ていくのをずっと眺めていた。


 うん、これでみんな出ていった。よし、それでは自分も出発しよう。ミカは、なみの部屋を記憶にとどめておこうと思い、ゆっくりと部屋中を見回した。自分を最初に見つけてくれたのが、なみで本当によかった。振り返ってみると、地球に降りたって、なみと出会ってから、なみの春休みが始まって、それから今朝お家を出るまで、ずっとなみと一緒だった。地球に来てからは、時々自分の家族のこと、故郷のことを思い出すこともあったけど、その時以外は、ずっと幸せだった。自分は一人っ子だったけど、なみは自分にとって、本当のお姉ちゃんみたいだった。最後に、ミカは、わざわざ自分のために春休み早々に買ってもらったベッドを見つめた。なみのパパとママが、自分のためにせっかく買ってくれたのに、もったいないことをさせちゃった。でも、なみ達がこの先、自分の代わりに新たに地球の猫を飼うようなことがあれば、有効活用できるし、そうなれば、そのうち自分のことも忘れてくれるかもしれない。ミカは名残惜しそうに、なみの部屋をゆっくりと後ずさりしながら出ていくと、それから、なみの家族と共に過ごした家中の部屋を一部屋一部屋くまなく訪問すると、各部屋をゆっくりと見返し、なみの家族との思い出を振り返った。なみのパパもママも、地球の猫類とはかけ離れた存在の宇宙猫の自分に、戸惑うこともなくすぐに打ち解けてくれて、そして家族の一員として温かく迎えてくれた。そしてパパとママは、自分とおしゃべりすることができないのに、自分のことを故郷のことを親身になって真剣に考えてくれた。それに、自分がしゃべっていることを必死に理解してくれようとしてくれた。パパにも、ママにも、そしてなみにもすごくお世話になったのに、感謝の言葉もお別れの挨拶もできないなんて、自分はなんて恩知らずな猫なんだと思った。本当は、なみにも、なみのパパとママにも、ちゃんとお別れの挨拶をして、一杯一杯ありがとうって自分の感謝の気持ちを伝えたかった。でも、なみの家族に引き留められてしまったら、自分の決心が鈍りそうな気がしたので、結局最後の最後まで、そうすることがことができなかった。それに、何かお返しができればいいんだけど、残念ながら、今の自分には、お返しするようなものが何もない。それから宇宙船についていうと、宇宙船の中に乗って世界中を移動するようなことはできない。それにこの宇宙船は、宇宙船の上に乗って移動できるような設計にもなっていない。だから、次にこの宇宙船に乗る時は、故郷に帰る時だ。だから、これからは、自分の足で世界中を歩いて、伝説の五色の魔法子猫達を探す他に道はない。申し訳ないけれど、この宇宙船は、私が伝説の五色の魔法子猫達を見つけたその時まで、なみのお家で預かってもらっておくことにしよう。そして、次になみの家族に会いに行く時は、伝説の五色の魔法子猫達と一緒に、そして、たくさんのお土産を持ってお伺いしよう。ミカはそう決心すると、リビングの窓の前まで歩いてゆき、尻尾で窓のロックを解除した。そしてドアを少し開けて窓の外に出ると、そっと窓を閉めた。それから窓の鍵に向かってうんと唸ると、魔法で窓の施錠を再びロックした。それから、家の外に向かって、ゆっくりと歩き出した。そして、家の門を何段かジャンプして、ひょいと乗り越えて外に出ると、まず左に行こうか右に行こうか、少し悩んだ。でも、どちらに行こうが、結局そんなに大差はない。じゃあとりあえず左に向かおうと決めて、左を向いて数歩歩いた時だった。


「コラ! お外に出ちゃダメって言ったでしょう!」

 ミカが向かった方向とは反対側の方向から大きな声が聞こえた。ミカが振り向くと、学生服のなみが怒った顔をして立っていた。ミカは驚いた表情で、


「えっ? 何で…」

 なみは今朝学校に行ったはずなのに、なんでここにいるんだろう?


 するとなみは、

「何でじゃないよ! ミカ、お外に出ちゃダメって言ったじゃない!」 


「…でも。」


「でもじゃないよ…ミカ、出てっちゃダメなんだから…」

 なみはそこまで言うと、涙が溢れ出してきて止まらなくなった。なみは、家族全員が外出して、お家に誰もいなくなったら、ミカは絶対に出て行ってしまうだろうと思い、学校に行ったふりをして、実は家を出てからすぐの角で待機して、ミカが出てくるのをずっと待っていた。


「でも、でも、行かなきゃ。」

 ミカの方も、ずっと我慢していたはずなのに、涙が止まらなくなってきた。


「でもじゃない。ミカ、お願い。お願いだから行かないで。」


「なみ...」


 なみは膝を曲げて座ると、両手を大きく広げた。

「おいで。」 


 すると、ミカも我慢できずに、なみの胸に飛び込んだ。


 なみはミカを抱きしめながら、

「ダメ、行っちゃダメなんだから。あなたみたいに小さくてかわいい子猫がお外に出たりしたら、絶対に誰かに捕まっちゃう。それに、お外は危ないんだよ。犬とかカラスなんかに襲われるかもしれないし。」


「でも…」


「ごめんね…。でも、あなた一人だけ行かせるわけにはいかないの。あなたは私にとって、かけがえのない大切な妹なの。だから、私が成長して大人になったら、二人で伝説の五色の魔法子猫達を探しに行こう。だから、だからね、お願いだから少し待ってほしいの。ごめんね。私、我がままばっかり言って。」


「なみ。私もなみのこと大好きだよ。私もなみのこと、お姉ちゃんだと思ってる。私、出ていきたくない。本当は、なみと、なみのパパとママとも、ずっと、ずっと一緒にいたいよ。でも…でも…」


「ごめんね、ごめんね。少しだけ待ってね。」


 二人は、目を閉じて抱き合いながら、なみは自分が伝説の五色の魔法少女だったら、ミカはなみが伝説の五色の魔法子猫だったら、と、そう二人は強く願った。すると、ミカのリボンについた五色の石のうちの赤い石が強く赤く光った。なみは目を閉じながらその光に気がつくと、そっと目を開けた。


「あれ?」


 ミカも、耳元でなみの変な声が聞こえてきたので、そっと目を開けた。

「あれ?」


 今まで何の反応も示さなかったリボンの五色の丸い石が、二人の前で初めて光ったのだ。


「どういうことなの?」

 なみは、もしかしたら、偶然にも近くに伝説の五色の魔法子猫が現れたのではないかと思い、辺りをキョロキョロと見回した。


「つまりは、」

 ミカは、なみの腕からスルッと抜け出し、地面に着地すると、


「なみが伝説の赤色の魔法子猫だったんだ。」

 驚いた表情から一変して、コホンと呼吸を整え、冷静にそう分析した。


「私が?」

 なみは驚いた様子で自分を指さした。


「うん、間違いない。なみは伝説の赤色の魔法子猫。」

 ミカは、うれしそうにそう断言した。


「でも…私だったら、魔法子猫、じゃなくて魔法少女、だね。」


 なみは、実は自分が魔法少女だったということにすごく驚いたが、それよりも、これでずっとミカと一緒にいられると思うと、すごくうれしくなった。それはミカも同じだった。二人は喜びで一杯になって再び抱き合った。そして、しばらくそのままだったが、やがて学校からミカを連れて帰った日と同じように、なみはバックパックの底にスポーツタオルを敷き詰めると、ミカはそこに入り、


「よし、それじゃ学校に行こうか。」


「うん。」


 なみは、生まれて初めての、しかも無断での大遅刻となってしまった。そしてなみは、これで晴れて赤色の魔法少女になったということなのだが、内面も、そして外見も含めて、自身に特に何の変化も感じていないようである。でも、なみの春休みが終わったら、ミカがお家から出て行ってしまうという一番の問題が、とりあえずは、これで無事に解決したようなので、そんなことはもう些細なことである。今は別に気にしない。お家に帰ってから、二人でゆっくりと調べたらいいことだ。それよりも、今は学校に急がないと。

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