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第60話 異世界転移座談会3

《パンドラの地下迷宮の世界》


■教えられること

 ・エルフ、アイアノアの太陽の加護

 ・太陽の加護を介した、地平の加護の使い方


「エルフの里の神託に従い、太陽の加護っていう地平の加護の補助に特化した能力を用いて、三月のお世話を焼いてくれる天真爛漫なエルフのお姉さん、アイアノア。エルフ特有の長く尖った耳、金髪のロングヘアーでスタイル抜群な容姿、三月の大好物セットじゃないか。妹のエルトゥリンも可愛いけど、ぼくはアイアノアのほうが好みだな。三月もそうだよね?」


「時間が無いんじゃないのかよ……。そんな無駄話してる場合か」


 残り時間が少ないのに雛月はマイペースである。

 淡く光りながら、悠長に三月の趣味嗜好を見透かして語る様子は滑稽こっけいだった。


「ごめんごめん。太陽の加護についてだけど、三月の地平の加護の力を増幅させて、成功率と完成度を飛躍的に上げてくれる。だからこそ、自分や味方に対しての付与魔法による能力向上の効果はもちろん、敵性体への高速かつ精密な洞察や、あらゆる弱体化の効果を付与することが可能になるんだ。アイアノアがあんなに親身になって色々と力になってくれようとしてるのに、邪険にしたら可哀想だぞ」


「どうあってもダンジョンに連れて行こうとして、良いようにはめられたのは俺なんだけどな……。結果的にエルフの姉さんたちとダンジョンに行く決心をしたんだからいいだろ」


「とにかく、太陽の加護に支援される地平の加護は無敵だ。三月の思いつく限りを尽くして、パンドラのダンジョンを攻略していってくれ」


 勇者としてダンジョンを往くことになってしまった、パメラの宿でのあの出来事を思い出した。

 エルフという種族の、というかアイアノアの考えを甘く見ていた結果である。


 テレビの画面には感情豊かなアイアノアが映っている。


 三月の加護に触れて興奮した顔。

 三月に塩対応をされたときの慌てた顔。

 そして、使命を引き受けてもらえて涙を浮かべる笑顔。


 出会って一日のまだまだわずかな思い出として映っては消えた。


■教えられないこと

 ・エルフ、エルトゥリンの星の加護

 ・10年前のパンドラの地下迷宮の異変

 ・勇者ミヅキの記憶喪失


「クールで野性味の溢れる白銀色の髪の妹エルフ、エルトゥリン。長い前髪から覗くじっとりした目つきで、アイアノアに負けず劣らずのスタイルとルックスの持ち主。比類なき力の顕現、星の加護を宿す結実した武力は向かうところ敵無しの怒らせると絶対に怖い、お姉ちゃん大好きの妹キャラだ」


「真面目に解説するのかふざけるのかどっちかにしろよ……」


 テレビ画面からじと目で睨んでくるエルトゥリンの顔を横目に、三月は怖々と声を潜める。


 姉に近づく不埒者ふらちものには容赦が無さそうな彼女とも、これから何らかの接点はあるのだろうか。


「星の加護については、まだまだ不明なことが多くてね。全面協力の太陽の加護とはまるで性質が違うんだ。随時、地平の加護で洞察は進めていくけど、あれの解明にはちょっと時間を要するだろうね。エルトゥリンが味方だから問題にはならないけれど、あの加護が敵対した場合、現状どう対応していいやらぼくにはとんと思いつかない」


 割と真剣な口調とトーンで雛月は言うものの、エルトゥリンが第一に思うアイアノアとの関係が良好であるなら、星の加護も実質的に味方と考えても問題は無い。


 もとより、あの鬼神の如き出鱈目でたらめな強さのエルトゥリンと敵対するなど想像したくもなかった。


 それよりも太陽の加護、星の加護、両方とも協力者の能力であるのに関わらず、地平の加護である雛月はその全容を洞察しようとしているようだ。

 その姿勢からは能力としての貪欲さがうかがえた。


「次の現状教えられないことだけど、それはずばりパンドラの地下迷宮に起こったという、10年前の異変についてだ」


 次に雛月が触れたのは、かのダンジョンが伝説の肩書きをさらに強固にした出来事であった。

 三月も当時の夜に、10年前に何があったのかに思いを馳せたものだ。


「三月も何が起こったのかを想像してくれてたみたいだけど、この件に関しても実際に三月自身で調査を進めていってもらいたい。ダンジョンだから、異変は地下で発生した何らかの地殻変動ではないか、という三月の見立ては悪くないと思う。ぼくだって何にも知らない訳じゃないけど、三月と共に解明しなければならない謎はいくつもあるんだ」


「それはさっき教えてもらえなかった、パンドラの世界の俺の記憶喪失の件と関係があるのか? 勇者もパンドラから生まれるみたいな神託だったんだから、その記憶を知ってる雛月なら異変が何なのかわかってても不思議はないんだけどな」


 三月の的確な問いに雛月は弱り顔をした。

 その様子が何を意味するのかわかっているので追求は早々に諦める。


「ごめん、微妙な回答になってしまうし、ぼくの制限に引っ掛かるから発言は控えさせて欲しい。繰り返しで悪いけれど、行き倒れていた三月の記憶喪失の件と併せて、パンドラの異変については三月の実体験によって確認してみて欲しいな」


「へいへい、わぁかったよ」


「パンドラの地下迷宮の探求の他に、キッキのお父さんの件を調査することから始めてみることをお勧めするよ。わかってるとは思うけど、キッキやパメラさんにとってはデリケートな問題だ。どう向き合って切り込んでいくかは慎重に頼むね」


「俺の心の傷をえぐっといてよく言うよ……。まぁ、了解だ」


 悪びれた困った表情で雛月はもう一度、ごめんね、と一言謝った。



《天神回戦の神々の世界》


■教えられること

 ・太陽の加護非同期下での地平の加護の精度低下

 ・天神回戦の攻略法


「パンドラの地下迷宮探索とは打って変わって、随分と物騒な異世界の物語だよね。各々陣営の盛衰や命運すべてが、天神回戦の試合の結果に掛かっている。そして、試合という名の死闘を演じる相手は本物の神様やそのしもべなんだから、いやはや三月もつくづく大変な目に遭うもんだよ」


「他人事みたいに言ってんなよな。雛月も一緒に戦ってるんだろうが」


「えっ? あっ、うんうん、そうだね。ふふっ、嬉しいな。確かにぼくも、地平の加護として三月を手助けしてはいるけれど、そんな風に思ってくれるんだ」


「むぅ……。い、いいから先に進めろ。時間ないんだろ」


 雛月の身体が溶け、放出されている光の粒子の量が明らかに増えていた。

 明滅している雛月の様子から、残された時間が少ないのだろうと感じる。


「その地平の加護としての手助けだけど、太陽の加護の支援が無いから著しく精度は落ちてしまう。単体でも十分に規格外の権能を発揮することは可能な地平の加護だけど、パンドラの地下迷宮の世界に比べて本当に何でもあり、とはいかないかもしれないから、その辺は注意して何らかの工夫をして戦い抜いてもらいたい」


「……身に染みてわかってるよ。神様や化け物を実際に相手にしてみたからな」


 三月は思い出していた。


 直撃雷ちょくげきらい銑鉄せんてつの炎でも仕留められなかった地獄の鬼の脅威。

 見下ろされ、神仏たる女神の威光で手も無く押し潰されそうになった死の恐怖。

 その女神の配下の剣の太刀筋は見ることもできないほど速く鋭かった。


 そういった手合いの猛者たちがひしめく天神回戦を勝ち抜くことは、或いは伝説のダンジョンの攻略より難易度が高いのではないだろうか。

 そのうえ、頼みの綱の地平の加護が万全ではないとするなら苦戦は必至だろう。


「だけど、勝利への光明はある。地平の加護の付与能力にて、太極天の恩寵を三月の身に宿し、敵性神族やそのシキへ対しての直接攻撃が正にそれさ。神々の世界を豊かに潤す大神の力は、転じて荒ぶる神威の裏返しでもある。太極天の力を剣に伝えて相手に叩き込む三月の戦い方はすこぶる有効だよ。三月が剣術に通じる人物だったっていうのは本当に幸運だった」


「そんなに大したもんじゃないからあんまり持ち上げるなよな。子供の頃にちょっとかじってたってだけだ……。あれだけ立ち回れたのは、きっとシキの身体能力が高かったからだと思う。正直、あの身体の軽さは最高だったな。元の身体に戻ってみて、いかに普通の人間の身体が重くて動きにくいかよくわかったよ……」


「三月もそろそろ三十路だからね。年々身体が重くなっていくのを実感できるようになるよ。人間、若さに任せて無茶が効くのはせいぜい二十代までさ、あははっ」


「うーるせえ! 俺はまだ28だ!」


 太極天の力を地平の加護の全能付与術を通じて剣等の武器に伝え、持ち前の剣術で斬りつけて太極天の名の下に調伏ちょうぶくせしめる。


 戦う相手が強く、計り知れない存在であればあるほど、地平の加護の洞察には時間を多く要する。


 よしんば洞察が完了し、その正体を明かしたところで有効な攻撃ができなければ、天神回戦での勝利は困難を極める。


 だからこそ、太極天の力を用いた戦法は現状唯一にして無二の攻略法なのだ。


「とはいえ、その必殺の決め手は最早白日の下に晒され、周知の事実となってしまった。こうなった以上、今後はいかに確実に太極の力の付与攻撃を成功させられるかどうかが課題になってくる。見えないほど速く動ける相手だったり、太極天の力に対する耐性を持つ相手と相対してしまったりした場合、必殺の決め手も役に立たなくなる可能性が高い。太極天の恩寵にあぐらをかかず、さらに技の磨きを掛けるのを怠らないことだね」


「そう言われてもな……。速すぎて見えないとか、攻撃が効かないともなると、多少の修行や鍛錬を地道にやったところで、そんな化け物たち相手にどうにもならない気がするな」


 天神回戦の初戦の相手、馬頭の牢太ろうたには太極の力が覿面てきめんに効いたお陰で勝利することができた。


 だが、夜宵との間に割って入ってきた四神のシキの一人、玄旺げんおうの身ごなしも太刀筋も、三月には捉えることはまったくもってできなかった。


 それは、他の烈火の如く乱入してきた四神のシキたちにも同様のことが言える。

 そんな相手に自分のつたない剣術を届かせることなど、はっきり言って不可能だ。


 あの夜宵とやり合うことになったとして、本当に太極の力が通用するかどうか甚だ怪しい。


 そして、三月は知らない事実だが、天眼多々良(てんがんたたら)にはもうすでに三月の力が太極天の力を引き出す自在術であることまで看破されている。


 このまま何の努力もせずに勝ち続けられるほど天神回戦はきっと甘くない。


「ぼくもそう思うよ。あんな恐ろしい正真正銘の化け物揃いの天神回戦だ。今のままじゃ、すぐに勝ちの目を失って行き詰まり、日和陣営の順位を上げていくことは不可能となるだろう。──正攻法じゃ駄目だ。三月になら、このヒントだけでも色々思いつくことがあるんじゃないかな?」


「……まぁ、また神様の世界で試合することになるんなら、考えておくよ」


 三月の消極的な態度に、雛月は意味ありげに微笑むだけでそれ以上は何も言わなかった。


■教えられないこと

 ・日和が秘密にしている朝陽との繋がり

 ・夜宵が三月を憎悪する理由


「天神回戦と神々の異世界についてだけど、他にも気になることもあっただろう? ほら、三月を生み出した創造主たる女神の日和のこととかさ」


「日和が頑なに秘密にしてる朝陽のこと、だよな」


「うんそう。結局、お預けをくらうことになっちゃったけどね。あと、三月って日和みたいな二つ結びのお団子ヘアな髪型の女の子も好みだよね。だったらぼくも今度やってみようかな」


「むぅ、朝陽の顔なら似合うかも……。って違うッ!」


 雛月の問い、三月は思い返しながら答えた。乗せられて突っ込みながら。

 隠れた自分の好みの女の子の髪型にも気付かされて、何とも気恥ずかしい。

 さておき、話は神々の世界の事情に迫る。


 シキの三月の創造主にして、天神回戦を戦っていく理由のすべてであり、現在は神通力を失い、落ちぶれてしまった訳有りの女神、日和。


 日和にはとある理由によって、試合の黒星の先に待つ、敗北の眠りを迎えることを決して許されない事情がある。


 その事情には間違いなく、三月の大切な人、神水流朝陽かみづるあさひが関わっている。


「あの女神は三月にその秘密の事情を話してもいいかどうかを迷っている。話してもらうためには試合に勝って、信頼してもらえるようにならなきゃいけない」


「雛月は、朝陽と日和の間にどんな関係性があるのか知ってるのか?」


「大まかにだけど知っているよ。日和がどういった神で、朝陽と神水流の家の出自を考えれば想像はつく、と言ったところかな」


「朝陽の家、神水流さんか……。あぁ、そうか、まぁ確かに関係ありそうだな」


 三月は在りし日の朝陽の姿と、その生家である神水流の家を思い出す。

 かつての記憶が巡り、雛月に促されなくとも心当たりを思い浮かべていた。


 地平の加護に頼る必要は無い。

 三月には昨日のことのように朝陽との思い出を、幼少の頃に遡るまで思い出すことができる。


「朝陽の双子の妹、夕緋ちゃんは懐かしいあの頃の生き証人だ。二人は三月の幼馴染なんだし、いっそ夕緋ちゃんに色々と聞いてみれば、朝陽と日和を繋ぐ何かの糸口が掴めるかもしれないね」


「うーん、夕緋ちゃん、昔のことはあんまり喋りたがらないからなぁ……」


「無理はないかもね。三月と朝陽だけじゃない、夕緋ちゃんだってあの時──」


「──雛月、その話はよしてくれ」


「ごめん。やめとくよ」


 ぴしゃり、と話を遮る三月に、雛月は素直に口をつぐんだ。


「……」


 心なしかしゅんとして見える雛月に、三月はため息混じりに言った。


「気が向いたら、夕緋ちゃんにそれとなしに聞いておくとにするよ。天神回戦の試合に勝って、日和に信じてもらえるようになればいいんだから、当面はそっちの方向で頑張ってみるよ。──もっとも、本当にあの続きがあるんならだけどな」


「続きはあるよ。もうすべては始まってしまったんだからね」


 明滅して光の粒子を発しながら、即答する雛月は神々しく見えた。

 妙な雰囲気に押し黙る三月だが、当の雛月は首を傾げ、もう一つの不明なことを口にしていた。


「それにしても、ぼくにも全然わからない不明な点が一つある。何故、そうなっているのか皆目見当がつかない」


「もしかして、日和の妹のでかい女神さんのことか?」


 何となく雛月が思い当たっていることが何かわかった。

 人格を共にしているだけあり、考えることも似るようだ。


 雛月にもわからないこと、それは日和の妹の恐ろしき女神とのやり取りである。


「うん、そうだよ。破壊の女神、夜宵。神々の時間感覚で言う、ここ最近の20年足らず、──正確には16年と6ヶ月の短期間の内に破竹の勢いで天神回戦、八百万順列一位にまで上り詰めた、現状において最強最大の神」


 雛月は食い入るように三月を見つめる。


「どうして三月はそんな厄介な神様に、あれほどの憎悪や敵愾心を向けられているんだろうね? 何をしたらあんなに嫌われるのかぼくに教えて貰いたいよ。出会うなり、いきなりぺしゃんこに潰されそうになるなんてさ。よっぽど三月がお気に召さなかったんだろうね」


「知るかよ……。俺にだってあんな癇癪持ちのヒステリー女神に恨まれるような覚えはないからな」


 三月と雛月が思い浮かべる巨大の女神、夜宵の恐ろしき怨嗟えんさの声。

 記憶を再現するテレビには、画面いっぱいに夜宵の顔が映っていた。


『……みづき、みづきぃ……。みづきィィ……!』


『お前はぁ……! 誰だぁ、何者だぁ……!? 何故こんなところにいるッ?!』


 あれは人違いでも、何かの間違いでもない。

 確実に三月個人に向けられた紛れも無い、強く深く黒い負の感情だった。


「ううっ、思い出すだけで身震いがする。最高に怖かったな、あの女神さん……」


「ぼくも同感だ。擬似人格のぼくにさえ恐怖を抱かせるなんて尋常じゃないね」


 珍しく意見が合ったように、三月と雛月は二人揃って背筋をぶるぶる震わせた。

 そして、お互い顔を見合わせ、少しだけ吹き出すみたいに笑った。


「と、まあ、夜宵が何故あんなに怒り狂っていたのかはぼくにもわからない。こうなったら、本人に直接理由を問い質すしかないかもね」


「勘弁してくれ。あんな化け物相手にコミュニケーションできる自信なんて無い」


 げんなりと渋い顔をする三月は、苦笑いする雛月を見て怪訝そうに漏らす。


「……それにしても、本当に雛月にもわからないことなんてあるんだな。地平の加護の化身だなんて言うから、何でもお見通しなのかと思ったのに」


 一瞬眉をひそめた雛月は、ゆっくりと息を吐きながら言った。

 そこには雛月という存在の意義が関係している。

 それを自ら語った。


「当然あるさ。地平の加護は全能だけど、全知じゃない。所詮はひとの作りしものだからね。ぼくの創造主もそうだったのか、或いはそう望んだのか、ぼくに情報の管理と操作の役目を与えた割にはそういう不完全な側面も持たせているようだよ。地平の加護に込められた目的遂行の強い意思とは裏腹にね」


 常軌を逸した異能力、とは一言で言うものの──。

 普通の人間でしかなかった三月に尋常ならざる権能を授けた、地平の加護という仕組み、概念。


 当然ながら、それを作り出した者が居るのだ。


「地平の加護を作った奴か……。あんなとんでもない加護をよく作れたもんだな。雛月を通じて、そいつは俺に何をさせたいんだろうな……。いきなり、こんな訳のわからん異世界召喚もどきに俺を巻き込みやがって」


「くすくす、そこは潔く諦めて、ぼくに付き合ってもらいたいな。まだまだ三月の物語は始まったばかりなんだから」


 と、そこまで言ったところで、ぱっとひときわ大きく光が弾けた。

 雛月はその姿を無数の光の粒子に変えて、部屋中に飛び散ってしまう。


 どうやら本当に黄龍氣なるエネルギーが底を尽き、人格と化身の身体を維持できなくなったようである。


「ひ、雛月っ?!」


 慌てて三月は部屋中に散らばった光の粒を見回した。

 光の群れはもう一度だけ集束し、玄関の前で形を再構成する。


 手を後ろに組み、少しだけこちらを振り向いた雛月の後ろ姿がそこにあった。

 ふわり、とボブカットの髪とプリーツスカートの裾が揺れる。



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