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竜に喰われてやり直し  作者: 木戸陣之助
第三章 再会と別れ
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第14話 生まれた理由

 廃墟の入口に立つと、勝手にドアが開いて薄暗い部屋に明かりが一つ一つ灯される。

 そうして現れたのはメタリックで殺風景な部屋。最低限の彩なんて植木鉢の観葉植物くらい。しかも外で見るものよりずっと緑っぽく不自然。

 なんで腐ってないの、これ。


「この勝手に開いたやつも機械ですか?」


「はい。人感センサーというもので、体温を検知して一定の条件を満たせば自動で開く仕組みです。先ほどの入口にあったものは、どうやら人の体温を検知すると開くようですね」


 これも幻聴さんの言っていた過去の遺産か? 全部自動じゃん、俺んちも手伝ってよ。


「あ、救世主様。これ、見てください!!」


 指さす先を見てみると、机の上に何本かの導線がぐちゃぐちゃに付けられた長方形のケースが置かれていた。


「何です? これ」


「コンピュータです!!」


「こんぴゅーた?」


「そう!! この中身には色々な情報が入っているかもしれないんですよ!!」


 色々って何ですかと聞いたら、色々です!! とご回答。雑か。

 折角深掘りしようとしたら、もう俺を忘れて夢中になってるし。とはいえ、正直その方がありがたいのも事実。話を振られても知らないっす。しか言えないし、そもそも説明されても意味わからん用語ばっかりなので、話しかけられない方が何倍も気楽なのは確か。


 というわけで。

 わたし、にげます。


 そろっと離れて周辺散策にしけこむ。うん、何もない。鉄製の長机と椅子が少々。あとはドアがいくつかある位か?

 試しに全てのドア前に立ってみると、やはりどれも自動で開き部屋に繋がっていた。殺風景なのは変わりなかったが。


「机くらいしかないな。何のための部屋だ?」


『当時の収納好きが良くやる様式よ。何もないように見せておいて装置を起動させると全部表に出るわ』


「そういう奴? ってことはその装置を探せば?」


『そういう事』


 今度は机の裏をチェック。おお、いきなりヒット。機械(マシン)によく付いているスイッチとかいうやつだ。出っ張った部位を押せば何か起きるかもしれん。


「それでは押してみよう。ポチっとな」


 ガシャン、ガシャン、ガシャンガシャンガシャン!!


「な、何だ!?」


 壁という壁がガバッと開き、機械でできた腕がわらわらと登場。呆気に取られている間に次々とモノが置かれていく。

 空っぽの部屋は気づけば、女の子のお人形やうさぎ等の動物をモチーフにしたかわいいぬいぐるみ達でとっ散らかっていた。天井は胸が強調された女性の壁紙でびっしり埋まっている。


「きもっ」


『相当な趣味をお持ちだったようね』


 こんなんだったら押さなければよかった。正直他の部屋もそうだったらさすがに引くぞ。ずっと見るのは(こた)えると判断し、もう一度スイッチを押してみる。すると、さっきの腕たちが人形や壁紙を一瞬でひったくっていき、きもい光景が嘘みたいに殺風景な部屋へ戻ってしまった。


「これに似たスイッチもあんのかな」


『探してみる余地は、ありそうね』


 幻聴さんが詳しいってことは、いよいよ話に真実味が増したわけだ。面白くなってきたんじゃないか。……ごめん、嘘。ちゃんとげんなりしてる。

 ひとり茶番はそこそこに、他にスイッチが無いか視界を生体感知に切り替えて再確認。


 うーん、反応ないな。

 動いている奴じゃないから効果ないか。ちょっと構成をいじれば何とかなるか?


 検知対象を物体の動きから熱へ変更。熱反応が強いほど赤く、そうでなければ青くなるよう調整。そうして完成した毒を散布。あっという間に何もない部屋にぼうっと色が付きだした。


 薄いオレンジ色が全体に広がると、その中にぽつぽつと真っ赤な斑点や、逆に真っ青な領域が出現。電撃ってすげー熱が出るからな。機械(マシン)って電力を使うし、人感センサーを応用できればワンチャン、と思い試してみたらうまくハマった。やったぜ。


『モノにしてきたわね』


「毒って概念、もはやどこに行ったって感じだけどな」


 浸食って要素を満たせば、わりと何でもアリ。相変わらず末恐ろしい能力だ。

 蛇の叡智(アクレピオス)様に感謝しながら、うっすらと赤く光る出入口付近に近づいてみる。


「何もないじゃん」


『その色に直接触れてみなさい』


 言われた通りにそうしてみると、薄い光が流れるように発射。隠された操作パネルがゆっくりと姿を見せた。


「何個か押せるボタンがある。テキトーに押していいのか? ちょっと怖いな」


『パスワードが必要ね』


「ぱすわーど? なにそれ」


『鍵みたいなものね。そのパネルで指定された文字を入力すると鍵が開く。きっとどこかにあるはずよ、探してみなさい』


「マジで詳しいな、幻聴さん。ひょっとして、さっきの部屋って……?」


『そんなわけないじゃない』


 あっそう。


 見える熱反応に片っ端から触れていく。スカもあったが、その内のいくつかには隠しパネルが見つかった。が、パスワードらしきものとは無縁なものが多く、殆どがゲテモノ趣味の隠ぺいに使う操作パネルだった。ここに住んでいた奴らも色々抱えてたんだろうか。いつの時代もストレス社会ってことだね。

 そんなこんなでしらみつぶしに探すこと数時間。ついに、俺達は目的のブツを見つける。


「これか?」


 見つけたのは1枚の透明なプレート。やはり俺の知っている文字では書かれていない。ええと、どれどれ。


「神となりて全て知り、全て(あた)う――プロジェクト・ユピテル」


 何だこれ。幻聴さん知ってる?

 今回も幻聴さんならさらっと豆知識を教えてくれると思っていた。そんな期待が嘘みたいに回答を渋った。


 幻聴さんは蛇の叡智(アクレピオス)のサポート。俺の知らない知識を持っていることしか知らない。その知識がどこから生まれ、何のためにその役割を全うしているのか。そんなこと考えたこともなかった。


 何かが生まれるのは必ず目的がある。

 教育の目的は、人間の能力を底上げして国の繁栄を促す為。

 親が子を産むのは種の存続の為。

 蛇の叡智(アクレピオス)も例外ではない。

 それが存在するということは、必ず何かしらの理由があるということ。


 身に付けた強大な力に自惚れて、蛇の叡智(アクレピオス)が生まれた理由を知ろうともしなかった。

 そんな俺の現実逃避は、この日を境に終わりを告げる。


 応えは。


『愚か者め』

いつも閲覧頂き誠にありがとうございます!!


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