第6話 城の外の世界
「集落にいってみないか?」
竜が部屋から出ていってしばらくした後、今度はまおうサマが尋ねて来た。
……あまり外に出たい気分じゃないんだよな。けど、今後を考えると行かない手はない。
「ずっと部屋に籠っていると、干物になるぞ?」
そう言われて気づいた。
俺、アイツと話して三日間外に出てなかったんだ。
「……そうですよね。申し訳ないです、ずっとお邪魔してしまって。お金は払いますんで」
「そういうことではない、キサマが心配なのだ。ほれ、顔を見てみろ」
まおうサマが手鏡を手渡してくれた。鏡を見てみると、まあ酷い顔だった。隈も出てるし、金に染めた髪もボサボサ。
お前病人? って聞かれてもおかしくない。
「清算したつもりなのに、まだわだかまりがあるんだろう?」
何も言い返せない。図星だ。
黙ることしか出来ない俺に、まおうサマはそっと寄り添う。
「時間が解決してくれることもある。たまには何も考えず陽の光を浴びてみろ」
「……わかりました。ありがとうございます」
折角の厚意、無駄にするのも申し訳ない。ここはお言葉に甘えるとしよう。
俺は外出の許可をもらうことにした。
まおうサマから顔隠し用の布マスクと、この辺りの地図を手渡され、城内の近衛兵さんたちが城の入口まで案内してくれた。
そして、最寄りの街までの道を軽くおしえてもらい、まおうサマたちに手を振られながら俺は魔王城を後にした。
外を出ると、日光のおかげか少しだけ暖かい。
旅でよく使う軽装の鎧と羽織る物しか着てないけど、これくらいならどうにかなりそうだ。
「夜って寒くなるのかな」
そこで気づく。俺、服以外丸腰。
荷物、なし。
「こんな状態で知らない土地を歩くって、相当バカなんじゃないかな、俺」
しょうもない反省をしながら、地図に従って先を進む。目指すは先ほど教えてもらった一つ目の集落だ。
地図を頼りにデコボコの土道を歩いていると、さっそく見たことのない植物が見つかった。
道の両脇には、雲を突き抜けて、てっぺんが見えなくなるまで伸びる木もあれば、地面の真上に実を乗せてその周りに花を咲かせている植物もある。
星型の実とかそういう見たことのない植物たちが集まりに集まって、もはや別世界だった。
さっきの森みたいな場所を通り抜けて、また道なりに歩いていくと今度は砂漠みたいに場所にたどり着いた。
昔の建物かな。石でできた巨大な塔が砂漠に対してナナメに突き刺さっている。
「見たことない建物の形だな」
縦に伸びる金属の棒が塔の上に立っていて、隣にはお皿みたいに真ん中が少しくぼんだ円盤がくっつけられている。
その円盤の下には、何本もの金属がバッテンの形で組み合わさって、ようやく一つの塔が出来上がってるらしかった。
他にも、窓がいくつも並んで屋根が平面になっている巨大な建物など、変な形をした建築物がちらほら見つかった。
中には砂漠に埋もれて屋根しか見えなくなっているものもあって、この場所は何十年も昔からそういう環境なんだなって思い知らされた。
まおうサマはこの建物たちがこうなる前から生きてたのかな。
もし、そうならちょっと同情する。
それからも似たような景色が続き、広い砂漠を抜けていく。
地図が無かったらこれ確実に迷っていただろうな。まおうサマに感謝。
その時
「キィイイイイイイイイイイイイイイ!!」
砂に埋もれたある建物の上に、真っ黒で巨大な鳥らしき魔物がやってきた。
一度だけ俺をちらっと見ると、ぷいっとそっぽを向き、屋根の上で何かし始める。
あれは……餌をやってるのか?
よく見ると、そいつは親らしかった。魔物の下で、同じく真っ黒で小さな魔物たちが口を開けてピーピー鳴いている。
そいつらにどこかから取って来た生き物の肉を渡してやっていた。
魔物にもああいった生活があるんだよな。
昔旅に出ていた時は、余裕が無くてそういった光景に関心が向けられなかった。
ただ、やるべきことを探して、解決しての繰り返し。
辺りをもう一度見回す。
すると、空を飛び交う角の生えた鳥や、地に伏せて眠りにつく狼の群れなど、どうやらいろいろな生き物がここで生活しているらしかった。
こんなよくあるだろうシーンに俺は少しだけ胸が高鳴っていた。
昔にくらべて、いろいろなものが見れるようになった気がしたんだ。
「あの頃に比べたら、マシなのかもな」
つぶやきは、砂を纏う風と共に消えていった。
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