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竜に喰われてやり直し  作者: 木戸陣之助
第三章 再会と別れ
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第1話 俺氏、かつての仲間に出くわす

 魔王は心底イライラしていた。

 

 色々なうっぷんが思い浮かぶが、九割はあの自由奔放なポンコツ竜のせい。

 散々わがままし放題、自分の臣下をこき使ったかと思えば、貸し出してやった部屋を散らかしまくって城からいなくなった。


 置手紙には『ちょっと外へ出る! 寂しいと思うが少し我慢しろ!』と、殴り書き。

 そして、本日側近から受け取った手紙には『ちょっと相談したいことがある、座して待て!』と書いてあった。


 本当なら地の果てまで追い詰めて燃やしてやりたいところだが、隣で手綱(たづな)を引いている苦労人の友人を思い出すと、この程度些細な問題だとぐっと堪えた。


 決して悪い事ばかりじゃないことは自覚している。

 数千年生きてきて初めて、目を見張る人間が現れたのだから。

 

 彼は本当に知恵が周り勝負勘もある。そしてどこまでも仲間や家族を大事にする。

 振り回されがちなのが玉に瑕だが、あの竜をコントロール出来ている時点でとんでもなく有能だ。

 

 そんな友人、キールは魔王ですら信じられないスピードで強くなっていった。

 

 始めは互角に渡り合えていたが、あの忌まわしき城で開花してからは自分と同じ位の強さを持つ先代魔王を圧倒し、戦意喪失まで追いやる程にまで成長した。

 夢幻技術(オリジナル・スキル)なるものの異常性もあるかもしれないが、魔王の分析では彼自身の適応力も人並みから外れているを感じていた。


 魔王ですら究極技術アルティメット・スキルの紫焔を使いこなすまで何十年もかかったというのに、それを彼は手に入れたスキルをたった数日で自分のものにしてしまったのだ。


 彼の成長スピードに興味が湧いて仕方ない。

 というより、欲を言えば早く魔王軍に入って欲しい。あんな逸材、誰も放っておくわけがない。


 それに青年は自分が持っていた先入観をことごとく壊していった。

 彼や、彼が見せてくれた世界に、ひょっとすると人間も捨てたものじゃないのか、そう思ってしまったのだ。


 だからこそ。

 

 こんなにもレベルの低い戦いを見せられて、魔王は心底がっかりしていた。

 

「こんなものか」


 眠たげにあくびをしながら告げる魔王。

 その相手である冒険者らはこの魔王の力に全く歯が立たず、苦い顔をしていた。


「バ、バケモノめっ……」


 冒険者筆頭が悪態をつく。

 ただ、それは無理もないのかもしれない。

 はたから見たら必ずこう思う程度には、実力差がハッキリと出てしまっていたのだから。


 奇しくもそれは、魔王の口によって明かされた。


「場違いだ。弱すぎる」


 そう、さっきからこの冒険者の攻撃は魔王にかすり傷一つも与えられていない。

 それどころか、小手調べにと用意した障壁すら壊せない。外野からすれば何故ここに来たのかと問われてもおかしくない現状。


 それでも冒険者たちは己を鼓舞しながら再び魔王を睨みつける。


「お前達魔族のせいで多くの人間が死んだ。たとえその力に歴然とした差があろうと――」


 筆頭の男は、自らの大剣に炎を纏わせた。

 それは、これまでいかなる敵も切り落としてきた必殺技。

 どんなに苦しい状況に追い込まれても、この技と仲間を信じたからここまでこれた。


 男はこの剣に絶対的自信を持っていた。


「ーーこの剣で貴様を倒すッ!」


 纏っていた炎はより火力を高め、剣先が見えなくなるほど強大なものになっていった。

 そのまま剣を横に倒し、障壁へと突っ込む。

 

 それに続き、残りの二人も武器を掲げた。

 一人は魔法使い、もう一人は回復術士といったところか。

 場内に二つの巨大な魔法陣が展開されると、そこから十字架状の光と無数の電流を帯びた黒い渦が生まれる。

 それは魔王城の天井まで広がり、並みの人間が触れてしまえば一瞬で燃えカスになる程の熱量だ。


「わたしたちも……」


「続くッ!!」

 

 魔法が発動された。

 瞬間、二つの巨大な光と闇は魔王とその障壁を飲み込もうと襲い掛かる――


 

「うむ、つまらん」


 

 魔王は手を軽く一振りすると、障壁から嵐のような突風が吹き荒れた。

 かと思えば、前のめりで突進した勇者一向は紙切れのようにあっさり吹き飛ばされてしまった。圧倒する程の圧力を持っていた最強の技なるものもあっさり無力化される始末。

 突風をもろに受けた二人はそのまま城の壁に叩きつけられ気絶、戦える人間は運よく衝突を免れた筆頭一人になってしまった。


「ぐっ……まだ、だ」


 剣を杖に立ち上がる勇者。

 それは触れてしまえばすぐに崩れそうな程もろく見えた。


「こ、ここで倒れる訳には……」


 最後の力を振り絞ったのだろうか。再び、剣に炎を纏い愚直に飛び込んでくる。

 人はそれを根性と呼び、場所が場所なら讃えていたのかもしれない。


 だが、この時魔王は心底うんざりしていた。

 これが奴の(かたき)でなかったらとっとと追い出しているというのに、この面白くもない茶番にずっと付き合わされているのだ。


 もう早く来てくれないか、とうずうずしっ放しだった。

 ぐぬぬと唸ったり小刻みに貧乏ゆすりする姿に、側近は思わず苦笑する。

 

 魔王はずっと時間稼ぎをしていたのだ。

 何時間も手加減しては引き延ばして、諦めそうになったらダメージを喰らったふりをしたり。

 引き留める為だけに、あらゆる手段を行使した。


 全てはこの目的の為に。


 早く来い、早く来い。今か今かと待つ。

 その時、魔王城の扉がバァーンと勢いよく開いた。


「帰ったぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「お、おじゃまします」


 威勢よくズカズカと現れたポンコツ竜に、後に続くご主人。あとは、見かけなかった女子(おなご)が一人。


「すみません、突然お邪魔してしまって」


 申し訳なさそうに頭を下げる竜の主人に、魔王はさっきの不機嫌はどこへやら満面の笑みで出迎えた。


「待ってたぞ!」


「え、まおうサマ。滅茶苦茶上機嫌ですね、どうしたんです?」


「そうなのだ、聞いてくれキールよ。ワレは貴様にこの上ない愉快なプレゼントを贈りたくてな! アレを見よ!」


 そう言って魔王の指さした先にキールが目を向けると、時が止まったように固まってしまった。

 無理はない。かつて共に旅をし、裏切ったご一行が見るも無残な姿で倒れていたのだ。


 のんびりした空気は一瞬で息もしずらくなる程張り詰めたものに。

 この時、魔王は初代魔王と対峙した時を思い出す位、もの凄く緊張していた。

 

「まおうサマ……」


「な、なんだ!?」


 喜ぶと思ったんだが!?

 思わぬ事態にかなりビビってしまう魔王様。

 そんなピンチの魔王様を知ってか知らずか、キールは並々ならぬ威圧感を纏って魔王へと振り返る。


 そして――

 

「グッジョブ!!」


「うむ!!」


 二人は厚く抱擁を交わした。

 魔王は死ぬほどほっとした。

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