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竜に喰われてやり直し  作者: 木戸陣之助
第二章 敵を知る
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第10話 結成、チーム・ニア

 翌日。


 ニアに無理やり連れられやってきた場所はギルド、ターミナミア支部。のこのこと姿を見せた俺に、受付嬢さんは盛大に溜息を吐いた。


「呆れた」


「へへん」


 したり顔のニア、我関せずの竜、またしても何も知らない俺。

 いや、ある程度苦労は察した。

 受付嬢さん、お勤めご苦労様ですっ。


 心の中で軽く敬礼する俺をよそに、ニアはカウンターへと突っ込んで身を乗り出した。


「お兄ちゃんを私のチームに参加させてください!!」


 意気揚々にそう宣言。

 ギルドの連中がざわつき始める。


「あのルーキーが勧誘した?」


「ルーキーが勧誘した奴ってひょっとして……」


「あの黒髪の子、タイプだわ。良い雄じゃない」


 やっちまった。慌てて口を塞ごうとするが時すでに遅し。

 皆口を揃えて俺を指さしている。あと最後のオッサン、お前は本当こっちみんな。目線が嫌らしいんだよ。


 中にはかつて俺を小馬鹿にして来た面々も居て、物凄く怪訝そうな顔でこちらを睨み付けてきた。

 気持ちはわかる。死亡届の名簿って誰でも見れるからな。待っても帰って来ない仲間の身を案じたり、不幸がない事を確認する等、理由は様々。


 で、その死んだはずの俺がぼっ立ちかましてる訳だ。

 何故ここにいる、そう思うのも不思議じゃない。


 後はあれだ。俺が能力値的に悪い意味で目立つ人間だったから、無駄に不安を煽ってるのかもしれない。コイツ幽霊なんじゃないかとか思ってそう。皆顔曇ってるし。


 まあ、そんな一般クエスト民や、大人の事情なんて眼中にないだろう。ニアは大衆の前で俺を指差して仲間にする、と進言しちまった。

 それを見た顔面蒼白の受付嬢さん。すぐさま俺の元まですっ飛んで来て、キレ気味に「何があった」と耳打ちしてきた。


「すみません、言う前に先手打たれちゃった感じです」


「バカ!! 貴方死んだことになってるのよ!? もし事情を知ってる奴がいたらどうなるか。ああ、もう何も見たくない……」


「はは、胃薬あげましょうか?」


「いらないわよっ!!」


「あの、受付嬢さん? この人仲間に入れたいんですけど大丈夫ですか!?」


 有無を言わせまいと詰め寄るニア。

 その剣幕に当てられた受付嬢さんは、わなわなと拳を握り、


「ああ、もう!! もっかい裏へ集合!!」


 ニアに負けない迫真の表情で俺達をカウンター裏へ連れ出した。その貫禄ある制服姿から胃薬が2、3本はみ出ているのを目撃。


 ……いや、ほんとすみません。悪気はないんです。



 場所は変わって、一昨日俺が連れだされたカウンター裏。

 受付嬢さんは俺の安い慰め等宛にならない程に怒り心頭。どこかの騎士団長みたいな怒号を発すると、本能的に生態系ピラミッドを理解したのか、俺の体はいつの間にか正座でかしこまっていた。


「話を元に戻すけど、貴方自分が何やってるかわかってるの?」


「いや、無理矢理連れられてですね……」


「どうせ旅をやめるつもりはなかったんでしょ?」


「それはそうですね」


「少しは否定しなさいよッ!」


 頭を抱える受付嬢さん。見た目だけの竜と違って正真正銘クールが売りと噂のこの人が、こんなに取り乱すとは思いもしなかった。


 帰って来てから人の知らない一面ばっかに出くわすなあ。

 まあ、しょうがないのかもしれない。あの時の俺は、戦争を無くすこと以外何も考えられてなかったし。


 あの頃は大変だったもんなー、とか呑気なことを考えていると、ニアがまたしても空気をぶち抜いた。


「お兄ちゃんをスカウトしたいんだけど、どう手続きをすればいいんですか?」


「……本当、貴方たちって兄妹なのね」


「え、何がですか?」


 平常運転の俺らに根負けしたのか、受付嬢さんは「もういいです」と項垂れた後、そっと机に一枚の用紙を差し出した。


「これがパーティ承諾書。そこの兄、使い方はわかるわよね?」


「アッハイ」


「そういう訳だから貴方のお兄さんにレクチャーしてもらった後、これを書いて私に出して」


「ありがとうございま~す」


 嬉々とした顔でニアは書類を埋めていく。

 ハァー……ッ、とドデカい溜息をつく受付嬢さん。


「で。アレは話さないつもり?」


 射殺すような視線に、勝手に背筋が伸びる。

 そうだ、また旅を続けるにあたって大事なこと。

 このまま黙って旅に付き添うのか、それとも身の上話を全て話して復讐を考えるか。


 何日も考えたけど、答えはやはり変わらない。


「はい、話すつもりはありません。アイツの旅に俺の過去は関係ない」


「いずれバレるかもしれないわよ? 貴方、よく自分の事過少評価するけど、その道では名の知れた冒険者な訳だし」


「人気者の自覚はないですが、きっとその時は来るかもしれないですね」


 でも。


 その過去は俺が伝える事じゃない。

 自分の目で見て、肌で感じて、耳で聞いて、判断する。

 ニアは始めからその目的で旅を始めるんだ。俺がニアの人生を邪魔してはいけない。


「あの子も言ってたわ。今まで人任せだったから、今度は全部自分がやるって。あぁ、どうして気づかなかったのかしら。こんな似た者同士の兄妹、知っていたらここで引き受ける事はしなかったのに」


「はは、これからもお世話になります」


「本当、勘弁してよね。死ぬなんて許さないから」


 呆れを交えつつも、彼女はどこか嬉しそうだった。

 それだけじゃない。新しい戸籍にいくつかの変装セットまで用意してくれた。ギルドカードも一から作ってくれたらしい。


 つまり、これで俺はまた冒険者になれる。


 そして、


「全部、書いたわ。これが最後よね」


 ニアは俺の前へ手を差し出す。


「冒険者キール。あたしの仲間になって」


 旅に出る前は子供らしさもあった。俺の記憶では気丈ではあったけど、どこか寂しがりの一面もある妹だった。

 けど不思議かな。あどけなさはまだあるけど、そこに映るのは一人の立派な冒険者だった。


 彼女の作る未来、そして俺が目指す未来を掴み、それを形にするように――


「喜んで」


 握手を交わした。


「ありがとう、お兄ちゃん」


「ワシもチームメンバーだぞ!! まさか忘れてないだろうな?」


「忘れてない、忘れてない」


「よろしくね、ムーちゃん」


「おう!!」


 互いに握手を交わすことで、また俺はパーティを組むことになった。

 それが妹になるだなんて、思いもしなかった。


 でも、折角の機会が与えられてる以上、今度は俺が二人を守ることにするよ。

 それでもう、お前らとはお別れだ。


 さらばだ、過去の記憶(おまえら)

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