であい、その三。
階段を下りた先には、一つの扉があった。
「この先には、君のような、魔物使いになりたての人と、魔物をペットとして飼いたい人向けの魔物がいるんだ」
そう言いながら、クルーパーは扉の鍵を開ける。
「基本的に安全な魔物達だけれど、なるべく檻と箱には触れないようにしてね」
レイモンドはうなずいた。
そして、鍵が外れ、扉が開かれる。
中には、様々な魔物が居た。
角が頭に生えた人型の魔物。
丸く転がっている小型の魔物。
羽根が綺麗な鳥の魔物。
水の中を泳ぐ鋭い目の魔物。
レイモンドはクルーパーの後をついていきながら、魔物を見て目を輝かせていた。
「すごい!こんなにいっぱい魔物がいるなんて!」
「そうだろう。でも、まだまだいるよ。この店の魔物の多くはここにいるからね」
そのまま進んでいくと、鳥の魔物が多くいるところに入った。
鳥達は眠っているものが大半だった。
レイモンドが首をかしげると、クルーパーはそれに気づいたのか、話し始めた。
「はは、今は遅い時間だからね。鳥の魔物は寝ているものだよ」
「そうなんですか」
「はは、後、この中におすすめが居てね」
クルーパーは手前の鳥の魔物を指し示した。
それは、入り口の近くにもいた、羽根の綺麗なものだった。
「あの魔物は人になつきやすくてね。それで中々扱いやすいんだ。」
「あ、知ってます。姉が最初に選んだ魔物ですから」
「はは、そうだったね」
先に進む。そこには人型の魔物が多くいた。
恐ろしい形相の魔物もいるが、隣にいる仲間と遊んでいるように見えた。
「次のおすすめはあの魔物だね。角が生えているから、探索の斥候とかに向いているんだよ」
これも入り口の近くにいた魔物だった。
「これは兄が選んだ魔物ですね」
「はは、被ったからってなんだってわけではないよ」
「それはそうなんですが」
とにかくレイモンドは気に入ってはいないようだった。
クルーパーはそれを見て、進む方向を変えた。
進んだ先には、見るからにかわいらしい魔物がたくさんいた。
「クルーパー、ここは…」
「フリダンカさん、大丈夫だよ。レイモンドさん、ここにはよくペットとして扱われている魔物がたくさんいるんだ」
簡単に言えば猫、犬のような魔物だ。
「確かに、時々見る魔物が結構いますね」
「でも、目当てはこの先だよ」
さらに進んでいくと、そこにはふにゃっとした魔物がたくさんいた。彼らは、とにかくふにゃふにゃしていた。
「これは、スライムですか」
レイモンドは淡々と言った。
「そう、スライムだ。よく貴族御用達の魔物と言われているよ。でもね」
クルーパーは、手前の箱からスライムを取り出した。
「実は初心者向けでもあるんだよ。なんたってスライムの一番の強みはその体の頑丈さ。どんな魔物の直接的な攻撃だとしても、受け流してしまうんだ。しかも愛らしいだろう?」
レイモンドは頷いた。
「はは、おすすめはこの三種類かな。他でもいいし、見てみたくなったら言ってね」
その言葉を聞いたレイモンドは、悩み始めた。
姉と同じ鳥の魔物か。
兄と同じ人型の魔物か。
クルーパーが推すスライムか。
はたまた違う魔物か。
悩んで、悩んで、その先に、
光を見た。
正確に言えば、光が見えた。
レイモンドの目線の先、何も無いような空の箱。
そこに彼は、なにかを感じた。
「クルーパーさん、少し向こうを見に行っていいですか」
「いいよ。後ろからついていくからね」
レイモンドは光を見つけたところに向かっていく。
真っ直ぐに。導かれるように。
そして、そこには、
「何も、いない…?」
何も居なかった。
(追記)
一箇所致命的な矛盾があるのに気付いたため修正しました。