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おつかい、その四。

 屋台の奥にある扉だけの玄関を通り、進んでいくと少し広めの空間が広がっていた。

 その中には小奇麗にまとめられた荷物が並んでいて、中央には机と椅子が並んでいた。

 そんな机のそばに、一人の小さな女の子が座っていた。手元には「英雄伝」と書かれた本を持っている。退屈なのか、足をぶらつかせ、頬杖をついていた。


「お父さん、もう仕事終わったの?わたし、ごはん食べたい」


 足音に気付き、その女の子がレイモンドの方を向く。


「あ!」


 女の子は驚いて、声を上げる。

 そのままレイモンドの元へ走って来た。

 そして目の前で止まる。


「ランド兄ちゃん!久しぶり!」


 女の子は、元気よくにこやかにあいさつした。


「久しぶり、リン」


 レイモンドは、女の子の元気の良さに惹かれるように、言葉を返す。

 ノーは肩の上で軽く揺れていた。


「今日はなんでここにきたの?」


「グリスピーフィッシュを買いに来たんだ、母上の教えをこなすためにね」


「教えって、もしかして兄ちゃん魔物使いになったの?兄ちゃんの魔物どこどこ、見せて!」


 リンは、目を輝かせながらレイモンドの周りを見回す。


「あ、いた!肩にのってるそのぷにぷにだ!」


 見つけたとたん、目にもとまらぬ速さでノーを掴み、自らの方へ引き寄せた。

 持っていた本が、床に落ちて大きな音を立てる。

 そのままリンはノーを抱きしめた。


「透明で綺麗!ぷにぷにしてる!かわいい!ぷにぷにー!」


「本を床に落としちゃだめだよ、リン」


 レイモンドは落ちた本を拾いつつ、リンに注意をする。

 一方リンは、そんなのお構いなしに、ノーの身体を、ぷにゃりとしたスライム特有の弾力を楽しみつつ、撫でまわしていた。


「ねえねえ、このぷにぷになんていう名前なの?」


 リンは、ノーの抵抗がないのを良しとしたのか、身体が伸びないか試しながら、レイモンドに尋ねる。


「その前にノーを伸ばそうとするのはやめてほしいな」


「ノーちゃんなんだ。よろしくね、ノーちゃん!」


 流石に伸びなかったようで、あきらめて素直に愛でる。


「あー、かわいいなあ。私もノーちゃんみたいなぷにぷにとお友達になりたい!」


「リンも魔物使いになりたいの?」


「うん、なりたい!それで、美人でとっても強い探索者になって、有名になって、それでシャント様と結婚するの!」


 リンは屈託のない笑顔でそう言った。


「そっか、リンは兄上のこと大好きだもんね」


「うん、大好きだよ!お父さんより好き!」


 リンは真っ直ぐな瞳で、父親であるクラントが聞いたら卒倒しそうなことを言い張った。


「そうだ!ランド兄ちゃん、ノーちゃんといつも何してるかお話聞かせて!もちろんシャント様のことも一緒に!」


 そう言うと、リンは机の方に走っていった。

 ノーはリンの行動に対応しきれていないのか、ふるふると揺れていた。


「早く早く!」


「分かった、すぐ向かうから」


 急かすリンに、慌ててレイモンドはリンの方へ向かう。

 その途中、ふと手元の本の表紙を見た。

 そこには、魔物と共に立つ英雄と、恐ろしい形相をした人間が描かれていた。






ノーを作者の代わりに愛でてくれるリンは作者の気持ちが分かってますね。愛でてくださりありがとうございます。

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