一日のはじまり。
新章のはじまりはじまり。
朝。光が、窓から入ってくる。
レイモンドは、その光で目を覚ました。
「ふぁぁ…」
あくびをしながら、ベッドの上で伸びをする。
膝に感じる重みを、手元まで呼び寄せる。
「おはよう、ノー」
ノーは、今日も変わらずにふるんと揺れた。
そのまま手元を離れ、部屋の扉の方へ向かっていった。
ノーが来てから一週間が経った。
その間にも様々なことがあった。レイモンドの兄弟達が透明な体のノーに興味深々になったり、ノーがいつの間にかどこかに行って一日中探し回ったり(夜に戻ってきた)。他にも挙げたらきりがない位、この一週間は充実していた。
もちろんレイモンドはずっと遊んでいた訳ではない。魔物使いになった者には二年間、魔物使いから教えを受ける必要がある。その上で年に二回ある試験に合格して、初めて正式な魔物使いになれるようになるのだ。
レイモンドは朝食を済ませて、屋敷の二階のとある部屋に向かう。
ノーの姿は近くにはいない。しかし、彼はそれを気にしない様子で階段を昇っていく。
そして、目的の部屋の前に着き、扉を開けた。
部屋の中には、石像が整然と並んでいた。剣を掲げている男、竜と共に空を駆ける英雄、空を見上げる女、首上のないこども、等々。それらはまるで時を忘れたように綺麗な状態で保存されているものばかりだった。
レイモンドはそんな石像達を避けながら、部屋の奥に進んでいく。
部屋の隅に一瞬だけ輝きが見えた。
レイモンドはそれに気付き、近づいていく。
「やっぱりここにいたんだ」
そこには、ノーがいた。
石像の頭に乗って、ぼーっとしている、ようだった。
「ここが好きなのかな。僕はあまり好きじゃないけど」
そう言いながら、レイモンドはノーに向かって手を伸ばす。
「ノー、もう行くよ。早く行かないと母上に怒られるよ」
ノーは、その言葉を聞いてなのか、レイモンドの胸に飛び込んだ。
レイモンドはノーをしっかりと抱きながら、石像の部屋を出ていった。