はじめてのせかい
レイモンドはスライムを抱えて帰路に着く。
いつも通り、街中は様々な喧騒に包まれていた。
「いらっしゃい、今日はグリスピーフィッシュが安いよ~!」
「マルマルバードのマルマル焼き、出来立てだぜ!食ってきな~!」
「おじちゃん、レタッコふたつ!」
「まさかまさかのホッチョがこんなに!どうだい、そこの嬢ちゃん!」
「やっぱりマルマル焼きは旨いなぁ…」
スライムはその光景に興味津々のようで、弾むように体を揺らしていた。
「スライム、楽しい?」
そんな風にスライムに話しかけるレイモンドを、フリダンカは笑顔で見守っていた。
「母上、スライムは何を食べるのでしょうか」
「基本的にスライムは食事をしません。魔力によって体が構成されていて、外との魔力の循環さえできれば生きていける魔物と言われています」
「そうなのですか」
「でも、たまに食事をとるスライムもいるそうです。だから詳しいことは分かりません」
それを聞いたレイモンドは、試しに何か食べさせてみることにした。
スライムはふるふるしていた。
向かったのはとある屋台。
「すみません、マルマル焼きをください」
「おお、坊ちゃん、買ってくかい!ひとつ30だ」
「なら、ひとつお願いします」
「はいよ!待っててくれ!」
マルマルバードの肉が、マルマルと焼かれていく。
「マルマル焼きひとつ、出来上がりだ!」
「ありがとうございます」
レイモンドはお金を渡し、マルマル焼きを受け取る。
スライムはいつの間にか肩の上に乗っていた。
「ほら、スライム、マルマル焼きだよ。食べてみて」
そんなスライムに、レイモンドはマルマル焼きを差し出した。
スライムはまるで興味深く観察するようにぷにっと揺れた。しかし、すぐに興味を無くしたのか、反対側の肩にぷるんと移った。
「僕のスライムは食べないのか」
軽く首を振って、レイモンドは余ったマルマル焼きを食べ始めた。