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契約の時、そこで。

そこは、真っ白な世界だった。

右、左、上、下、前、後。どこを見ても白、白、白。

唯一つ足元に浮かぶもの、それは、『()()()』だけだった。

その光景にレイモンドは混乱し、固まったまま動けずにいた。


突然、スライムが現れた。

その姿は、透明で全く見えない。

しかし、レイモンドは陣の中にスライムがいることが何故か分かった。


「君は…」


レイモンドが呟く。

スライムはふるふると体を震わせる。

すると、足元から何かがひび割れるような音がし始めた。

レイモンドは気になり、足元を見る。


「え、」


彼は目を見開いた。

足元の『魔法陣』に亀裂が走っていたのだ。





「もしかして、契約失敗…?」


レイモンドは動揺した。

それを見てないかのごとく、スライムがぽよんぽよんと飛び跳ねた。

どんどん亀裂は大きくなっていく。

ぽよん、ぽよん、ぽよん、ぽよん、


ぱりん。


静かな音と共に、『魔法陣』は弾けた。

透明な破片が、宙に広がっていく。

動きを止めたスライムは、まるで何が起きているのか分かっているようにぷにぷにの体をぐにゃぐにゃ動かし始めた。

それに呼応するかのごとく、宙を舞っていた破片がレイモンドの目の前に集まっていく。

そして、それは一枚の紙になった。

そこには、謎の文字が並んで書かれていた。


「これは…?」


レイモンドは思わずそれに手を伸ばし、掴む。

その紙に書いてある文字に、目を通していく。

レイモンドはすぐに書いてあることを理解した。


「これは、契約の内容だ」


そこに書かれていたものを簡単に纏めると、


一、魔物 (スライム)は人 (レイモンド)に対して絶対に逆らってはいけない。

二、魔物は人に対して有益となることを優先してやらなくてはならない。その基準は人側が決定する。

三、人は魔物を理由無く殺害してはならない。


上記全てが守られない場合、魔物の死によって契約は切れる。

この契約は魔物、もしくは人の死後一日後に切れる。


というものだった。


「何なんだ、これ!」


その余りにも酷い内容に、レイモンドは激怒した。


「こんなの、スライムが受け入れるわけないじゃないか!」


レイモンドは思わず、紙を握りしめた。

すると、触れていた部分の文字が宙に溶けていった。

それを見たレイモンドは、


「もしかして…」


怒りを抑えて、紙に指をかざし始めた。





指でなぞると紙の上から魔法のように文字が消えていく。

再び指でなぞると、紙の上に新たな文字が紡がれていく。

レイモンドは驚きながらも、指を止めない。

スライムと仲良くなる、それだけの為に。





そして、新しい契約が出来上がった。


一、人と魔物は互いに支え合うこと。

二、人と魔物は相手に意図的な危害を加えないこと。

三、人と魔物はお互いを尊重すること。

これら三つを出来る限り守ることを契約とします。

契約の期限は人または魔物の死後一日後まで。


簡単に纏めるとこういう内容となった。


「スライム、これならどうかな」


スライムはしばらく反応が無かったが、いきなり跳ねてレイモンドの腕の中に入った。


「いいのかい?スライム」


スライムは、ふるふる揺れた。レイモンドには、それが『よろしく』の意味だと何となく分かった。


「うん、よろしく、スライム」


レイモンドはスライムを抱きしめた。

その瞬間、契約の紙が弾け、その破片がレイモンドとスライムを包むように回り始める。

そのまま、破片はレイモンドとスライムの中に入っていった。


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