アトランティスの学生2-1〝海都〟
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地球異世界間限定特別寝台列車ホワイト・マーキスは、世界初の重力制御型の寝台列車である。
アクアマリン・パレスの中心――そこには、直径二〇〇メートルほどの巨大な〝穴〟が開いていた。
底が見えず、ブラックホールの呼び名がピッタリと当て嵌まるほどの暗闇が沈む〝穴〟に――〝穴〟と距離を置いた三駅から走る海中路線が、螺旋を描いて呑み込まれている。海面に対して平行な線路は、その中では――やがて傾斜の無い垂直で落ちている、という話を出発前に聞いた。
初めて聞いた時、手の込んだジェットコースターか何かかと朝月は思った。
しかし、乗ってみれば普通の豪華寝台列車の旅。少しの揺れも感じることなく、闇色の車窓の旅が終わりを迎えようとしていた。
『……――乗客の皆様に、お報せ致します。間もなく、間もなく長い〝ゲート〟を抜けて〝海上都市アトランティス〟に到着致します。天空の彼方まで海面が覆う幻想的な世界を――どうぞ心行くまで、お楽しみください』
車両毎に言語を変えているらしい日本語の案内が終わるや否や、暗闇を映すだけたった車窓に蒼い光が差した。
「うわぁ……、きれい……」
「これは、また……見事なもんだ……」
さつきと朝月は、二人して――左手から右手に昇る風景を目に焼き付けながら、驚嘆の声を漏らした。
海に包まれた異世界。その名に恥じることなく、空には紺碧の海が流れている。それは、地上を満たす海洋と同じ色。――いや『地上』が無いと言われる世界で、その表現は正鵠を失するものがあるかもしれない。
見上げても海。見下ろしても海。どこを見渡しても海、海――海……! それが、五〇年前に発見された新世界の姿だった。
二〇四九年の今年に竣工した〝海上都市アトランティス〟は、簡単に言うと『中央に小さな満月。その周りに三つの大きな三日月が浮かぶ都市』だ。中央の小さな満月に聳え立つヘキサグラム・タワーには行政機関が集約され、更に地球から伸びる三本の線路を固定する――内からも外からも〝アトランティス〟を支える重要な拠点の一つとして、客室の中に置かれた『必読! 今日からあなたもマーメード!』という情報誌で紹介されていた。
「ここの学校に通うのかぁ……」
朝月は、柄にもなく身体が強張る自分に戸惑った。
「えへへ……。ちょっと、どきどきするね」
しかし、さつきの浮かべる微笑を見ていると――自然に緊張が解けていく自分に驚いた。
「……やっぱり、友達っていいな」
さつきの頭を撫でながら、朝月は笑顔を返す。友達とは『分かち合うものだ』と言っていた父親の言葉を思い出しながら。
現在でも、海洋都市計画は色々あるそうです。
ドバイなんか、グーグルアースで見てみると面白いですよ。