異世界の勇者
※彼はまだエルフィア世界にいません
かつて、テイアという女神が治めていた世界には魔王がいた。
魔王によって苦しめられる生活に耐えきれなくなったとある国は、外れにある小さな町に住む身寄りのなくなった若者を勇者にした。
仕立て上げた。
「我が国には勇者がいる!魔王の脅威は彼の手によって消え去るであろう!」
国が予想していたより少し、どころか異常に強かった若者は圧倒的速さで魔王を倒した。
それ以来、若者は眠れなくなった。
勇者と祭り上げられたことに耐えられなかったのではない。
ましてや殺すことに罪の意識を感じたわけでもない。
ただ単に、呪われただけであった。
エルフィア世界にいた、殺されて復活してからいろんな世界をふらふらとしていた魔王の気まぐれによって。
勇者は魔王の首とともに国へ戻り、魔王が死んだことを証明し英雄となった。
だが、勇者を讃える式典で彼は言った。
「女神テイアは、あんたらの所業にお怒りだ
これより、女神が悪と判断した国を滅ぼしていく
その国の者はたとえ外に逃げようが必ず追いかけ殺す」
まずは、この国
まあ、今までもやろうとしてたみたいだが、一般人だった俺を勇者に仕立て上げたのが決定打だな
ということで
さようなら、我が祖国よ」
愛用している銃剣を抜いた勇者は、その時から女神テイアの代理者として破壊を始めた。
それから3日後。
勇者の目には、城の頂上から見下ろしたかつて国だったものと肉塊しか映っていなかった。
父親であった骨をくるくると回しながら、彼は静かに笑う。
頭に浮かんでくるのは、初めて会った父親の懇願する声。
男は家庭を持っていたが、一時の過ちでとある女を妊娠させてしまった。
浮気が知られることを恐れた男は適当な理由をつけ別の国へと逃げていたが、数年前に戻ってきていた。
勇者として魔王を倒し、そして女神テイアの名の下に殺戮をしていた、浮気相手が産んだ自分の息子とも言える彼に、男は泣きながら生かしてほしいと懇願した。
金をやろうか
いや、それとも宝石か?
ああなんなら私の娘をやろう
だから生かしてくれ!
最低な事しか口にしなくなった男を切り捨て、そして男の家族を殺した。
そんな記憶と共に骨を投げ捨て、彼は澄み渡る青空を見上げた。
「どんなに偉ぶっていてもただの人間。死ねばただの肉塊に成り下がる。ははっ、くっだらないな!」
青空の下で全身血まみれのまま、彼はひたすら笑い続けた。
母親は彼を生んだ後に発狂死。
育てた祖父母は寿命で安らかに眠り。
父親は母親が妊娠したと知った途端に逃げ、そして死んだ。
夢追橋火焔樹。
殺戮を繰り返した彼には、人々からの恐れを表すように殺戮兵器と呼ばれるようになった。




