第七話 ちなみに作者も他はともかく、体育の成績はいつも5だった
高校生という青春真っ盛りの一日たりとも時間を無駄にしたくないこのシーズンに事故って両腕と左足、そして肋数本逝ってきましたo(T□T)o
おかげでしばらく更新できない有り様でした(泣)
そういうわけで、暫くはとても更新速度が落ちると思いますが、どうか見捨てないでくださいね!!(ToT)
五月末頃には完治する予定です(;^_^A
「ところでよ、8組ってのはどんな奴らがいるんだろうな?」
教室へと歩いていく途中、ふいに恭祐が口を開いた。
「この魔法学園の中での最下位っていうと、割りと過激派の不良の集まりだったりしてな?」
「うあ、マジ?でも、確かにありそうだよね。」
この学校は学問と魔法の両立を目指そうとはしてるけど、別に両方を持ち合わせる必要は、少なくとも入学の際にはまったく必要ないんだ。ほら、僕が入学してるしさ。
「どこの学校にもいたもんね、勉強はまるでダメだけど、魔法が相当すごい不良ってさ。」
これはどうやら波乱に満ちた学園生活になりそうだ。
「あ、着いた着いた。」
「お、ここか?」
そんなことを話してると、もう8組の教室の前に到着した。そして、いざ教室へ入ろうと僕は教室の戸に手をかけてみる。
「…………。」
「どうかしましたか、藤堂君?」
立ち止まった僕に、小首をかしげるという可愛らしい様子を見せつけてくれる白川さんを見て、僕の心に不安がよぎる。
さっきまでの会話を思い出すと、どうにも入りたくなくなるな、この教室。この中は不良の巣窟、バカの集まりって言うくらいだから、男女関係無くあまりよろしくない人たちがいるに違いない。そんな中に白川さんを連れて行ったらどうなるだろう?こんな可憐な子をこんな不良の巣窟に入れるなんて……本当に大丈夫だろうか?
「お〜い、そこの君!限りなく失礼なことを考えてないかい?」
「え?」
その声は、教室の中から聞こえてきた。その声の後、スタスタと誰かが歩くような音が近づいてくる。そして、その音は戸の前まで来ると、ガラガラ、と音を立てて教室の戸を開いた。
「別に、ここは不良の巣窟なんかじゃないよん?」
その戸を開いた主は、先ほど会話からは連想されるはずも無いような、可愛らしい笑顔を浮かべている女の子だった。
「ここの人らは、単純にバカなだけだよ。」
その子は「ああ、ちなみにあたしもね。」と付け足しながら子供のような満面の笑みを浮かべている。白川さんのように見とれてしまうような、というよりは、見ててこちらも元気が沸いてくる、そんな笑顔だった。
「ああ、自己紹介しよっか。あたしの名前は文月 遙だよん。まあ、出身中学校は名乗ったところで後々何にもならないから、別にいいよね?」
自己紹介をしてくれた文月 遙さんをじっと見てみる。
ボーイッシュな雰囲気をまとい、サラサラとした綺麗な黒髪のショートヘアー、パッチリとした大きな目、動物みたいに長い八重歯がボーイッシュさと可愛らしさを同時に引き立てている。若干子供らしさの残る子だけど、やっぱり可愛いと評価できる子だった。
うん、ここの学園の生徒は中々にレベルが高いね。
「何はともあれ、よろしくね。」
文月さんは、さっ、と手を差し出す。
「うん。こちらこそ、よろしく。ああ、僕の名前は……」
「ん〜ん、名乗らなくても大丈夫だよ、知ってるから。」
僕もその手を握って握手を交わし、自己紹介をしようとしたところで遮られる。でも、名乗る前から知ってるとはどういうことだろ?あ、もしかして……
「君がかの有名なお馬鹿さんこと、藤堂 狂夜くんでしょ?同じお馬鹿さん同士、よろしくね。」
やっぱりね、そういうことだと思ったよ。ってか、たった一つのお馬鹿というステイタス(?)だけで、僕の名前はどこまで広まっているんだろう?しかも、この様子だとどうやら名前だけじゃなく顔まで広がってるみたいだ。なにゆえ?っていうかそんな嬉しそうな笑顔で見ないでよ、僕のガラスのハートは割れちゃうよ?
「ああ、ついでいうと、そこのガタイのいい人が、今回の不法侵入の騒動の首謀者の神谷 恭祐くん。んで、そっちのキュートで可愛らしい子が白川 都月さんって事もわかってるよ。」
「なっ!?」
「ああ、あとあそこの席に座ってるメガネの女の子が君達の、あ〜白川さんは違うんだよね。君と神谷くんと同じ出身中学校の西村 晶ちゃん、でしょ?」
教室の中の窓際から二列目の一番前に座っている晶を指差しながら、追加事項を述べる文月さん。ってか晶、復活早いな。結構酷い怪我してなかったっけ?もうかなり自然な形でクラスの中にいるけどさ。
まあ、そんな晶は置いといて、いきなりのことに僕たちは戸惑いを隠せなかった。出会っていきなりの人たちの、名前だけとはいえ詳細を知っているなんて、普通に考えたら常識的なことじゃない。現に、僕たちは誰一人文月さんのことを知らなかったんだから。
「あはは〜、驚いたっしょ?」
嬉しそうにニヤニヤとした笑みを浮かべて、文月さんは楽しそうにしている。どうやら彼女、かなりの情報網をお持ちのようだ。
「まあ、だったら俺たちも自己紹介はいらねえわけだな。よろしくな、文月。」
「あ、私もよろしくお願いします。」
恭祐は若干の警戒をしながら、白川さんはちょっと緊張しながら文月さんと握手を交わす。
「うん、二人ともよろしくね。」
相変わらずの明るい満面の笑みの文月さん。何はともあれ、いい友人を一人ゲットだね。
「おい、何をしてる?さっさと席に着けよ。色々と長引いたが、ようやく始業式の時間だからな、事前説明をさっさと終わらせるぞ。」
不意に後ろから声が聞こえてきたので振り向いてみると、そこには我らが担任、赤羽先生が立っていた。男口調ながも、声だけはやっぱり女の人なので僕たちにはわかるけど、画面の向こう側の人たちには解り辛いだろうな。
「藤堂くん、何意味のわかんないこと考えてるの?」
「うわっ、文月さん!?僕、声に出してた?」
何も言ってなかったつもりなだけに、ふいに話し掛けてきた文月さんのコメントに、内心恥ずかしさを隠せない。
「あはは〜、どうだろうね?ああ、あたしのことは遙って呼んでくれたのでいいよん。代わりに、あたしも狂夜って呼ばせてもらうから。ああ、それともみんなとおんなじようにキョウって呼んだ方がいいかな?」
「ん〜、それじゃあキョウって呼んでよ。そっちの方が呼ばれなれてるからさ。」
「りょ〜かい!」
ニコッ、笑い合って、僕たちも赤羽先生に言われたとおりに席に向かう。え〜っと、僕の席は……ああ、あった。真ん中の列の一番後ろか。中々にいいポジショニングだね。
「……おい、キョウ。」
「ん、何かな、恭祐?」
席について先生が何かを話し始めた途端、恭祐にちょんちょんとつつかれる。まあ、いつものことなんだけど、恭祐は本当に先生の話を聞く気がないよね。
「さっきの文月のことだが……」
「遙のこと?どうかした?」
「やっぱあれは何かの魔法だと思うか?」
「ん?あれって何のこ……い、痛い!何の脈絡も無く殴らないでよ!」
「俺らの個人情報を知ってたこと、そしてお前の心の中を読んでたことだ!それくらい分かれ、この馬鹿!」
なんだよ!アレって言葉だけで分かるわけないだろ!自分の言葉の不足さを人のせいにするな!
「俺らの個人情報はともかく、お前の心を読んでたのは事前調査でどうにかなることじゃない。十中八九、なんかの魔法だと思うんだが。俺はあんまり魔法に関して博識じゃねえ。お前は何か知らねえか?」
「ん〜、僕もあんまり魔法には詳しくないんだけど……ってか、僕の心読まれてたの!?って痛い!だから殴らないでってば!」
「教室はいる前から顔すらみられてないのに考えを読まれてた、赤羽が来てからのあいつの発言、そして一度も呼んでないのにお前がキョウと呼ばれてたことを知っていた!これだけの情報があってわからんとは、お前はどこまで馬鹿なんだ、この阿呆!」
わかるわけ無いじゃないか、あんな会話の中だけでさ!どうせ僕は馬鹿だよ!でも、せめて馬鹿か阿呆かどっちかにして欲しい!
「ん〜、どっちかわらかないけどさ、心配する必要ないんじゃない?どんな魔法だろうと、結局おんなじ組なんだったら味方なんだしさ。ほらほら、睨まない睨まない。」
何かと自分の知らない力を持ってる人に警戒を抱くからね、恭祐は。ちょっと悪いくせだよね、これは。
遙に鋭い視線を送る恭祐を宥めながら、僕もチラリと遙を見てみる。遙は、先生の話を僕ら同様きれいに無視して近くの席の男子と楽しそうに話していた。
そんな光景を見ていると、とてもじゃないけど、いや、とてもだけど悪い子なんかには見えない。でも……
「八組に所属するにしては……」
パッと見た印象だけど、元気で活発そうな子だけど頭が悪そうには見えないんだよね。ついで言えば恭祐も気にしてることでもある魔法に関しても、絶対に高度なレベルに行ってるはず。
「……ふぁ。」
先生がまだ色々と話している中、僕の耳にはふいに可愛らしい欠伸の声が聞こえた。声の聞こえた方を見てみると、僕に聞かれてたことに対してか、軽く顔を赤らめてる晶がいた。
……なるほど、そういうことでもあるのかもしれないね。
「と言うわけで、来週にはさっそく大会があるからな。これにはお前らの実技テストも兼ねてある。これを気に、勝手に仲良しグループでも作って一年間怪我せず過ごしてくれ。ほいじゃ、体育館いくぞ。さっさと廊下出て並べ。」
お、どうやら先生の話も終わったみたいだ。話は右から左だったけど、気にすることないと思うし、別にいいよね?
さて、お次はつまらない校長先生と教頭先生のお話か。ゆっくり昼寝でもして過ごすとしよう。